嘘に決まってるじゃない
「 リリー・カサブランカ侯爵令嬢!
今この時をもって、お前との婚約を破棄する!
そして、これからは、このサリー・マクガレン男爵令嬢と婚約を結び直す!
お前は俺がサリーと仲がいいのに嫉妬してサリーに様々な嫌がらせをしたそうだな!
お前のような悪女とは結婚できない!」
理想の王子様の廉価版のような金八蒼眼の優男、マイケル・トーミウォーカー公爵令息は、隣にいる小柄なピンク・ブランドのサリー・マクレガンの肩を抱いてリリーを指差した。
場所は学園の大ホール 。
今日は卒業記念パーティー。
最終学年の生徒と、そのパートナーたちが固唾を飲んで見守っている。
「どうぞ、どうぞ。
できるものなら、やってみてください」
リリーは、満面の笑みで答える。
「は? できるに決まってるだろう!
そんなこと言って俺が怯むとでも思ってるのか?
そこまでして俺との婚約を継続したいのであれば、もっと俺に好かれる努力をすればよかったものを……。
お前はいつでも素っ気なかったではないか。
今更 後悔したって遅いんだぞ」
「きっと頭がおかしくなったふりをして婚約破棄をうやむやにしたいのでしょう。
それだけ、あなたのことが好きだったのではないですか」
ピンクが助言する。
「なぜ婚約者でもない、あなたに愛想を良くしなければならないのですか?
あなたの婚約相手は私の双子の姉であって私ではありません」
「は? 双子?
ど、どういうことだ?
お前は1人娘だろう?」
「姉は病弱な上、極度の人見知りだったので、幼い頃からずっと領地に引きこもっています。
いつ亡くなるかわからなかったので両親は、姉の存在を社交界から隠してきました。
噂のネタにされたくなかったのです。
ですから、私は姉の代理をしたまで私は3ヶ月後に王宮勤めの方と結婚します」
「なんだ、それは!?
それでは詐欺ではないか」
「いいえ。
婚約届にはきちんと姉の名前が書いてあります 。
それとも公爵家の ご令息ともあろう方が 重要書類をきちんと確認しなかったのですか?
私の目の前でサインしたはずですが」
「ぐ……」
本当は双子の姉などいない。
婚約者だったのは私だ。
だけどマイケルが浮気した上、有力侯爵家の令嬢に対し面前で冤罪をかけ侮辱したことと――
公爵家が婚約相手の調査を徹底しないはずないのに、姉がいるなんて嘘を平気で信じたこと。
重要な書類の確認すらしてなかったこと。
これらのことで廃嫡になるか、悪ければ追放、良くても重要な仕事はさせず飼い殺しになる彼の未来が決まった。
信じるなら、どうぞご勝手に。
さようなら、おバカさん。