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秋桜  作者: 七地
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朱雀(3)

次の日私は熱が出てしまい学校を休んだ。怪我をしてからよく熱を出してしまう。


今回はそんなにひどくならなかったので夕方位には熱も下がってリビングで休んでいた


葵が帰ってくる時間が近づいたので夕飯の支度をしようと思って冷蔵庫を開けたら‥


「おかずになるような食材ないじゃん!」


財布と携帯を持って近くのスーパーに行くことにした


Tシャツに細身のコットンパンツを合わせて、ソファにおいてあった葵のパーカーを羽織って外に出た

ずっと寝ていて乱れた髪は緩くサイドで結ぶだけ‥おしゃれとは程遠い恰好をしてスーパーで買い物をした


今日の夕飯は手抜きをさせてもらおう。葵、ごめんね?明日はちゃんとおいしいごはん作るからね


スーパーを出て家の近くのコンビニに寄って雑誌を選んでいるとガラス越しの駐車場に黒い高級車が止まった。


ガラス越しの正面に停まった車の助手席に座っていた男を見て思わず俯いた。


“海堂 悠”なんで彼がここにいるの?


後ろの座席に2人乗っているのが見えた。海堂悠は車のドアを開けコンビニに入ってきた。私の後ろを通り飲み物が入っているガラスケースの前で立ち止まった

私はしゃがんで下の棚に置いてある棚から本を探すふりをした。


彼の視界から消えたかった。ガラスの扉が開く音がしてカシャンと缶を取り出す音がした。

“バタン”と扉が閉められ彼がレジの方へ歩いて行くと、運悪くポケットに入った携帯が鳴った。


この音は葵専用の着信メロディだ。

背中を痛めないように慎重に立ち上がり、足早にコンビニを出て車が駐車されている反対側へ歩き通話ボタンを押した。


『おい、今どこにいる』


おもいっきり不機嫌な声だった


「コンビニ」


『熱出したのにふらふら出歩いてんな。迎えに行くから待ってろ』


「こないで。今来ちゃダメ」


信号待ちをしていると、背後で車のドアが閉まる音がした


『バカなこと言うな。動かないで待ってろよ』


目の前で朱雀の幹部を乗せた車が反対車線へ右折した


「来ないで、今目の前に昨日の車がいるの」


『梨桜?』


窓が少しだけ開いていた。


フルスモークでこちらからは窺い知れないけれどきっと藤島寛貴と大橋拓弥も乗っている。私は自分の爪先を見ながら話した


「大丈夫だから。少しだけ遠回りして帰るから」


信号が変わり私は歩き出した。

助手席に海堂悠を乗せた車は信号待ちをしている。私は左手で携帯電話を持ち、左耳にあてたまま前だけを向いて歩いた


「葵、大丈夫だよ。普段あんなに変装してるんだから‥」


車の前を通り過ぎると、私は車が入ってこれない一方通行の道を通り、少し遠回りをしてマンションへ帰った。

部屋につくと葵はものすごく怒っていた


「…何がそんなにあぶなっかしいの?私だって北海道では一人でなんでもできてたんだよ?」


つい、言ってしまったその言葉に葵は更に怒った


「オレの双子の姉で、その容姿は敵チームに狙われるんだよ。おまえはオレの唯一の弱みだ。わかってるか?」


容姿云々はわからないけれど葵にとって私が唯一の弱みだというならそれは私にとっても同じことだ


「私だって葵が唯一の弱みだよ?本当は危ないことはやめてほしいと思ってるよ?」


そう言ったら苦しそうに葵は眉を寄せた


「今、それはできない」


今までなぜチームに入ったのか聞いたことはなかったけれど、その苦しそうな顔を見て聞いてはいけなかったのかなと思った


「葵?」


葵は私をぎゅっと抱きしめた


「梨桜、ごめん。オレがチームに入ってなければもっと自由にできるし危険なことだって減る。わかってるけど今はどうしようもないんだ。ちゃんと守るから‥」


どうしてそんなに苦しそうに言うの?


私は葵の背中をポンポンと叩いた


「葵、ちゃんと守ってね?私はまだ身体が本調子じゃないけど‥面倒見てね?」


私の背中に回った腕に一瞬力がこもった


「当たり前だろ。一生だって面倒見てやる」


「仕方ないから葵が結婚できなかったら私も面倒見てあげるよ」


くすくす笑うと葵の手が私のお尻をびしっと叩いた


「生意気な口だな」


「だってお姉ちゃんだもん」


「たった数分しか変わらないだろーが」


「でもお姉ちゃんだもん」


二人でくすくす笑ってスーパーで買ったお惣菜でご飯を食べた



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