Confession (3)
甘い声で「梨桜」と呼ばれ舌が絡めとられた。
背筋がゾクリとした。
昨日のおぞましい震えとは違い、ゾクゾクと何かが込みあがってきて気がつくとこのまま流されてしまいそうな私がいた。
どうしてこうなっているの?
葵との関係を黙っていたことを謝りたかっただけなのに…
息があがってしまい、寛貴の腕を押しのけると漸く唇が離れた。
「悪い…呼吸が辛いの忘れてた」
ゼイゼイと呼吸をすると、また胸が痛んだ。
息も乱さずに平然としている寛貴を見たら腹が立った。
「大丈夫か?」
首を横に振り、視線で「酷い!」と訴えた。
痛いよ…
「オレの事…呼んだんだろ?」
唐突に言われて何のことか分からなかった。「なに?」と言葉に出来なくて、視線だけを寛貴に向けるともう一度「助けてって呼んだんだろ?」と言われた。
…あの時、もう駄目かなって思った時に寛貴の言葉を思い出したんだよね。
「梨桜?」
答えを促されて、コクリと頷いた。
やっと呼吸が普通に戻り、握りしめていた手の力を抜くと寛貴がペットボトルを差し出した。
「呼んだよ。来てくれてありがとう」
「宮野が倉庫に来て自分の携帯を梨桜が持ってるって言い出した時は何のことかわからなかった」
水を一口飲んで、もう一度呼吸を整えてから寛貴を見た。
「一人で来ないと麗香ちゃんに酷いことをするって言われたの。一人で行くのは危険だと分かっていたけど心配だったの。寛貴には迷惑かけたよね、ごめんなさい」
そう言うと、寛貴はムッとしたように私を見た。
…気に障ること言ったかな?
「宮野は当然で、オレには迷惑をかける。どうしてそう思うんだ」
分かってるくせにどうして聞くの?自分で良く理解してるつもりだけど言いにくいよ。
答えたくなくて、俯いていると不機嫌そうな声で「梨桜」と名前を呼ばれて顔を上げた。
「だって、私は朱雀の人達に良く思われてないでしょう?私の事を助けに来たら、寛貴の下についている人達が反発するかもしれない。…違う?」
違わないでしょう?その気持ちを込めて寛貴を見ると、フッと笑った。
「そんなくだらないことを気にしていたのか。オレが決めたことに従えないなら、チームから抜ければいい。それだけだ」
「…」
返す言葉もなく、ただ寛貴の顔を見ていた。
なに?そのオレ様な考え…総長だからって強引すぎじゃない?
「宮野だって似たようなものだろ」
そう言って寛貴は笑った。…否定できないのが悲しい。
「だから、生徒会を辞める必要はない。…分かったな?」
相変わらず強引…
それは悠君の事を含めてそう言っているんだろうか?
「なぁ、梨桜」
悠君にも謝らないといけないな。
水を飲みながら考えていると寛貴が私をジッと見ていた。
「なに?」
昨日から色々な事がありすぎて、何だかとても疲れた。私にとってはキャパオーバーなのかもしれない。
「おまえ、体が熱くないか?」
「…そうかな?」
自分の額に手を当てて首を捻った。
涼先生から、熱が上がるかもしれない。と言われていたけれど、熱っぽい自覚はあまりない。
「さっきキスした時に口の中が熱かったぞ。熱があるんじゃないのか?」
その言葉に顔が熱くなるのが分かった。今ので絶対体温が上がった!
それよりも、どういう熱の測り方してるのよ!?
「なっ…何でそんな…」
寛貴は、枕元にあった体温計で、体温を測らせると「やっぱりな」と言い病室を出て行った。
すぐに看護師が来てもう一度熱を確認すると、私はベッドに寝かしつけられて…
二日間、高熱にうなされた。
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