01話 とある存在の朝
ピピピピピピピピピピピ…ピッ……
スマホの画面を覗く
…7時半
まだ寝れ…る……
再び目が閉じかけると、1階から少し高めの元気で大きな声が俺の部屋の方まで聞こえてくる。
「ーー、早く起きなー!学校遅れるよ!」
…はぁ
ほんと朝から元気だな。毎日毎日朝からそんな大声出して疲れないのか?
そんなことを頭の片隅で思いつつ、まだ意識のはっきりしない頭を上げてのそのそと布団から這い出るとベッドから体を起こす。もう日は昇っていて、カーテンの隙間から見える光で部屋の中が明るくなっている。
一度大きなあくびをした後、ぐちゃぐちゃの布団を放置してゆっくりと立ち上がり、床のものを踏まないように気を付けつつ部屋を出る。部屋を出て1階へ行くと、洗面所で適当に歯を磨いて顔を洗う。
その後一度部屋に戻り、クローゼットから制服を取り出すと半袖のシャツと涼しい夏仕様になった制服に着替え、窓のカーテンを開けて部屋に日を入れる。夏の朝は明るくなるのが早く、カーテンを開けるだけで部屋の半分ほどが明るくなった。
さっき放置したベッドをキレイに整え部屋を出ると、階段を降りリビングに行く前に洗面所に寄ってさっきまで着ていた寝間着を洗濯機に放り込む。
リビングに入ると、先に朝食を食べ終えた姉が母と楽しそうに話しながら食器を洗っていた。
それを横目に俺はキッチンへ行きトースターでパンを焼いて、焼けるのを待っている間、食卓の椅子に座ってテレビを見ながら机の上に用意されたサラダを自分用に取り分ける。
ドレッシングをかけたサラダを食べつつ、さっき俺を起こそうと大声を発し今はキッチンでお皿を洗っている姉に対して話しかけた。
「…毎回思うけど、まだ時間あるのによく早起きするな」
「あなたが遅すぎるだけだと思うけど?毎日毎日遅くまで起きて朝はギリギリって疲れるでしょ
それに早く起きると頭がすっきりして一日元気に過ごせるからおすすめだよ。起きは三文の徳って言うしね~。なんならこの優しいお姉ちゃんが、毎日部屋まで起こしに行ってあげましょうかー?」
姉さんが”優しい”の部分をやけに強調してそう答える。
「遠慮しますー。ただでさえ毎朝その元気でうるさい声を聞くので疲れてるからマジでやめて
てか本当に朝から元気だよな、見てるだけで疲れる。おれは夜行性で朝日を浴びると消える体質なので起こさないでくれませんかね?」
「はー?ただ徹夜でゲームやってるだけでしょ?
いつもギリギリに学校行って怒られて、先生に目をつけられてたのはどこのだれでしたっけねぇ~」
「別に毎日じゃないし。大体ギリギリでも間に合ってるんだからいいだろ。てかそんな駄弁ってていいのか?今日はあの人と約束してるんだろ?」
「え~なんで知ってんの?思考でも読んだ?ほんとあなたってさぁ、いつも人と話さないのにいざ話してみたら喋るの上手いし感情無だし、かと思ったら急に天然だし。そのわりに感情の起伏には敏感で相手をよく見てるっていうか、確信ついてくるっていうか。それで直接対人で話すのは苦手なのが不思議すぎるんだよねぇ」
それは褒めてんの?けなしてんの?
ただなんかいつも以上に明るくどっか浮かれてて、動きから表情から全てがうるさいからそうなんじゃないかって思っただけだけど、それで俺が色々言われるのはマジで意味わかんねぇ。てか昨日帰りに本人から聞いただけだし
「なんだ聞いたの?ちぇ、つまんないのぉ」
姉さんはそう言うと、本当につまらなさそうに口と尖らせたかと思えば、例の約束のことを思い浮かべているのかすぐその口元に嬉しそうな笑みを浮かべていた。
本人は隠しているつもりらしいが、毎回誰が見ても分かるほどワクワクが抑えきれていないってことに気づいてないんだろうか。少なくともうちの家族は全員気づいてる。
ほんと感情が忙しいんだよな、この人。まあ、姉さんのそういうはっきりしてるところが人から好かれる理由の一つなんだろうけど、絶対にそれは俺から本人には言わない。ウザがらみされる予感しかしない。
そんな姉さんは、皿洗いが終わってしばらく俺とくだらない世間話をしていた後、チラッと時間を確認したかと思うと機敏に動き出し、今さっき焼けたパンを乗せた皿を俺の前に置いてバタバタとリビングを出ていった。蚊と思えばすぐ戻ってきて、荷物を持ち玄関の方へ向かい浮足立つ様子を見せながら
「いってきまーす!」
と現役の小学生のような元気な返事をして出かけて行った。
ちなみに、なんで姉さんがこんなに嬉しそうな様子をしてるのかと言うと、今日は幼馴染の俺とも顔なじみのある姉さんの彼氏が姉さんをデートに誘ったらしく、朝から浮足立ってるらしい。
姉さんたちの通っている大学は9月まで夏休みで、今日は一日二人でいろんなところに行こうと思ってると、姉さんではなく数日前に偶然、外で会った相手の方から聞いた。
悪い人じゃない、しむしろ非の打ちどころが少ないめっちゃいい人、というか姉さんにはもったいなすぎる人だけど、まあ二人ともいつ見ても楽しそうなので本当にお似合いだとは思う。
これは本心。お互いをよく知っていて信頼、尊敬しあってるあの二人の相性の良さは、さすがに俺でも分かる。まあ、もし何かあったとしても、心配をしなくても姉さんの方が強いから、何かあったらあの人のことなんてどうにでもできるだろうし。なんあらあの人ごと守ってしまうかもしれないとは思ってる。
そんな話は置いておいて、俺も朝食を食べて学校に向かうか。まだ全然時間はあるし正直もう一回寝たいけど、さすがに新学期初日に遅刻はヤバいから、ゆっくり準備とかしてのんびり行こうと思う。
朝食を食べ終え自分の部屋に戻り準備しておいたリュックを持つと、部屋のエアコンをつけて玄関に向かう。一応時間を確認した後、靴を履いて玄関の鍵を開けいつも通り家を出た。
「いってきまーす」
…ふぁ、はぁ。マジで眠い




