04話
「ねえねえ都会の方ってどんな感じなの?どうしてこの街来たのー?」
「なんかスポーツやってたりしたか?」
「後で学校の中案内してあげるよ~」
「なんか好きなものとかある?どの辺に住んでるの?」
「動物とか好きぃ?このあたりいろいろ見られるから面白いよ」
「連絡先教えてー」
「あ、俺も教えてくれ」
「わたしも~」
先生からの連絡事項やらなんやらが終わり、とりあえず待ちの時間になったというタイミングで彼の周りにはクラスメイト達が集まり始めた。俺はその輪に入ることなく、自分の席で適当にスマホをいじりながら目の前に集まる彼らの話の内容に耳を傾けていた。話の内容は全然聞いてなかったが、色々と質問攻めにあっていることだけは分かった。彼はそれに対し一人ひとりに適当な返しをして盛り上がっているようだった。
さっきの自己紹介で口下手とか言ってたけど、それが嘘だろと思うほどに彼は色々な人とずっと何かしら話してた。口下手というより、相手の話している内容に対しての返し方がとてつもなく上手いということだと思う。会話のレパートリーが多く、どんな話もガチで楽しそうに話している。
彼がすごい速さでクラスに馴染んでいるということだけはただ見てるだけの俺でも分かった。まあ俺には関係ないから、別に必要なとき以外で直接話すこともないだろうし、出来れば関わらずに過ごしたいところではある。
それはさておき、その後始業式で校長先生の長い挨拶やら生活指導の先生からのお話やらを聞いた後、午前中で学校は終わった。午後は自由解散ということだったけど、俺は朝会った二人といつもの場所で昼を食べる約束をしているから、ホームルームが終わると荷物を持ち目の前にできていた人だかりを横目に教室を出てその場所へと向かった。
4階からさらに階段を上った先にある扉を開け外に出ると、何もない屋上の端に少しだけある日陰に彼らがいた。先にお昼を食べている彼らの方に近づき、その隣に腰を下ろした。
「遅かったな」
「授業は普通に終わったんだけど、人が多くてなかなか外に出られなかったんだよ」
「なるほどねぇ、私たちは階が違うから特に何ともなかったけど、そっちのクラスは絶対大変そうだよねぇ~私たちのクラスの人も終わってすぐ様子見に行こうとした子いたし」
「普通に疲れる…」
「お前、昔から人混みとか苦手だしな」
そうじゃなくてもアレは誰でも疲れると思う
「多分明日からの方がヤバいんじゃない~?」
「なんで?」
「明日から授業とか部活の活動とか始まるでしょ~?それで今の勉強の進みを教えようとする人とか、部活の勧誘をする人とかが集まってくるんじゃないかなぁ?」
…確かにそれはありそうだな。明日は早めに教室を出て速攻帰ろうかな
「俺らのクラスでも話題になってるくらいだし、普通に興味本位で見に行くのもしばらくはいるだろうな」
うわぁ、普通に嫌だな
「でもしょうがないよな…」
俺は、はぁというため息を飲み込み、ここに来る前に購買で買ってきた昼食を出して食べ始めた。
「ところでさぁ~さっきから上がってる話題の中心人物、転校生の話なんだけどさぁ~
何か直接話したりしたぁ?」
「俺が自分から話しにいくと思うか?」
「まったく!」
じゃあ何で聞いたんだよ
「でも話してなくてもさぁ、何かしらは聞いたんじゃないのぉ~?」
何かあったか?名前しか聞いてない気がする
「名前とか見た目くらいしか俺は知らないけど」
「そういうのも大事でしょ~!」
「俺らはまだ名前すら知らないから、ぱっと見の印象とかでいいから教えてよ」
「…わかった。印象はあくまで俺の中でのやつだから、本当にそうとは限らないからな?」
「分かってるって~」
昼食を食べながらそんな話をしてるうちに結構時間が経っていた。あとから来た俺も昼食を食べ終わり、
「…はぁ」
「なんかさっきからずっと憂鬱そうな顔してるけど、人が多いからってだけでそんな疲れるか?」
「私もそれ思ってたぁ~いくら人苦手だからってさぁ、直接いろいろ話したわけでもないのにどうしたのぉ?」
「………例の転校生、俺の前の席なんだよ」
「え」
…やっぱ言わない方が良かったか
「めっっちゃいいじゃん!え、それで話してないのぉ~?もったいない~!」
「それ絶対否が応でも話す機会あるだろうな」
「別に話すのはいいんだけど、人が集まるのとか騒がしくなるのが嫌なんだよ」
「「あー」」
「お前クラスの奴とほとんど話さないしな」
「それはしょうがないんじゃないかなぁ、時間が解決するのを待つしかないかもねぇ~」
いや喧嘩してるわけじゃないんだよ
でもそうだよなぁ、結局のところ一時的な興味で話しかけている奴もいるだろうし、しばらくうるさくなるのは仕方ないよな。俺だけの場所ってわけじゃないし、悪気があるわけじゃないのは分かってる
それでも俺の平穏の領域を脅かされるのは普通に嫌なので、近くでやるのはできればやめてほしい
あとついでに言うと、俺が他の奴らと話さないのは単に話が合わないだけであって、会話自体が嫌いなわけじゃない。俺は新聞とかテレビとかほとんど見ないし、俳優や芸人、アイドルとかのテレビに出ている芸能人は分からない。よく聞く名前だけは知ってるけど、名前と顔は一致しないくらいには知らない。
スポーツもたまに姉や家族がテレビで見ているのを後ろから眺めてるくらいで、有名な選手とかも全然知らないからそういう話をされても分からないんだよな。
興味ないことはなかなか覚えられないし趣味が違うのは当たり前だから、そこまで頻繁にクラスの奴らと話すことはない。だから別に決して話すのが嫌いとか相手が気に食わないとかそういうわけではなく、くだらない話をするのは同じ人が多いっていうだけだ。
「つまり友達がいないってはっきり言いたくないからぁ、わざと一人でいると」
…
「人と話すことなんてそんな難しくないだろ。単にゲームしたいからあんまり人と話さないだけじゃないの?別にゲーム自体は特別おかしな趣味でもないし、近い話ができる人は探せばいそうだけど」
…
「だからその探す過程で人と話すっていうのが好きじゃないっていうことなんじゃないのぉ?」
「別に人との会話は嫌いじゃないだろ?」
「話の内容に詳しく突っ込まれたり、共通の話題じゃないと話しずらいってことでしょ~断るのも苦手だし。なんだかんだ押しに弱いタイプだからねぇ~」
「まぁ確かに。でもそれで言うなら俺らも好きなものは少し違うし、言われて分からないことなんていくらでもあるけどそれは違うのか?」
「私たちは互いのことほとんど知り尽くしてるからねぇ~知り合った年月が圧倒的に違うし、趣味のジャンルも結構近いからまたちょっと違うんじゃないかなぁ。そこまで気を使わなくていいしねぇ~」
「うーん、俺はよくわかんないな」
「とにかく簡単に言えば、話しずらい人と関わるよりは何も考えず独りでいる方が楽ってことだと思うよぉ」
「へぇー」
絶対分かってないだろ。色々言いたい放題しかされてない気がするけど、彼女が言っていたことも別に否定はしない。別に俺に関して色々言われることは興味ないけど、会話は楽しいのが一番良いのは当たり前だし結局のところ雰囲気の問題だと俺は思ってる。
だから別に友達がいないわけじゃない
「別に一人でいることが悪いわけじゃないんだけどねぇ」
「何か言ったか?」
「いやぁ~?別に何も言ってないよぉ~」




