外科医、午前二時十五分 5
「……ぅ」
瞼が重い。貼りついたような瞼を気合いで上下に割開くと、うっすらと白い靄がかかったような視界が現れた。ピントの合わないあやふやな世界に、ゆっくりと瞬きする。
「あ、起きた」
なんとなく耳馴染みのある声音が、驚きもなく呟いた。声の方に視線を向けようとすれば、かちゃり、という音とともに、耳元に違和感。そして視界が一気にクリアになった。
「……ぁ……」
「おはようございます。目は覚めました?気分はどうです?」
矢継ぎ早に繰り出される質問は、脳を素通りしていく。視界がはっきりして、まず目に入ったのは、ものすごく昔に見慣れていた景色だ。私が勤めていた病院の病室。
「……え?」
状況を理解できずにぽつりと呟いた。
「わたし、……しんだんじゃ?」
「死にましたよ、向こうで」
声の方に目を向ければ、はるか昔に無駄に関わった男がいた。
「……おおた、き?」
「はい、大瀧瑛士ですよ?久しぶりだね、七海チャン。いえ、師匠?」
「え……」
なぜか病室にいた大瀧が私をそう呼ん瞬間、腹の底からこみあげてくる懐かしさに全てを察した。
「……エ、ディ?」
見慣れた無駄に整った女好きのする顔の後ろに、懐かしい意地っ張りな弟子の面影が見える。
そんな、馬鹿馬鹿しい。
そう思っても、そうとして思えなくて。
「え、……そういうこと?」
「そうですよ」
半信半疑に掠れ声で問いかければ、曖昧な短い言葉からすべてを理解したように、大瀧が笑ってうなずく。
こいつのこの、分かったような顔がずっと苛立たしかったのだけれど、そうか。そういうことか。こいつ、本当に私のことを良く分かっていたってことか。……納得してしまって悔しい。
「どうです気分は?一年寝てたんですよ、声が出にくいでしょ?」
「わかったようなことを……あぁ……経験者は語るってやつね」
「僕は五年寝てたんでね」
起きたばかりの私に遠慮なく話しかけてくる大瀧に、ため息が溢れる。喉がガサガサで声が出にくい。さぞ聞き取りづらいだろうに、当たり前のように会話が成立しているのが嫌になる。この男のことをずっと、本当に話が通じない宇宙人だと思っていたのに。
「いやぁ、やっと会話が通じてうれしいですよ。まぁ、これまでの普通のお嬢さんみたいな師匠も嫌いじゃなかったですけど」
「はぁ……」
いけしゃあしゃあと語る男をじとりと睨んで、わかりやすくため息をついた。
「これまでの私を普通のお嬢さんと表現するアンタもたいがいよ。現代日本ではそうとうぶっ飛んだ女だったと思うけど」
「いや師匠を知ってたらね、七海チャンはめちゃくちゃ可愛い普通の女の子でしたよ」
「……腹立つわね」
嫌味ったらしい言い方に舌打ちをすれば、大瀧は整った顔を顰めっ面に歪めて首を振った。
「ふん、そりゃ嫌味くらい言いたくなりますよぉ?どれだけ待たされたと思ってるんですか」
「ほんの十年でしょ」
「会うまでの月日もカウントしてくださいよ。二、三十年です」
「図々しい嵩増しね」
乾いた笑いが漏れる。目が覚めてすぐなのに、こんなに飄々とされていると調子が狂う。
ベッドに寝ている今の詳細について聞きたいのに、こいつの話が終わるまで聞き出すことは無理そうだ。
私は半眼で横に座って滔々と語る男を見上げた。
「せっかくアンタの生きてる時代にジャストで生まれ変わったのに、師匠ったら全然記憶ないじゃん!と思ってたら、アナタ、これからだったんですねぇ」
ウンウンと一人で納得したように頷きながら、大瀧は遠慮なくサンドイッチを食べ始める。見ているだけで腹が減る。まぁ一年も寝ていたなら、私は白湯からだろう。固形物が食べられるのはいつになるやら。
