第4話 褒賞
グラトリアがエルビナを下して広大な領土を獲得した後、すでに彼女に逆らえる勢力は存在していなかった。妹であるベリストラの分断工作により、エルビナと同じく大国と数えられていた国々の多くはいくつもの派閥に別れて争うか、同等の勢力と戦い国力を大きく削いでいたからである。
かくして最大勢力となった彼女は新たな土地を恐怖と力によって統治した。
彼女に従わない反乱勢力も出現はしたが、すぐにルクードが率いる剣士団に討伐される。反乱者の多くは鉱山奴隷として、オークやドワーフの管理する山脈に売却された。
一方で、彼女は従う者たちに恩賞を惜しむことはなく、気前よく切り取った領地をわけあたえた。その中でも、幼馴染であり筆頭剣士であるルクードは最も豊かな土地と兵団を預けられることになる。
ルクードは女王からの褒賞を感謝して受け取ったが、領地の管理は部下に任せて、変わらず女王の片腕として傍で仕えた。グラトリアもそれを許して、ルクードを傍に置いたが、妹であるベリストラはルクードの意図を測りかねていた。
「ルクード、あなたは本当に姉様の忠実な犬であり続けるつもりなの?」
ベリストラは、彼と二人きりになったとき、挑発するように問いかけた。
「私の忠誠は揺るがない。グラトリア様は私の命を預けた方だ」
ルクードは冷静に答えたが、その目には一瞬の戸惑いが見えた。
ベリストラはその瞬間を逃さず、彼の心の隙間に入り込もうとさらに策を巡らせた。
「しかし、あなたは考えたことがないの? 姉様の影に隠れて生きることが本当に正しいのか、と」
女帝の妹とも長い付き合いであり、彼女の言葉はルクードの心に微かな波紋を起こした。だが、それでも筆頭剣士は自分の信念を守り続ける。
「グラトリア様のためなら、私の立場はどのようなものでもかまわない」
彼は固く言い放ち、ベリストラとの会話を終えた。
去っていく筆頭剣士の姿を見送りながら、ベリストラは謀略を成功させた褒美に望む物を決める。
翌月、ベリストラとルクードの婚約が発表された。




