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秋桜  作者: 七地
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眠り姫と攻略法 (6)

「これ、何とかして欲しい」


『これ?』


この人だかりが怖すぎるよ。教室から出られない。

生徒会長で朱雀のトップにいる寛貴なら何とかしてくれるんじゃないか、そう思ってこの現状を訴えた。


「廊下に人が一杯いるの。皆が見ていて気持ち悪いし、怖い」


『そこにいろ』


そう言って電話が切れた。


「寛貴さん何だって?」


悠君が廊下に視線を向けたまま聞いた。


「そこにいろ。って…「あー!!」」


廊下から大きな声が聞こえて驚いた。

男子生徒が教室にバタバタと入ってきて、私に向かって「え?何で!?」と騒いでいた。

今度は何!?


「アノときの姫!」


私を指差して騒いでいるのは、飛澤章吾。彼の存在をすっかり忘れていた。

どうしようかな…と考えていると、彼は私の目の前に立ち、ズボンのポケットからハンカチを取り出して私の目の前で広げた。


「覚えてますか!?」


勢いに押されて頷いた。

覚えてるよ、4対1で殴られていて葵が助けた人でしょう?


「アノとき、次に会えたら名前を教えてくれるって言いましたよね?」


そんなこともあったような気がする。確か、病院で会ったよね?寛貴達から走って逃げたっけ…

凄く前の事の出来事だったように思える


「オレ、ずっと会いたかったんです!どうしてここにいるんですか!?」


“会いたかった”って隣のクラスだったんだけどな…悠君を見ると、何のことか分からないのか私と彼を交互に見ていた。

瞳をキラキラとさせながら言う彼に真実を知らせていいモノかどうか迷ってしまったけれど、早く現実を見てもらおう。そう思って口を開いた。


「会ってたよ」


「はい?」


「会ってたよ、私達。だって隣のクラスだもん」


キョトン、とする彼にもう一度言うと考え込んでしまった。

まだ気づかないのかな…


「意味わかんねぇ。章吾、分かるように説明しろよ」


悠君が言い、飛澤章吾が「前に話したと思うんスけど…」と事情を話し始めた。


「梨桜」


呼ばれて振り向くと、寛貴が教室に入ってきていた。

来てくれてホッとした。


「随分いるなぁ」


拓弥君も来ていて、廊下に群がっている男子生徒を見ながら笑っていた。

笑い事じゃないから。早く何とかして下さい。


「章吾、梨桜に何か用か?」


寛貴に聞かれた彼は急に慌て始め、やっと分かったのか私を見て目を大きく見開き、また人を指差した。


「…梨桜って…もしかして、東堂梨桜!?え~っ!?」


「何言ってんだ、大丈夫かおまえ」


五月蠅そうに片目を眇めて飛澤章吾を見ている寛貴と完全に面白がっている拓弥君。


「また邪魔すんのか?」


寛貴に言われた飛澤章吾は、固まってしまい、


「邪魔って…寛貴さんと…え?」


私と寛貴を交互に見ながら口をパクパクさせていた。

金魚みたい…


「本当に?あのガリ勉眼鏡!?そんな…あの姫と東堂が同一人物で、しかも…」


彼の中での私ってどんな存在だったんだろう?やっぱり真実を知らせない方が良かったのかな。凄くガッカリさせたみたいで悪い事したかな…

項垂れてしまった彼を見ていると寛貴がクッと笑った。


「梨桜、行くぞ」


「あの中に行くのイヤだ。怖いよ」


寛貴に手を引かれて教室を出ると山のように集まっていた人だかりがスッと引いた。

寛貴が視線を向けた先から、人が避けて道が出来ていく。

やっぱり総長って凄いんだね、それに便利でいいね。


握られている寛貴の手をくいっと引くと、立ち止まって私を見た。


「どうした?」


「さすが生徒会長で朱雀のトップだね、困ったら寛貴のこと呼んじゃおうかな」


「おまえは…前から言ってんだろ」


眉根を寄せながら言う寛貴は少し怒っているように見えた。

“オレを呼べ”ってまだ有効なの?葵の事があったからもう呼んじゃいけないと思っていた。


「いいの?」


「同じことを何度も言わせるな」


寛貴は小さく溜め息をついて「おまえは…」と言いながら歩き始めた。


「寛貴、ありがと」


私の少し前を歩く寛貴の背中に言うと、私の手を握る指に少しだけ力が込められた。



.


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