「譫言の内容から、そろそろ死ぬかなぁ〜と思って待ってたんですけど、ベストタイミングでした」
「嫌な言い方ねぇ」
とんでもない台詞に、思わず苦情とともに眉を顰める。
そんな、向こうの私が死ぬのを待っていた、みたいな……いや、まぁ、そうしなければ私は起きなかったのかもしれないけれど。
相変わらず歯に衣を着せられないやつだ。
「で、どうでした?僕らの人生」
「はぁああああ……」
サンドイッチをペロリと平らげた大瀧が、にこっと楽しげに首を傾げる。あまりに能天気な様子に、私は脱力した。なんだその軽さは。思い切りため息をつきたいのに、筋力が落ちすぎて、細い息しか出てこない。肺の中のモヤモヤを全て吐き出してから、私は寝たままで弱々しく肩をすくめた。
「そうねぇ、まぁ、短い一生だったわ……」
「ふはっ」
一言で終わらせた感想に、大瀧はひどく楽しそうな様子で吹き出した。
「あの人生を、短いというのは師匠くらいですよ」
「太く短くというには長いけどね。終わってみればあっという間よ。物足りないくらい」
「それはよかった」
私の強気な発言に、大瀧はさも嬉しそうに破顔した。
「さすが師匠ですね!疲れたから医者なんか辞めるって言うかと思ってました。まあそれでも良いと思ってましたけど」
「良いわけないでしょ、どうやって暮らしていくのよ」
「僕、養いますよ?」
減らず口を叩けば、当たり前のように返された台詞に私は不快も露わに唇を歪めた。
「は?誰に物言ってんのよ」
「もちろん我が最愛の師匠に」
「馬鹿じゃないの。年下の弟子に養われるほど落ちぶれちゃいないわ」
「素直じゃないなぁ、もう」
しごとやめたい!と叫んでいた過去など忘れたふりで、私は強気に片頬に笑みを刻んだ。一年寝たきりだったから、体はちっとも動かないようだけれど、気合いは十分だ。
「絶対イヤよ、もったいない!せっかく医療レベルが高い時代に若返ったのに!」
「若返った?」
「気分的に若返ってるの!あっちの世界で悔しい思いをした分、こっちでは救いまくってやる!」
「かっこいい〜!」
大瀧は椅子の上で笑い転げながら、パチパチと手を叩いた。
「こっちは魔法はないけど科学があるんだからね!切った貼ったしか出来なかった私だけど、こっちなら他の専門科に頼れるし!百人力よ!」
「あははは!起きた瞬間から元気すぎ」
掠れ声でも力いっぱい宣言すれば、大瀧は声をあげて笑いながら肩をすくめた。
「七海チャンと師匠が完全に融合してて安心しました。別人になってたらどうしようかと」
「そりゃ私はずっと私だから」
あっさり断言して、私はにやっと笑う。別人になったわけじゃない。ただ、寝てる間にちょっと経験値を伸ばしただけだ。……まぁ、我ながら順応力が高いとは思うけれど。
そう心のうちで独りごちていると、大瀧が小さく笑った。顔を向ければ、柔らかい目が私を見つめている。
「僕ねぇ、やっと本当に納得したんですよ。たしかに師匠はただ強がっていただけの女だったんだなぁって」
「え?」
思いがけない言葉に、私は枕の上で少しだけ首を傾げる。大瀧はまるで保護者のように優しい笑みを浮かべて、私の前髪をそっと梳いた。
「たしかに搭載されてるスペックは相当に増量されてたみたいですけど、根っこは七海チャンと同じなんですもんねぇ。そりや……意地と見栄を張り続けてナンボですよね」
「……やっぱ嫌なやつね、アンタ」
大学からの付き合いとは言え、大瀧は私の弱さを十分に知ってしまっている。だからこその台詞だろう。腹が立つけれど否定はできず、恨めしそうに見上げた。
「なに?完璧超人どころか、ポンコツ不器用女で見損なった?」
「いや、逆ですよ、逆」
「は?」
嫌味に尋ねれば、あっさり否定される。きょとんと見上げた私に、大瀧はキザな笑みを浮かべて、私の手を取った。
