次々次々
「 リリー・カサブランカ侯爵令嬢!
今この時をもって、お前との婚約を破棄する!
そして、これからサリー・マクガレン男爵令嬢と婚約を結び直す!
お前は俺がサリーと仲がいいのに嫉妬してサリーに様々な嫌がらせをしたそうだな!
お前のような悪女とは結婚できない!」
理想の王子様の廉価版のような金髪蒼眼の優男、マイケル・トーミウォーカー第2王子は、隣にいる小柄なピンク・ブランドのサリー・マクレガンの肩を抱いてリリーを指差した。
場所は学園の大ホール。
今日は卒業記念パーティー。
最終学年の生徒と、そのパートナーたちが固唾を飲んで見守っている。
「承りました」
リリーは、満面の笑みで答える。
「では、こちらにサインを」
王子の後ろに控えていた宰相の息子が進み出て、婚約破棄の書類を差し出す。
リリーは署名済み。
「はんっ。
随分とシオらしいではないか(笑)
王族と結婚できるチャンスを袖にするのか?
……して、父親に何と説明するつもりだ?」
「修道院に送られるんじゃないかしら?
もしかすると平民になったりして」
と、ピンク( 浮気相手の男爵令嬢)が笑う。
「――では参りましょうか」
と、宰相の息子が差し出した手に、手を重ねるリリー。
それを合図に、王子の後ろにいた騎士団長の息子、豪商の息子、留学してきていた隣国の王子が、リリーの周りを囲み、一緒に会場を去ろうとする。
「 待って待って待って待って!
ちょっと待って!
何で 君ら(豪商・騎士団長・隣国の王族の息子)も、その女と一緒に行こうとしてるんだ?
今夜は俺たちの婚約結び直しパーティーだろう?
それとも何か?
君らの好きなサリーが俺を選んだから当てつけに 背を向けてるんじゃないだろうな?!」
「皆ごめんなさい!!
皆の気持ちに答えられなくて。
一番は第二王子だけど、みんなのことも大好きよ!!」
ピンクが涙目で哀願する。
ため息が木霊する。
ヤバい空気。
「私は今から彼女の婚約者となりました。
そして、ここにいるメンバーも今後の婚約者候補です」
最初にリリーに手を差し伸べた宰相の息子が、答える。
「マイケルとリリーが、いつか破談になるのは目に見えてたからね」
と、褐色の肌が眩しい騎士団長の息子。
「ダメになった場合は、自分と婚約して欲しいと釣書を送ってあったんだ。
送ったタイミングが遅くてロジーニ(宰相の息子)に負けてしまったが」
と、豪商の息子。
「さすがに僕は、もうタイムオーバーだから、国に帰って派閥の貴族と結婚することになるけどね。
残念だよ、全く」
と、爽やかな隣国の王子。
「いやいやいやいや、待って待って待って待って! ちょっと待って!
着いていけない!
皆サリー(ピンク)が好きで俺らに協力してくれてたんじゃないのか?」
と、バカ王子。
「そうよ!
散々、私のこと『可愛い』とか言ってたくせに!
そんな 傷物の何がいいのよ?!」
と、ピンクが激昂してリリーを指差す。
「んー、サリーね~…… 見た目が可愛くないとは思わないけど……結婚相手にはできないよ。
ぶっちゃけトラブルメーカーでしかないもん」
と、隣国の王族。
「リリーは王命で王子の婚約者に指名されるほど才色兼備で、王妃教育も終わってるんだ。
みんな喉から手が出るほど欲しいに決まっている。
それに比べて彼女は、ちょっと……」
と、宰相の息子。
「 マイケルとサリーをくっつけたかったのは2人のためじゃなくて、自分たちのためさ。
そしたら俺たちにチャンスあるじゃん」
と、豪商の息子。
「そんな……ロジーニ(宰相の息子)
そのままいけば俺の側近じゃなくなるぞ?
いいのか?」
「あなたは、これから男爵家(ピンクの実家)に婿入りするのですから、 関係ないじゃないですか」
「仮に廃嫡しても公爵を賜るはずだろ?」
「それは公爵家(リリーの実家)の後ろ盾 あってのことで、男爵家では無理でしょう(笑)」
「冗談でしょ!
嫌よ!
一生、男爵位なんて!
何のために今まで頑張ったと思ってるの?!」
と、ピンクが喚く。
「『爵位なんか関係なく俺が好きだ』って言っただろ!」
と、王子がピンクに怒鳴る。
「貴族社会に、そんな純粋な人いるわけないでしょ!」
喧嘩を始めた2人に背を向け、リリー公爵令嬢と取巻き5人は旅立った。
そのまま向かった卒業旅行先で、魔王を倒したのは、また別の話。




