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その婚約破棄は間違っている  作者: 星森 永羽


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8/10

次々次々



「 リリー・カサブランカ侯爵令嬢!

今この時をもって、お前との婚約を破棄する!

そして、これからサリー・マクガレン男爵令嬢と婚約を結び直す!

お前は俺がサリーと仲がいいのに嫉妬してサリーに様々な嫌がらせをしたそうだな!

お前のような悪女とは結婚できない!」


理想の王子様の廉価版のような金髪蒼眼の優男、マイケル・トーミウォーカー第2王子は、隣にいる小柄なピンク・ブランドのサリー・マクレガンの肩を抱いてリリーを指差した。


場所は学園の大ホール。

今日は卒業記念パーティー。

最終学年の生徒と、そのパートナーたちが固唾を飲んで見守っている。


「承りました」

リリーは、満面の笑みで答える。


「では、こちらにサインを」

王子の後ろに控えていた宰相の息子が進み出て、婚約破棄の書類を差し出す。

リリーは署名済み。


「はんっ。

随分とシオらしいではないか(笑)

王族と結婚できるチャンスを袖にするのか?

……して、父親に何と説明するつもりだ?」


「修道院に送られるんじゃないかしら?

もしかすると平民になったりして」

と、ピンク( 浮気相手の男爵令嬢)が笑う。


「――では参りましょうか」

と、宰相の息子が差し出した手に、手を重ねるリリー。


それを合図に、王子の後ろにいた騎士団長の息子、豪商の息子、留学してきていた隣国の王子が、リリーの周りを囲み、一緒に会場を去ろうとする。


「 待って待って待って待って!

ちょっと待って!

何で 君ら(豪商・騎士団長・隣国の王族の息子)も、そのリリーと一緒に行こうとしてるんだ?

今夜は俺たちの婚約結び直しパーティーだろう?

それとも何か?

君らの好きなサリーが俺を選んだから当てつけに 背を向けてるんじゃないだろうな?!」


「皆ごめんなさい!!

皆の気持ちに答えられなくて。

一番は第二王子だけど、みんなのことも大好きよ!!」


ピンクが涙目で哀願する。


ため息が木霊する。

ヤバい空気。


「私は今から彼女の婚約者となりました。

そして、ここにいるメンバーも今後の婚約者候補です」


最初にリリーに手を差し伸べた宰相の息子が、答える。


「マイケルとリリーが、いつか破談になるのは目に見えてたからね」

と、褐色の肌が眩しい騎士団長の息子。


「ダメになった場合は、自分と婚約して欲しいと釣書を送ってあったんだ。

送ったタイミングが遅くてロジーニ(宰相の息子)に負けてしまったが」

と、豪商の息子。


「さすがに僕は、もうタイムオーバーだから、国に帰って派閥の貴族と結婚することになるけどね。

残念だよ、全く」

と、爽やかな隣国の王子。



「いやいやいやいや、待って待って待って待って! ちょっと待って!

着いていけない!

皆サリー(ピンク)が好きで俺らに協力してくれてたんじゃないのか?」

と、バカ王子。


「そうよ!

散々、私のこと『可愛い』とか言ってたくせに!

そんな 傷物の何がいいのよ?!」

と、ピンクが激昂してリリーを指差す。


「んー、サリーね~…… 見た目が可愛くないとは思わないけど……結婚相手にはできないよ。

ぶっちゃけトラブルメーカーでしかないもん」

と、隣国の王族。


「リリーは王命で王子の婚約者に指名されるほど才色兼備で、王妃教育も終わってるんだ。

みんな喉から手が出るほど欲しいに決まっている。

それに比べて彼女は、ちょっと……」

と、宰相の息子。


「 マイケルとサリーをくっつけたかったのは2人のためじゃなくて、自分たちのためさ。

そしたら俺たちにチャンスあるじゃん」

と、豪商の息子。


「そんな……ロジーニ(宰相の息子)

そのままいけば俺の側近じゃなくなるぞ?

いいのか?」


「あなたは、これから男爵家(ピンクの実家)に婿入りするのですから、 関係ないじゃないですか」


「仮に廃嫡しても公爵を賜るはずだろ?」


「それは公爵家(リリーの実家)の後ろ盾 あってのことで、男爵家では無理でしょう(笑)」


「冗談でしょ!

嫌よ! 

一生、男爵位なんて!

何のために今まで頑張ったと思ってるの?!」

と、ピンクが喚く。


「『爵位なんか関係なく俺が好きだ』って言っただろ!」

と、王子がピンクに怒鳴る。


「貴族社会に、そんな純粋な人いるわけないでしょ!」


喧嘩を始めた2人に背を向け、リリー公爵令嬢と取巻き5人は旅立った。


そのまま向かった卒業旅行先で、魔王を倒したのは、また別の話。




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