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秋桜  作者: 七地
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青龍の姫  side:海堂悠

-青龍のトップが紫苑の近辺で目撃されています。女を迎えに来ているようです-

その報告を受けてオレ達は驚いた。

拓弥さんは飲んでいたコーラを吹き出しそうになりむせていた。


「その情報は確かか」


朱雀トップの寛貴さんは表情を崩すことなく言った。


「はい‥・いつもの車ではなく普通車に乗っているようです。隣には女が乗っている事があるそうです」


「学生か?」


“朱雀”と互角の実力を持つ“青龍”チームのトップ、宮野は本命の女を作らないことで有名だった。驚いているオレ達に情報担当は更に驚かせるようなことを言った。


「はい。ここらあたりではみない制服です。頻繁に見られているので送り迎えをしているんじゃないっすかね」


あの氷のように冷たい青龍のトップが女の送り迎え!?

嘘だろ…


「念の為に調べておけ」



数日後


-宮野がいます-


そう報告を受けたオレ達はそこへ向かった。

そこはスーパーで、青龍の車は立体駐車場に入っていったというから、出口のそばでしばらく待っていると宮野を乗せた車は出てきた。


「後をつけろ」


寛貴さんが言い乗用車の後ろを走った。


「助手席に三浦がいる。後部座席には…女か?」


少し走った時に


「並べ」


寛貴さんが言い乗用車に並んだとき自分の目が信じられなかった。“ヒュッ”と拓弥さんが口笛を吹いた。

宮野が女を膝に乗せて抱きよせていて、背中を撫でながら、自分の首筋に顔をうずめた女に何か話している。

三浦は携帯をいじっていて気にしている様子はない。


「あの宮野がねぇ、ブレザータイプの制服か…どんな女だろうな」


拓弥さんが楽しそうに言った。


「寛貴、楽しくなってきたな」


寛貴さんに声をかけたが返ってきた言葉は


「関係ない。もういい‥行くぞ」


素っ気ない言葉だった。



数日後、オレ達がチームの溜まり場にいるとき、下の奴らが襲われたと連絡が入った。


「悠、行くぞ」


寛貴さんはそう言い、幹部しか入れない部屋から下におりた。下の奴が襲われてもチームの総長自ら動く事はあまりない。でも最近はチームの仲間が襲われる事が続いている

寛貴さんと2人で襲われたという現場に向かった


そこにつくとタクシーが走り去った。

どうして何もないこんなところにタクシー?と思いながらバイクを止めて仲間のところに駆け寄ると

そいつは電柱にもたれて座り込んでいた。酷く殴られたようだ


「おい、誰にやられた?」


寛貴さんがしゃがみ込んだ聞いた


「…わかりません。いきなり4人できて…」


そいつの手にはハンカチが握られていた。女ものだ


「おまえそのハンカチどうした?」


オレが聞くと小さく笑ったが傷が痛むのかすぐに顔をしかめた


「青龍のトップが…助けてくれて--これは一緒にいた女の子に」


痛そうに顔を歪めた


「女の顔を見たのか」


「はっきりとは見れなかったけど、可愛かった…」


とりあえず倉庫に運び事情を詳しく聞いた

4人がかりで襲われているところに宮野が現れて襲ってきた奴らをボコボコにしてそいつらは逃げたらしい。

どこのチームか聞かれて朱雀の人間だと知ると上には黙ってろと言われて女の子の声がしてハンカチを差し出されたそうだ。

“返さなくていい”そう言われて見た女の子は可愛く笑っていて、宮野に手を引かれてタクシーで帰った。

オレ達が到着したときにいたあのタクシーは宮野達が乗り込んだタクシーだったということか


「宮野が人助けなんて珍しいな」


拓弥さんが言って煙草に火をつけた


「益々どういう女か興味が湧くな。な、悠?」



数日後、宮野が通う東青学院の生徒会が紫苑にきた。定期的に会を開いて互いを牽制しあう。

頭脳とケンカの実力が互角なオレ達は代々こうして抗争にならないように均衡を保ってきた


「ウチの下が世話になった」


寛貴さんが宮野に言うと宮野は舌打ちした


「ったく、黙ってろって言ったのに。――おまえんとこの奴だって知らなかったんだよ。余計なコトして悪かったな」


宮野が言った


「いや、助かった。最近闇討ちが続いているから」


拓弥さんが言うと三浦が


「掴めてんのか?」


「おまえんとこはどうなんだよ、青龍だってあるんだろ」


互角のチームは同じように敵も多い。ウチが闇討ちされるなら青龍だって同じはずだ


「まだはっきりとはわからないが…西の方だと思う」


三浦が言うと寛貴さんと拓弥さんが頷いた


「へぇ、オレ達の見解と同じか。――ところで、ハンカチの彼女にお礼したいんだけど?」


茶化すように拓弥さんが言うと宮野の刺すように冷たい視線が突き刺さった


「返さなくていい。礼を言われるような事もない」


「ウチの姫は箱入り娘で逢わせられないから。助けられた奴にも言っておいて‥・諦めろってね」


三浦が茶化し返した


「宮野、お前の女か?」


拓弥さんが言うと宮野は口角をあげた。綺麗な妖しい笑みで思わず男のオレでもみとれそうだった‥・



話しが終わり、東青が帰るときに三浦が窓から外を眺めていた。

そこからは別棟にある図書室が見えて、辺りが薄暗くなってきた今は明るい図書室の中が良く見えていた。オレも見るとそこには机に向かって書き物をしている東堂梨桜がいた。


「なんだよ、東堂か」


オレが言うと東堂は顔をあげた。

隣を見ると三浦の隣に青龍幹部の小嶋が立っていて、図書室に向かって手を振っている。

東堂は驚いた顔をしていたがこちらに手を振り返した。


「愁さん、オレ先に帰っていいですか?」


小嶋が言い出した。


「ああ…」


失礼します!と小嶋は生徒会室を出て行った。


「なんだあいつ」


東堂に興味でもあるのか?

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