「根っこは普通の女の子だったんだなって意味。可愛いーってことですよ」
「へ?んわっ!?」
ちゅ、とか軽快な音とともに指先にキスをされて、思わずぞわっとした。
「は?きも」
「きも!?……いやまって、避けないで!?」
力の入らない手をズルズルと布団の中に引き込む。そして指先を布団で拭った。
「あの、一言で切って捨てるのやめてもらえます?せめて頬くらい染めといてもらえます?前世越しの告白なんですからね?」
「キモイ」
「真顔で一言はやめて?傷つくから」
淡々と拒絶の意思を表明する私に、大瀧は大きなため息とともに顔を覆った。
「まぁ師匠が、そんな簡単にキュンとときめいてくれるわけないですよね……七海チャン時代ですらダメだったのに……」
「それはいつやってもキモイと思うわよ?」
指先にチューて何よ本当に。
真顔でダメ出しをすれば、大瀧は首と肩をがくりと落として消沈と反省を表した。
「待ち望んだ再会なんですから、かっこつけさせてくださいよ……」
「いや、そもそもかっこよくないって言ってんのよ」
「身もふたもない」
ぽんぽんと交わされる会話が妙に体に馴染む。悔しいけれど、さすが師弟として何十年も腐れ縁をしていただけはある。大学時代は周りから「気が合ってるよね」と言われるたびに否定してきたのに。
「あ!忘れてた」
うんざりと過去を振り返っていたら、大瀧が唐突に叫んだ。顔を見るだけで、碌でもないことを思い出したのだろうことは予想できたが、私は一応聞いてやった。
「何を?」
「思い出したんなら、プロポーズ、そろそろ受けてくれますよね!」
「はぁ?」
案の定キラキラした笑顔でとんでもないことを言い出したので私は満面の作り笑顔で言い放った。
「嫌に決まってんでしょ!」
「えええっ」
目を見開いて愕然とする大瀧に、私は呆れる。この流れで、なんで行けると思ったのかと。
「これまで何百回と断られてきて、とうとう承諾だと思ったのに!」
「いや、そんな急展開あるわけないでしょ」
当たり前である。少なくとも現代の私と大瀧は、ただの大学の同級生でしかないわけだから。
「んー、そうねぇ」
ベッドに無言で突っ伏して、思いの外真剣に打ちひしがれている大瀧を横目に見ながら、私は呟いた。
「とりあえず恋人……いえ、友人からなら許可するわ」
「ゆうじん!?これまでもそうでしょ!?」
私の真っ当な提案に、大瀧は顔を青くして飛び起きる。しかし責められても困る。
「これまでアンタを友人と思ったことはないわ。なにせ、これまでは頭の変な男に付き纏われてるって認識だったから」
「ええええぇっ」
なにしろ、何も知らない私からしたら、大瀧は純粋に、相当奇妙な男だったのだ。本人は私に思い出させようと言う無駄な努力をしていたのだから、哀れなものであるが。
「ねぇ、エディ……いえ、大瀧」
本気でショックを受けているらしい大瀧に、私はニッコリ笑いかけた。
「とりあえずお友達から楽しみましょ?」
「はぁー、リハビリだるいわぁ」
目が覚めてから一ヶ月後。
体を起こせるようになった私は、ついにヨロヨロと歩く訓練が始まった。体を立たせるだけでも相当疲れ、リハビリ後はいつもベッドに大の字になっている。幸いにも事故の後遺症はほぼなく完治しており、後は私が筋力回復に努めれば良いだけと言うのが最大の救いだ。
「仕方ないでしょ。丸一年寝てたから、全身ヘニャヘニャですよ?地道にトレーニングしてください」
「はいはい、分かってるわよ。うるさいわねぇ」
手術終わりに昼食持参で私の病室にやってきた大瀧は、勝手に私の机で食事をしながら私を嗜めた。生まれ変わっても小言がうるさいやつである。
