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10話

 数日後、彼らがそろってうちに来た。なんか、咲弥と芽彩が偶然来る途中で会ってそのまま一緒にうちに向かってたところで、コンビニ近くの道で偶然織部に出会って、結局三人揃ってうちまで来たらしい。

 それはいいとして、一つ誤算だったのは俺が思ってたよりも彼らが早めに来たので、ちょうど出かけようとしていた姉さんたちとギリギリかち合ってしまったということ。インターホンが鳴って先に姉が出たときは本当に最悪だと思ったけど、久々に二人と会えて姉さんも喜んでいたし咲弥と芽彩も楽しそうにしていたからまぁいいか。


「わあ、こんにちはー、お久しぶりで~す!藍のお姉さん()!」

「え、芽彩ちゃんだ!久しぶりだねぇー!」

 会ってさっそく女子二人でワーキャーしている。二人は昔から仲良くて、連絡とかもたまに取ってるらしい。年もそんなに離れてないから話も合うのかもしれない。

 見ているだけで楽しそうだけど、このままだとずっと二人で話してるだけで今日が終わる予感しかしない。

 そんなことを思っていたら、リビングの方から両親が現れて俺たちの方に向けて話しかけてきた。


「思っていたよりも早かったね」

「まぁいいんじゃないですか?私たちも久しぶりに二人の姿が見られてうれしいし」

「お久しぶりです、藍のお父さん」

「久しぶりだね、咲弥くん。ずいぶんと大きくなったなぁ」

「本当数年のうちに二人とも大きくなったよねぇ」

「あ!藍のお父さんとお母さんもお久しぶりで~す!」

「芽彩ちゃんも久しぶりねぇ。小学生の時以来かしら?会えてうれしいわ」

「それで彼が転校生の?」


そう言った父さんの視線の先には、いつものように笑顔を浮かべた織部が様子を伺うように彼らの少し後ろに立っていた。

「そう、彼がおれのクラスに転校してきた織部海翔。席が近いのがきっかけで話すようになった。織部、あっちにいる二人は俺の両親でこの芽彩と一緒に話してる人がおれの姉さん」

「初めまして!藍の姉の天希(すみれ)です。いつもこの子と仲良くしてくれてありがとうね~」

「織部海翔です、いつも弟さんには良い話し相手になってもらっています」

 意外と真面目なんだよな。学校ではもっと軽い雰囲気があるから、こういう感じの織部を見るのは新鮮な気がする。

「廊下にこんなに人が集まったらさすがに狭い。私らは行こうか」

「そうですね。私たちは出かけるから、三人ともゆっくりしていってね!」

「「「ありがとうございます!」」」


 そんな会話を交わした後、姉さんと両親は三人と挨拶をしてそのまますぐ出かけて行った。中に入った俺と咲弥、芽彩、織部はリビングに向かった。


 俺たちはリビングでおやつ食べつつ、今日何するかを話していた。マジで何も決めてない、計画性が無さすぎる…

「家でなにするかに計画なんてあるか?」

 いや、確かにない。普段から色々話してるから何が家にあるかは多少知ってるだろうし、正直全然気にしてなかった。けど、言ってくれれば準備くらいはできたっていうのにさぁ。

「うちでやれることといったら、ゲームか犬たちと戯れるかかな」

「犬!そういえば姿が見えないけどぉ〜サンゴちゃんは元気〜?

