表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋桜  作者: 七地
120/258

空木 (1)

「あのね、円香ちゃん落ち着いて?」


『こんなメールを送られて落ち着けって言う方が無理でしょ!このイケメンは誰なの?』


何故かとても興奮している私の親友。それより“メール”って何だろう?

私は円香ちゃんにもタカちゃんにもメールを送ってない。私の携帯をいじっていたのは寛貴だよね?

寛貴を見ると、素知らぬ顔をして先生と話をしている。


『…私になんでも相談するって言ったのは嘘?』


彼女は怒ると怖いんだからね、寛貴ってば何をしたの?


「嘘じゃないよ?」


近いうちに近況を話そうとは思っていたんだよ、怒らないで…


『だったら、彼氏が出来たならどうして言ってくれないの?梨桜、酷いよ』


「え、誰が?」


“彼氏が出来た”その言葉に驚いて聞くと、電話の向こうで円香ちゃんは『誰って、何を言ってるの?梨桜とイケメンがキスしてるでしょ!』と言い、寛貴が何をしたのかをやっと理解した私は、手元にあったクッションを寛貴に投げつけた。


『それから、なんで髪の毛が短くなってるの?梨桜は絶対に切らなかったでしょ』


クッションを軽々と片手で受け止めた寛貴は私を見ながら笑っていた。先生はもう部屋を出ていなくなっていたから、もう一つあるクッションを寛貴に投げつけてやった。


『ちょっと!質問に答えなさい!!』


短時間で彼女が納得できるように話をるのは無理だと判断して円香ちゃんに断りを入れる事にした。


「髪の毛は弟に切ってもらったの。ごめん、今は時間が無いから夜に電話してもいい?」


時間のこともあるけれど、今ここで説明するのは恥ずかしすぎるし、円香ちゃんに問い詰められる前に寛貴を問い詰めたかった。


円香ちゃんは仕方ないね、というように溜め息をついていた。


『ねぇ梨桜、これだけは今教えて。…前に進んでるって思ってもいいの?』


今まで、立ち止まっていたつもりも、後ろを向いたつもりもなかったけれど、円香ちゃんとタカちゃんに凄く心配をかけていたのは確かだよね。


「うん」


『まぁ、いいわ。電話待ってるから。それと、このイケメンに伝えて?“こんなの表に出したら、殺されるだけだよ”以上。分かった?』


殺されるって、円香ちゃん…

大体、誰が殺すのよ?大袈裟なんだから。


「良くわかんないけど、伝えてみる」


電話を切ると、寛貴が私の手にペットボトルを持たせ、私が投げつけたクッションをソファに戻した。


「円香ちゃんが怒ってたよ。こんなのを表に出したら殺されるよって伝えなさいって」


「誰にモノ言ってんだよ?」


不敵に笑う寛貴に思わず、カッコイイな。と思ってしまったけれど、すぐに気を取り直して話を続けた。


「誰って、朱雀の総長様でしょ?でもね、円香ちゃんだって怒ったら凄く怖いんだよ」


タカちゃんなんか、いっつも頭が上がらないんだから。

そんな二人が私は大好きなんだけど…


「ヤラれる前に沈めてやるって言っておけ。…梨桜、その女に会いたいか?」


そりゃ…会いたいよ。

寛貴に「久しぶりに会いたいよ」と言うと曖昧に笑って水を飲んでいた。


「東京と北海道は遠いけど、会おうと思えば会いに行けない距離じゃないよ。それに、葵に“帰って来い”って言われて戻るのを決めたのは私だから」


聞いてきたのは寛貴のクセに、私の答えを聞くと素っ気なく「あっそ」と言いそっぽを向いてしまった。



友達と離れるのは寂しかったけれど、北海道から離れたいと思ったのも事実なの。



.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