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12歳の花婿。

"旧”イスロ本部建屋の周囲では。

現場検証の作業に当たる警察職員やら◯✕国内外の報道関係者達、そして車両で賑わっていた。



司令室内の現場検証をしていた一人の検査員が、仲間に疑問を投げかける。


「(おい!

何か、点滅してるんだけど?)」


見ると操作パネル内の液晶が1箇所のみ

"CAUTION”

の文字を点滅させている。


「(………ああ、ほっとけ。

ちょっとした不具合だろ?

こんなボロ屋なんだから。

どうせ、直ぐに取り壊すんだから気にすんな)」


仲間の調査員は、面倒臭そうに一瞥しただけだった。


一行は、そのまま調査を終え。

全員が引き揚げて行った………………





麻衣、華裏那ら日向親子は。

米国の研究室に於いて麻衣の「ベヴスタイン移植」の準備が整い次第、渡米する手筈となり。

それまでの時間を◯✕国首都にあるホテルで滞在することとなった。


ナタリアは未だ移住先を決めかねていたが、自らも麻衣のベヴスタイン移植に立ち会いたいと申し出、日向一家と行動を共にした。

気が付けばナタリアも………日向親子とも全くの他人ではなくなっていた。


だが………

麻衣は迷っていた。


(このまま、人間に戻っていいのかな?)


麻衣には。

未だ闘いの火種が消え残っている気持ちが抜けていなかった。


自らの闘う使命……………


真の安寧を取り戻すべき闘いの待つ予感がしていたのであった。




バヤルは。

当初イスロ兵と共に地元警察に身柄を拘束されていたが、日向の証言により即日釈放された。


母国へ帰国することとなったバヤル。


出立の日。

空港のロビー。


「(バヤル。

君には言葉も見つからないくらい、感謝している。

君は私の命の恩人だ。

いつでも連絡して欲しい)」


日向は。

借りていた2,000ペソ分に更に足した額の紙幣を丁重に銀行の封筒に包み、バヤルへ手渡しながら伝えた。


バヤルは照れくさそうな………それでいて、何処か寂しそうな笑顔で日向を見つめながら握手を求めた。


「(………俺は恩人なんかじゃない。

戦場で戦友を助けることなんか、当たり前のことだよ。

Mr.ヒュウガと出会えて、日本人の見方が変わった。

貴方は戦闘ヒューマノイドを造ることの出来る、立派な戦士だ!)」



華裏那が屈み込み、バヤルを抱き締める。


「(バヤル。

ずっと元気でいてね………)」


人間形態の華裏那は、バヤルにとっては身に余る程の美貌に見えた。

顔面一面を真っ赤に染めて、言葉も出ないバヤル。

そんなバヤルに、華裏那は追い打ち!


「(また、必ず会いましょうね。

………大好き!)」


素早く唇を合わせる華裏那。

思わず卒倒しそうになるバヤル!


唇を離し、寂しそうな笑みを浮かべる華裏那と暫し見つめ合うバヤルであったが………

突然!


「(………決めた!

カトリーナさん、俺の花嫁になってくれ!!)」



「ええ〜〜〜!?」



今度は見ていた周りが卒倒しそうになる番だ。



「ヤバい!

プロポーズ凸かよ!?

ヤルじゃん!

お姉ちゃん、受けちゃえば?」


麻衣が笑いながらフォローする。

完全に冗談扱いだ。


しかし、バヤルの顔は真剣そのものであった。


「(カトリーナさんが人間に戻ったら、俺が迎えに行く。

それまでに、家族と話し合いを済ませる)」



本気モードのバヤルに、麻衣も驚く。


「ええ!?

マジなの!?」



実は。

バヤルの国では児童婚や10代での婚姻も普通に行なわれており。

逆に、慌てる周囲をバヤルは訝しげに見回していたくらいであった。


華裏那本人はというと………

暫し驚きで声が出なかったが。


「(……………嬉しい!)」


やがて両手で頬を覆い、ウットリとした顔になった。



「ええ〜!?」


まんざらでも無さそうな姉を見て、再び麻衣が驚きの声を上げる。


日向が笑う。


「ハッハッハ!

良かったな、カトリーナ。

バヤルほど強く頼もしい男は、世界にそう居ないぞ」


「ちょっと!

お父さんまで!!」


慌てて麻衣が咎めようとするが………


「麻衣、私の新しい仕事が出来たぞ。

バヤルの紛争地域を守る為の、ヒューマノイドを量産することだ。

娘婿一家を守る為のな」



二人の仲は、もはや父親公認となってしまった!



「パパ………ありがとう」


バヤルと同じく本気モードの華裏那の瞳も潤む。



「お姉ちゃんて、ショタコンだったの!?

歳の差有り過ぎだろ!

もう、笑うしかない」


麻衣も苦笑いしながらも、認めざるを得なかった。



華裏那は少し不安そうにバヤルに問いかける。


「(ねえ、バヤル。

本当にアタシでいいの?

あなたは若いからいいけど、アタシ、直ぐにおばあちゃんになっちゃうわよ)」


バヤルは胸を張って言った。


「(構わないさ!

俺、もうカトリーナさん以外は考えられないんだ!!

夫婦になったら、直ぐに子供を作ろう!

多ければ多いほどいい!!)」


「まあ!♡」


再び両手で頬を覆い、照れ笑いを浮かべる華裏那!

もはや呆れ顔の麻衣も目に入らない。


日向は満足気な笑みから、安堵の表情となった。


「美枝にも、報告しないとな」


標高2,000メートルを超える中米の首都を、夕陽が照らし始めた。

それは、一行にとって明るい未来を照らす光とも思えた。




………………が!


遡ること、二日前。

旧イスロ本部建屋から解放、救出された米国研究者の一人。

ダニエル・デドロイド博士が、FBIのジムに訴えていた。


「(お願いが有ります!

イスロ本部建屋の電源を、直ちに全て断絶してください!!

大変なことになります!!)」


「(どういうことですか?)」



デドロイド博士は青ざめた顔で告げた。


「(怪物を、目覚めさせてしまいます!!)」




◯✕国検察庁留置所。


「フフフフフ……………

この私を殺せなかった時点で。

兵器としては失格だな、一号機!」


牢獄の中で、不敵に笑うドメニコ。


旧イスロ本部建屋の地下には。

麻衣にとって、最大最強の敵が眠っていたのだった!!



〈12歳の花婿・完〉


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