 前はよく一緒に遊んでたよねぇ~近くの川にも行ったりして。サンゴちゃん、水の中にざばざば入って行くから一緒になって濡れちゃったりしてね~懐かしいなぁ」

「今も元気だよ。昔よりはおっとりしてきたけど、まだまだ散歩も毎日るんるん元気に行ってるし」

「そうなんだぁ!会いたいな~」

「じゃあ少し待ってて」


 そう言って俺は2階に向かい、両親の寝室の方にいた二匹を連れて行った。

 正確に言えば、ワサビが先に部屋飛び出して1階に駆け下り、リビングの方へ向かっていった音がした。下の階から芽彩の悲鳴のような歓喜の声が聞こえてくる。

 二匹を上の階に連れて行っていたのは、ワサビのテンションが上がりすぎるというのも一つだけど、こうなるんじゃないかと思っていたからなんだよな。


 俺はサンゴさんと一緒に普通のスピードで階段を下りて、リビングの方へと向かう。

 開いたリビングの扉から中に入って行くと、待ち構えていたかのように、ワサビを全力で撫でまわしている芽彩から雨のような質問が降ってきた。

「この子だれ?いつからいたの?今何歳くらい?犬種は?豆しば?名前は何て言うのぉ~?」

「ちょっと落ち着け。藍が引いてる、というか困ってる」

「はは、前から思ってたけど藍って押しに弱いよなぁ。すーぐタジタジになる」

「…別にそんなことない。その話はもういいだろ」

「それは分かったから早くこの子のこと教えてよお~」


「芽彩はほんと興味があること以外話聞かないよな、自分の好きなことに一直線って感じがする

 その子はワサビ、黒柴だよ。今年の夏前あたりから飼い始めて、歳はちょうど半年過ぎたくらいかな。親戚の家で柴の子供が生まれたって聞いて、その中から一匹をもらってきたんだ

 動物好きな姉さんと母さんが選んで、生まれた子たちの中で一番暴れてすぐ寝てた子にしたらしい」

「普通の柴犬なのか?」

「親はどっちも柴犬だよ、多分ワサビももっとでかくなると思うけど」

「このふわふわがもっと大きくなるなんてぇ、絶対かわいいでしょ。うらやまし~」

「ほんとかわいいし人懐っこいよな。俺が散歩中に会ったときも飛びかかる勢いだったからなあ」

「織部は会ったことあったのか」

「でもそっちの大きい子は初めて会ったぜ。さっき言ってたサンゴがこの子?」

「そうだよ。ラブラドールのサンゴさん、今7歳で来年の2月で8歳だね」

「ちなみにサンゴさんと俺は誕生日同じ」

「へぇ」


 さっきまで俺の横にいたサンゴさんは、久々に咲弥に会えたことがうれしいようでリビングに着くと真っ先に咲弥の横へ駆けていった。笑顔で尻尾をぶんぶんと振って、咲弥に対し本気で甘えている。

 家族以外でこんな姿を見せるのは多分咲弥くらいな気がする。なんならうちの人よりも懐いていると思う。そのくらい、サンゴさんにとって咲弥は特別らしい。

 それを見て芽彩が、ずるい~!私もサンゴさんに甘えられたい!と言ってる。

 昔も同じような状況で芽彩が同じようなことを言ってた覚えがあって、俺的にはすごいこの空気感に懐かしさを感じる。

 さらにそんな芽彩を見て、もっと自分にかまってー!と言っているかのようにワサビが全力で芽彩にアタックしている。もしかしたら、芽彩とワサビは性格が似てるかもしれない…似てると言うか、相性がいいのか


 芽彩がサンゴさんのところに行くと、今度は咲弥のところにワサビは突撃していった。

 そんな二人と二匹の攻防を、俺と織部は食卓の椅子に向かい合って座り、のんびり飲み物でも飲みながらしばらく眺めてた。

「俺が初めて会ったときもそうだったけど、ワサビはヒトも犬もみんな好きなんだなー」

「なんでそんな嬉しそうなんだ?」

「いや~ああいう誰にでも懐いて元気な子見てると、こっちまで元気になれるというか

 見てるだけで楽しいんだよなぁ。なんかうちの兄弟を見てる気分」

 それ、意味によっては自分の兄弟がイヌみたいって言ってることにならないか…

「ほんと、うちの兄弟たちは元気でちょっと騒がしくてほんと犬みたいなんだよなぁ~」

 そっちの意味で合っていたらしい

「ほんと、俺なんかに懐いてくれててさ、みんな優しいんだよ」

「なんでそんな悲観的なんだよ」

「いつもの自信すごいある!って感じと違って不思議だねぇ」

 …


 そんなことを言っていたら、今度は俺たちの方にワサビが来た。

「おお、今度は俺らと遊ぶか?」

「俺はいいよ、いつでも遊べるから」

「そっか、まあまだ時間もあるし、庭とか使っていいか?」

 お好きにどうぞー


 外であの子たちと遊んでいる織部の姿は、いつもより少し幼い子供のような、面倒見の良い兄のような感じがする。何というか、いつもより角がなくて優しい感じがする。絶対本人には言わないけど

