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「リリー・カサブランカ侯爵令嬢!

今この時をもって、お前との婚約を破棄する!

そして、これからはこのサリー・マクガレン男爵令嬢と婚約を結び直す!


お前は俺がサリーと仲がいいのに嫉妬して、サリーに様々な嫌がらせをしたそうだな!

お前のような悪女とは結婚できない!

国外追放だ!

今すぐ出ていけ!」


理想の王子様の廉価版のような金髪蒼眼の優男、マイケル・トミーウォーカー王太子は隣にいるピンク・ブランドのサリー・マクレガンの肩を抱いてリリーを指差した。


場所は学園の大ホール。

今日は卒業記念パーティー。

最終学年の生徒と、そのパートナーたちが固唾を飲んで見守っている。


「承りました」


リリーは、恭しくカテーシーすると、王宮を後にした。







「あでっ!」


衝撃音とともに王太子が床に倒れ込む。

その赤く腫れた頬に、手を当てた。


「お前は!

なんてことをしてくれたんです!

あのリリーが、どれほど王宮内や国内情勢について詳しいと思ってるんです?!

愛はなくても……まさか婚約破棄するなんて思わなかったから、私たちの仕事を代わりにやらせていたのよ。

国家機密を握ってる相手を国外に出すなんて、敵に塩を送ったのと同じじゃない。

今すぐ連れ戻していらっしゃい!」


マイケル王太子の母である王妃は、 額に青筋を何本も立てながら捲し立てた。


「し、しかし母上、もう一週間は経ってますから、すでに他国に渡ってるのでは?」


「いいから今すぐ首に縄つけてでも連れてくるのよ!

もし抵抗するようなら、その場で切り殺してしまいなさい」


そこへバタバタと足音。


「申し上げます!」

額に汗を浮かべた伝令が、血相を変えて発言する。


「カサブランカ侯爵家の館はすでにもぬけの殻になっており、領地も秘密裏に売買契約がなされていたそうで全て人手に渡っています。

侯爵の行方は不明です」


「申し上げます!」

別の伝令が、やってきて跪く。


「ガルシニア帝国の軍が、こちらに向かってきています」


「申し上げます」

3人目の伝令が来る。


「寝返り工作されていたらしく、我が軍の ほとんどがガルシア帝国に鞍替えした模様。

降伏以外の選択肢は残っておりません」


「申し上げます」

と、4人目。


「ガルシニア帝国より降伏を勧告する使者が来ました。

リリー・カサブランカ侯爵令嬢です」


「いえ、今は侯爵令嬢ではありません

ガルシニア帝国では、今回の功績により父は公爵位を賜りました。

どうぞ、カサブランカ公爵令嬢とお呼びください 。

ご無沙汰しております、王妃様」


許可はおろか、ノックもせず入室したリリーは、そう言って王妃に微笑みかけた。






城は無血開城し、リリーの祖国は滅びた。


王族及びマクガレン男爵家は露と消えた。


リリーが買収したのは伝令だけ。

つまり、城の伝令係に虚偽の報告をさせたということです。

王国軍の兵士は寝返っていませんでした。

他国からの進軍もしていません。


情報って怖い((( ;゜Д゜)))


諸行無常の鐘の音が響いただか、響かなかっただか……。




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