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秋桜  作者: 七地
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Confession (5) side:悠



オレと拓弥さんが倉庫に着くと宮野と三浦が居た。


「お前等も呼ばれたのか?」


「ああ」


三浦が携帯をいじりながら返事をした。宮野はソファに足を組みながら座り、目を閉じていた。

…こいつ、もしかして寝てる?


「目元とか似てるだろ?」


宮野を見ていたオレに三浦が小声で言い、口角を上げた。

似てるとか、似てないとかじゃなくて、綺麗すぎるその顔を見ていると何だか腹が立ってくる。


「わかんねぇよ」


「並んで寝ているのを見比べると、良く分かるぞ」


三浦の言葉に頷きかけて、ハッと留まった。

ちょっと、待て。『並んでる』ってなんだよ!?

オレはよっぽど怪訝な顔をしているのか、三浦はオレを見て苦笑した。


「愁、うるせぇ」


宮野が言い、閉じていた眼を開いた。


「オレの顔は見世物じゃない。双子じゃなくても姉弟なら似てるところがあって当たり前だろ」


それだけを言うと、また目を閉じてしまった。

見世物じゃないと言われても、つい、ヤツの顔を見て梨桜ちゃんと似ているところを探してしまう。


扉が開き、寛貴さんと5代目が入ってきた。


「お前達の方が先に着いたか」


5代目の後ろにいた人に驚いた。どうして梨桜ちゃんの叔父さんがいるんだ?

オレと拓弥さんが叔父さんを見ていると、5代目は「変わってないな」と言いながら部屋を見回して笑った。


「慧さん、どうぞ」


その行動に『待ってくれ』と言いそうになり、寛貴さんに視線で制された。

なんで?梨桜ちゃんの叔父さんだから?


総長室の一番上座に座るべき人は、その席を叔父さんに譲り、譲られた本人も当然のように座っていた。


「葵、寝てないのか?」


叔父さんが言い、宮野は頷いていた。

双子って事は、宮野にとってもこの人は叔父さんになるんだよな…


「お前等、北陵の倉庫に乗り込んだ後はどうした?」


5代目が言うと、叔父さんはオレ達を見回し煙草に火をつけた。


「勿論、潰したよな?」


そう言い、目を細めて宮野と寛貴さんを見る叔父さん。その眼光は鋭くて、前に屋上でオレ達に向けた時と同じだった。


「倉庫は潰しましたけど」


拓弥さんが、外向きの笑顔を浮かべながら言うと叔父さんは口角だけを上げて笑い、「甘いな」と言った。

潰したのに甘いって…何をさせたいんだよ?


「全部潰せよ。系列も含めてな‥」


5代目が苦笑しながら叔父さんを見ていた。

無関係の人に命令されたくねぇんだけど…オレと拓弥さんが憮然としたけれど、寛貴さんは叔父さんを見ていた。


「オレはお前達に『くだらない意地の張り合いをして足元を掬われないようにな』って言ったよな?…まんまと掬われやがって馬鹿が。梨桜まで巻き込みやがって」


やっぱりこの人の雰囲気は一般人じゃない。

この人、何者なんだよ?5代目が気を使っているのも納得がいかない。


「全部潰せ。分かったな?」


「慧さん‥‥抗争を勧めないでくれませんか」


「どういう関係なんですか?」


拓弥さんが聞くと、叔父さんは一瞬、拓弥さんに目を向けたけれど、すぐに5代目に向かって不満をぶつけていた。


「どう考えても腹が立つだろ、梨桜にあんな怪我を負わせやがって。涼、徹底的に潰させろ」


「だから‥‥慧さん」


「お二人はどういう関係なんですか?って聞いてるんですけど」


拓弥さんの問い掛けに答えなかった叔父さんは、寛貴さんが凄みを持った声で聞くと、目線をこちらに向けて笑った。

宮野も何年か経ったら、こんなにいい男になるんだろうか?


聞かれた本人が答える代りに、5代目が苦笑いを浮かべながら教えてくれた。


「慧さん、大人気ないですよ。お前達は年代が離れているから会ったことないだろうけど‥この人は紫垣の初代だ」


「はぁぁ!?初代!?」


オレはまた大きな声を出して5代目に睨まれた。


「うるせぇガキだな。‥‥青龍の姫だ、朱雀の姫だとか騒いでいるようだけどな、梨桜は紫垣初代総長の姪だ。おまえらのチーム総力あげて守れよ。それが出来ないなら、オレはおまえらから梨桜を取り上げる」


今まで黙って聞いていた宮野の目が鋭くなった。


「いくら慧兄でもそれは許さない」


寛貴さんも不敵な笑いを浮かべながら叔父さん…初代を見た。

昨日から、思いもしなかったことが次々に起きて、知らされる事実に頭と感情がついて行かない。


「初代の言うことでもそれは聞けませんね」


「うるせーよ。オレは梨桜の保護者なんだよ!オレが連れて行くっつったら連れて行けるんだよ!」


「3人で梨桜ちゃんの取り合いすんなよ…話が進まないだろ!」


5代目が呆れ顔で言い、三浦が笑いを堪えていた。


「愁、何とかしろ」


兄貴に命令された三浦は、笑いを抑えながら頷いていた。


「慧さん、青龍の傘下に入っているチームも使って北陵の系列を全部潰します。それでいいですか?」


初代は不満そうに三浦を見て口を開いた。

オレも三浦の言葉には不満だった。何で青龍が潰すんだよ?潰すのはオレ達だ。黙って見ていればいい。


「紫垣に売られた喧嘩だぞ?青龍と朱雀で一緒に潰せよ。どっちかが単独で潰すなんて許さないぞ」


三浦と拓弥さんが顔を見合わせていた。どちらも『面倒だ』そんな顔をしている。

オレだって、アイツらと手を組むのはイヤだ。ずっと反目してきたのに、急に言われても困る。


「紫垣として北陵を潰すなら、青龍に梨桜が出入りしているように朱雀にも出入りしないと下の奴等に示しがつかないんですけどね」


寛貴さんは、初代と宮野を見て挑戦的な笑みを浮かべた。

その言葉に露骨に嫌な顔をしたのは宮野で、初代はニヤリと笑った。


「それも一理ある。…梨桜を守れるのか?」


「守ります」


寛貴さんはキッパリと言った。

これが、拓弥さんが言っていた寛貴さんの本気…




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