眠り姫と攻略法 (7)
「梨桜ちゃんて寝起き悪いの?」
お弁当を食べながら悠君に聞かれた。
「うーん…そういう時もあるかも。どうして?」
「オレ達が梨桜ちゃんの家に行ったとき、初…叔父さんが起こしても起きなかったから」
悠君の言葉に、辛かったあの日を思い出した。
あれは大反省だったなぁ…二度とあんな無茶はやらないよ、うん。
「あの時は前の日に眠れなくて、やっと眠れたから凄く眠かったの。…全部自分が悪いんだけどね」
「どうして?」
「葵と慧君が出掛けていなかったからこっそりお風呂に入ったの。そうしたらバスタブの中で転んじゃって、骨折したところが凄く痛くなって眠れなくなったの」
麗香ちゃんが「梨桜ちゃん、可哀想」と言ってくれたけど、寛貴は呆れたような顔で私を見ていた。
「溺れたらどうするんだ?バカだな」
「無謀だな、梨桜ちゃん」
寛貴と拓弥君の言葉に反論できなかった。
本当にアレは辛かった。転んで背中を打った時も痛かったけど、その後が滅茶苦茶痛かった。
「どうしてもお湯に浸かりたくて我慢ができなかったの。葵と慧君にもお風呂に入ったのがバレちゃって、怒られた」
お腹が一杯になってお弁当の蓋を閉じてお茶を一口飲んだ。
「宮野君て、怒ると怖い?」
さっき気が付いたんだけど、麗香ちゃんが葵の事を聞く時って少し頬を染めて、瞳がキラキラと光るんだよね。
今も頬に両手を当てて聞く仕草が可愛らしくて、瞳がキラキラしている。
恋する女の子って可愛いね?
相手が葵だと思うと少し複雑な気持ちだけど、見ていて微笑ましい。
「怖い。かなぁ…でも優しいよ。怒りながらだけど、ちゃんと髪の毛を乾かしてくれたし」
麗香ちゃんは、ほんのりと染めていた頬をピンク色に染めて、眼を大きく開いて驚いた顔をした。
「え!?乾かしてもらってるの?」
「うん」
驚いた顔をされて、戸惑った。
…どうして悠君と麗香ちゃんが顔を赤くするの?
「いつもそうなの?」
この二人、もしかして変な想像してる?
怪我をする前から乾かしてもらう時もあったけど、本当の事を言って変な想像が膨らんだら困るから「肩が痛いからだよ」と言うと、二人は安心したようにホッと息をついていた。
そんなに変かな…?
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