「でもまぁ、七海チャン時代より、なんか忍耐強いですよねぇ」
大学時代の短気は損気を地でいっていた私を思い返したのか、大瀧はくすくすと笑った。
「全部イヤだ!なんでこんな目に!て放り出すかと思ったのに」
「ルイーゼとして荒波に揉まれたからね。生きてるだけ儲けもんよ。向こうじゃ、真面目に生きてても戦争で殺されてる人たちを見てきたわけだし」
「まぁそりゃそうなんですけど……」
あっさり流した私に、大瀧は胡乱げな目で見つめると、半笑いで首を傾げた。
「いやぁ、……なんなら師匠より我慢強い気すらしますけど?」
「んー、まぁ……なんか、人間としてのレベルが一個上がった気はするわ」
差し入れのリンゴジュースを横になったままちびちびと飲みながら、私はケロッとした顔で肩をすくめた。
「私、七海瑠花としての幼少期があんまり恵まれてなかったから、ちょっとやさぐれてたんだけどね。今はルイーゼとして、たっぷり愛された記憶があるおかげで、ちょっと人間的に丸くなった気がするのよ。いやぁ、満たされる経験って大事よね」
「……はあぁあああ」
飄々と続けた私の言葉に感嘆するように呟いて、大瀧は降参するように両手を上げた。
「あの師匠の激動の人生から得たポイント、そこなんだ。すごい、あなたって面白い人ですよねぇ、ホント」
「そうかしら?」
ルイーゼの記憶のおかげで多少綺麗になった言葉遣いで、私はにこっと大瀧に笑ってやった。
「お褒めにあずかり光栄だわ」
ルイーゼの面影を宿した話し方に、大瀧は妙に照れていた。本当に私のことが好きで追いかけてきたんだなぁと思うと、ちょっとばかり感慨深いものがあった。
「なぁ七海」
「はい」
「言いにくいんだけどさぁ」
目覚めてから一年半、無事に手術室に復帰してから二週間ほど経った今。
本日のオペもつつがなく閉創に差し掛かったところで、部長はたいそう複雑そうな顔で私を見て眉を寄せた。
「なんかお前、植物状態から覚めたら、やけに腕が上がってない?そんなことある?」
「え?お褒めにあずかり光栄でーす!きゃぴっ」
きゃぴ、と口で効果音を出しながら軽快に皮膚を縫う。部長は胡散臭いものを見るように私を見ていた。
まぁ、普通はないだろうが……。
「そりゃあやっぱり、人徳ってやつです」
「はぁ?」
ルイーゼとしての経験と記憶が体に染み込んだだけなのだけれども、そんな話をするわけにもいかない。私はにこっと満面の笑みを浮かべて、飄々と言い切った。
「咄嗟に人助けしちゃうような人間性の美しさを神様が見てたんじゃないですかね!」
「……微妙に否定しづらいノリやめて」
嫌そうに顔を顰めて、部長ははぁと大きくため息をつく。
「お前、この一年寝てたはずなのに、謎に大瀧よりオペうまくなってんじゃん」
「寝て起きたらアップデートされたぽいです」
「そんなスマホみたいな」
適当なことを言って笑って誤魔化す私に、部長は二度目の大きなため息をついた。
「まぁいいや。大瀧と七海、腕が良くて頼れる若手が増えたのは俺たち年寄りの負担軽減を考えたら大助かりだよ。せっせと働いてくれ。……っし、縫合終わり」
「はーい、ありがとうございました!」
我ながら美しい縫い跡を見て、私はニッコリ笑う。
「今日もご指導ありがとうございました!」
「ほぉい、まぁ今日は大したことやってねぇけどな」
ガウンと手袋を外した部長は、ひらひらと片手を振って片眉をあげたあとで、目をすがめた。
「お前も、本当に手がかからなくなったよなぁ。大瀧は最初からそんなに手がかかんねぇし、つまんねぇな」
「教えたがりのオッサンは嫌われますよ」
「言ってろ」
患者が目覚めるまでの間、私と部長はいつも通り雑談を交わす。こんな日常に帰ってこられたことのありがたみをしみじみと感じていると。