 日に当たる織部の髪は赤色っぽく見えて、走ったりするたびに髪が揺れると黒色にも見える不思議な色をしているように感じる。

 ほんと見た目も整ってる方なんだから、あれでもう少し静かなら放っておく人はいないと思うんだけども。まあ、あの性格だからこそいろんなやつと仲良くなれてるんだろうし、今の織部を知った後だと静かになられたら逆に怖ぇかもな。


 てか、あの暴れん坊姫と遊び続けられるのすごいな、織部の運動神経が高いって噂は本当だったのか。いや運動神経というか体力か?体力バカ

 俺は見ているだけで疲れるけど、二人(一人と一匹)とも楽しそうだから別にいいかな。


「咲弥」

「何?」

「織部の髪ってさー結構特徴的な色してないか?」

「いや、そうか?別に普通だと思うけど」

「そっか。」

「なんか藍、前もその話してたよねぇ~そんな不思議な色してるかなぁ~?」

「きれいな黒髪だとは思うけど、変な感じだと思ったことはないかな。髪型も普通だし、俺みたいに部分的に染めてるとかでもないし」

 じゃあやっぱり俺の見え方が特殊なのかな。色の見え方は人によって少し違うって言うし

「髪色はわかんないけどぉ、織部ってさぁ眼鏡外したら絶対もっと人気出ると思うんだよねぇ~」

「あーそれは俺も思う。かっこいいとかはよくわかんないけど、そんな俺でも織部は整ってると思う」

 まぁ確かに。眼鏡外してるところは同じクラスの俺もあんまり見たことないけど、なんかあれなんだよな

「眼鏡してるのってさぁ、なんかワザとっぽさあるよねぇ~」

 そうそれなんだよ

「なんて言うかぁ、胡散臭い?」

「それはただの悪口だろ」

 でも言いたいことは分かる。あいつの顔、と言うより表情がなんか詐欺師っぽい胡散臭さがあって、眼鏡と話し方がさらにそれを後押ししてる気がする。あれ、意図的にやってなかったら逆にすごいと思う。


 そんな話をしている傍ら、リビングの中央にあるソファでは、サンゴさんが咲弥にべったりとくっついて甘えている。

「サンゴさんかわいいな」

「咲弥は昔からサンゴさん好きだよなあ」

 サンゴさんも咲弥に懐いてるし。ソファに座る咲弥の膝上に頭を乗せて、その頭を撫でられて気持ちよさそうにしている。

 咲弥は大型犬が好きらしい。とくにサンゴさんはのんびりしていて、その性格が咲弥と合っているのかもしれない。


 そんでなんで芽彩はサンゴさんにくっついてソファに横になって休んでいるんだよ、別にいいけど

 本当に他人の家なのにマイペースだなーこいつら

「せっかくだしゲームしようぜー」

 ワサビと一緒に庭から戻ってきた織部がそう言う。ワサビは外で遊びまわったことで疲れたらしく、中に入ってくるとさっきまでのワサビと同一犬とは思えないほど大人しくなっていた。ワサビがバテかけてるなんて珍しい

「じゃあ藍の部屋に行こうよぉ、あの部屋面白いから好きなんだよね~」

「女子が一人で男子の部屋に入ることに対しての何かはないのか?」

 普通ためらったりするもんじゃないのか?しかも女子一人って

「別にずっと一緒にいて今さらでしょ~それに、女の子は私一人じゃないしねぇ?」

 そう言って芽彩はソファに横になっているサンゴさんに抱き着いていた。

 まあ確かに何か起きるとかはないし、何かあったりなんてしたら姉さんに何されるか分かったもんじゃないから絶対しねぇよ。姉さんに弱みを握られることと芽彩に何かあることは、俺にとって命よりも重いことだからな。冗談でも許されない


 あとサンゴさんもワサビも女の子だけど、それはまた違うような気がする

 芽彩がいいならいいんだけどさ


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