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闇の胎動  作者: 雨竜秀樹
血塗られた影
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第3話 残酷な贈り物

 ダークエルフたちがグリムロック砦を去った後、遅すぎる援軍が到着した。

 ドワーフの援軍が到着した時、彼らが目にしたのは、信じがたい光景であった。難攻不落のグリムロック砦は血の海となり、守備隊の者たちは皮を剥がれ、四つ裂きにされていた。

 王家の兵士たちはその光景を前にただ立ち尽くすしかなかったが、砦の生き残りを探そうと一縷の望みにかけて、砦を駆けまわる。残された死体の中には、戦闘だけでなく特に惨たらしい状態で殺された者も多く、これはただの侵略ではなく、何か邪悪な意図が込められたものだと誰もが理解した。


 その中で一人、かろうじて生き延びていた戦士がいた。


 最後まで抵抗したドワーフの部隊長であり、今や拷問により狂気に陥ったドワーフである。

 両目を失い、拷問の痕跡を全身に残す彼の姿は、あまりにも痛ましく、かつての姿を知る仲間たちは何も言わずに涙を流すしかなかった。

 やがて、部隊長はかすかに声を絞り出した。


「エルフたちが……、この血の惨劇を……、奴らがやった……」


 王家の兵士たちはその言葉を聞いて、顔をしかめた。

 彼らはエルフ嫌いであり、エルフもドワーフに友好的とはいえなかったが、これほどまでに残虐な犯行をおこなうとは信じがたい。しかし、その疑問に答える者はもういなかった。生き残った部隊長は、最後の言葉を残して息を引き取った。

 ドワーフたちは急いで首都に戻り、事の次第を報告するとドワーフ王はエルフに対して使者を立てる。

 しかし、エルフの王はドワーフに対して尊大に無関係であること告げたのである。それは真実ではあったが、両者の不信感を高めるには十分であった。


 ドワーフとエルフと同盟を結んでいたが、今回の惨劇はその同盟に亀裂を生じさせる。


 ダークエルフの陰謀は達成されていた。

 彼らの真の目的は、ただの侵略ではなく、二つの古の種族の間に不和を引き起こすことだったのである。

 この事件を機に、ドワーフとエルフの仲は急速に冷え込み、両者の間で戦争が勃発するかもしれないという恐れが広がっていった。


 闇の中でダークエルフを操る者が、更なる一手を指すことで、大陸をさらなる混沌へと導こうとしている。


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