「お前はさっさと大瀧とくっつけ」
「え、なんですか急に」
唐突に投げられた余計なお世話が私を直撃した。
「可哀想だろぉ?お前が起きるのずっと待ってたんだぞぉ、アイツ」
私が寝ていた間、大瀧は毎日仕事を始める前と終わった後に私の顔を見にきていたらしい。
「泣ける話だろう?」と言われても、寝顔を見られていた側としては微妙な気持ちである。
それに大瀧も、私がルイーゼとして生きていることを確信してから、そんなに焦ってはいなかったようだし、そこまでありがたがる気にもなれない。
「嫌ですよ」
「なんでだよ」
「大瀧とは、最近やっと、ちゃんと友達になれたくらいなんで」
「はぁ?」
この一年半で暇さえあれば居酒屋に繰り出す飲み友達くらいにはなったが、恋人になるのはまだ早い。もう少し気楽な飲み友期間を楽しまねば。
「ちゃんと段階を踏まないとねぇ」
「え?飲み友の次は、清く正しいお付き合いから始める気かよ」
「もちろん」
私はこれまで経験し損ねたことは全部総取りで拾い上げて行くつもりなのである。来世なんてどうなるかわからないからね、今を楽しまなければ。
「かぁーっ!こんな女に入れ込んじまって、大瀧ってば不憫なやつだなぁ」
「何でですか!……あ、患者さん起きましたね」
私はパタパタと薄く目を開けた患者の枕元に駆け寄り、マスク越しでもわかる満面の笑みを見せた。
「お疲れ様です。手術は無事に終わりましたよ。お部屋に戻りましょうね!」
安心したように目尻を緩ませて、患者が再び目を閉じたのを確認して、患者の乗ったベッドを送り出す。ひと段落してから、カルテを弄っている部長のもとへ戻った。
「ねぇ部長」
「ん?」
こちらを見ずにカルテに何やら書き込んでいる部長に、悪戯っぽい声で問いかけた。
「大瀧のことをやたら可哀想がってますけど、あんな変な野郎に惚れ込まれちゃってる私も、わりと大変だなとかは思わないんですか?」
「けっ」
部長は嫌そうに顔を歪めると、カターンと派手な音を立ててエンターキーを押して、カルテを保存した。そして振り向くと、ニヤついている私に向かって顰めっ面で吐き捨てた。
「惚気は他所でやれ」
「あははっ」
悪ガキのようなブーイングをしながら更衣室に去っていった部長を見送り、私も更衣室へと向かう。
部長とのこんなやりとりも一年半ぶり、いや、体感的には約八十年ぶりだ。
「たーのしいなぁ」
くすくすと笑いながら、廊下へ出た私は目を細めて掃除の足りない窓を見る。曇ったガラスの向こうには、中学校の運動会が見えた。耳をすませば、応援合戦の声も聞こえてきた。
「おー、やってるやってる。元気いっぱい、若いなぁ」
医局に戻れば同僚たちとこの話題でまた盛り上がれることだろう。外科医ってのは、やけにスポーツが好きなのだ。
「ふふ、また皆でテニスでも行くのもいいなぁ」
周りの人たちと気軽にじゃれ合える日々の平穏の得難さを知っているからこそ、私は心から思うのだ。
「なんて素晴らしい日常!」
私はおどけた顔をしつつも、しみじみとどこにいるのか分からない神様に感謝を捧げた。
どんなつもりかは知らないけれど、今私はとても良い毎日を暮らしているのだ。
そんなわけで、神様というやつに感謝してみる気になったのである。
窓に近づいて目線を上げれば、夏の太陽が眩しく輝いていた。
「ふふ、なべて世はこともなし、てやつね」
今日も幸せな一日である。
思いついたシーンを書いていて「これ前世かなぁ来世かなぁ…前世ぽいけどなんか『居る』んだよなぁ…」とか思っていたら、こうなりました。
勢いで再開した番外編ですが、これにてひとまず完結です。
お付き合い頂きありがとうございました。




