第2話 暗躍
夜が深まる中、サンブレイブ王国貧民街の路地裏では、年老いた浮浪者やどのグループにも属していない孤児、各地をあてもなく放浪するその日暮らし労働者など、無名の者たちが姿を消し始めていた。
ほとんどの者たちは違和感を気にせずに、日々を暮らし続けた。違和感を覚えた者もいたが、その違和感がどこから来るのか、知る者は誰もいなかった。
誰もが無関心で暮らす中、闇に紛れるようにして行動する者たちがいる。
それはレスティアに仕える吸血鬼たちであった。彼らは貧しい者たちを狙い、音もなくその命を奪い去っていくと、自分たちに奉仕する最下級の下僕として、望まぬ永遠の奉仕を強要したのである。
人が寄らぬ場所、町はずれの墓地や下水道、森や山の奥深くには、長い年月をかけて集められたゾンビやスケルトン、獣の如き最下級吸血鬼などの不死の怪物で満ち始めていた。
吸血鬼たちの目標は、サンブレイブ王国全体における兵力の確保だ。
彼らの主である吸血鬼の王レスティアの計画を成就させるため、吸血鬼カルト教団を設立して、秘かに信者を増やしながら、忠実な兵士を生み出していったのである。
「我らが主のために」
吸血鬼たちは闇の中で囁き合いながら、獲物を求めて動き続けた。
レスティアの命令は絶対であり、彼らはその命に従い、サンブレイブ王国に不吉な影を落とし続ける。
サンブレイブ王国はまだその脅威に気づいていなかったが、闇の中で吸血鬼たちの牙は確実に深く突き刺さっている。
吸血鬼たちの活動は、いずれその存在が明らかになる日が来るであろう。
その時、王国は闇に包まれ、レスティアの計画が成就される。
吸血鬼カルトによってサンブレイブ王国がどのように揺さぶられ、レスティアがどのようにしてその計画を進めるか?
暗黒の運命に向かって進んでいく王国の行く末を知る者はまだ誰もいない。
すべてを操る吸血鬼たちの主人以外には……。