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秋桜  作者: 七地
122/258

空木 (3) side:悠

「梨桜を連れて宮野の所に行く」


放課後寛貴さんに言われて、朱雀の車で青龍のチームハウスに向かった。


青龍のチームに行くのは初めてだ。

『毎日行くわけじゃないよ』梨桜ちゃんはそう言っていたけれど、青龍の奴等は確実にオレ達よりも接する機会が多い。


車のドアが開くとチームの奴等が駆け寄ってきた。


慕われている梨桜ちゃん。彼女の手を取って車から降りるのを支えている寛貴さん、それを見て焦れる…オレ。


嫉妬、だよな。いつか焦れなくなるんだろうか?


「梨桜さん!」


小嶋が駆け寄って来ると、梨桜ちゃんが笑った。


「コジ君!久し振りだね」


「具合はどうですか?」


眉尻を下げて心配そうにしている小嶋にふわりと笑う。

この笑顔が反則なんだよな…集まっている奴等も、見惚れている。


「私は大丈夫だよ。心配かけてごめんね」


「絶対に無理しないで下さい!」


駆け寄ってきていた中の一人が言うと、梨桜ちゃんは頷いた。


「もう、危ない事はしないで下さいね」


本当にチームのメンバーから慕われているんだな…彼女が朱雀に来るようになったら、どうなるんだろうか?

また「うん」と頷く梨桜ちゃんの頭に寛貴さんが手を置いた。


「疲れてるんだから早く休め」


梨桜ちゃんが寛貴さんを見上げると少しだけ頬を膨らませて何かを訴えていた。訴えられている寛貴さんは苦笑しながら答えていた。


二人のやり取りをそこにいる皆が見ていた。

自分が所属しているチームの幹部が大切にしている彼女と、反目しているチームのトップが親しげに接している。

オレには仲が良さそうに見える二人だけれど、あいつ等にはどう見えるんだろうか…


「寛貴は分かってないでしょ」


そう言いながら、梨桜ちゃんが寛貴さんが持っている自分の荷物を受け取ろうとすると「いいから行くぞ」と言い、梨桜ちゃんの背中に手をやり、歩くように促していた。


オレと一緒で、あいつ等も複雑なはずだよな…


「コジ君、葵は?」


「戻って来ています」



幹部室に通されると三浦と宮野がいた。

無駄なものが置かれていないシンプルな部屋、梨桜ちゃんの家に行った時と同じだった。


「ただいま」


「「おかえり」」


二人に返されて梨桜ちゃんはまた笑っていた。


「葵」


梨桜ちゃんが宮野に歩みより、何かを聞いていた。


「ダメ」


素っ気なく何かを否定された梨桜ちゃんは「少しだけ。いいでしょ」と抗議していたけれど、また「しつこい。ダメ」と否定されていた。


「梨桜ちゃん、少しだけだよ」


三浦に言われた梨桜ちゃんは「愁君、いいの?」と聞き、三浦が頷いて答えると嬉しそうに笑った。


「外すのはまだ無理だろ」


「少しだけなら大丈夫だろ。梨桜ちゃんだって窮屈な状態から解放されたいよね」


宮野を見上げている梨桜ちゃんはやっぱり可愛いんだよな…

渋い顔をして宮野は頷き、梨桜ちゃんを別な部屋へ連れて行ってしまった。


「何処に行ったんだよ?」


オレが聞くと、三浦が親指を壁に向けた。


「葵専用の部屋。骨折の治療に使うバストバンドを外しに行ったんだよ」




すぐに宮野が戻って来て、これからの朱雀と青龍の関わり方や定例会の事を話し合っていると、カチャ、と音がして梨桜ちゃんが顔だけを出した。


「葵、上に羽織るの貸して?」


「あ?…そっちに行くからそこにいろ!」


急に慌てだした宮野に何事かと思って見ていると、宮野が部屋を出て行く時に見えてしまった。


首の後ろでリボンに結ばれているタンクトップとデニムのミニスカートに着替えた、すっげー可愛い梨桜ちゃん。


宮野に肩を抱かれた時に見えた、白くて綺麗な背中と右肩にうっすらと残っている痛々しい痣…


「大丈夫だ。消えるよ」


思わず眉を顰めると三浦が扉を見ながら呟いた。




「葵、これ暑いよ?違うの貸して」


「いいから黙って着てろ」


扉が開くと、宮野に文句を言いながら梨桜ちゃんが部屋に入ってきた。さっき見えていた綺麗な背中は男物のパーカーにすっぽりと覆われていて思わず舌打ちをしそうになった。


「暑い!」


梨桜ちゃんが胸元のジッパーを下げると、宮野がそれを上げて、また梨桜ちゃんが暑いと言えば、パーカーの袖をまくってやっていた。


「文句言わないで着てろ。髪の毛が濡れたら拭けよ、バカ」


そう言うと、タオルで梨桜ちゃんの髪の毛を拭きだした。梨桜ちゃんは大人しくされるままになっている。そういえば、宮野に髪の毛を乾かしてもらうって言ってたよな…


面倒見の良い弟っつーよりも、シスコンに見えるのはオレの気のせいか?



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