9話。豚野郎危うし!!
そろそろ話が進む……かも
おう。俺だ。ベシータ様だ。
三匹の豚野郎をぶったおした後にチマチマと場所を移しつつ、俺より弱い豚野郎どもを狙い撃ちし続けたこの俺様のステータスを見るがいい。
「さぁ、この俺様のステータスを見せてみろ」
―――
名前 リョウ
レベル 7
BP 1510
―――
くくく、どうだ。わかるか?
「そうだ。とうとう俺様のBPが弱虫大根野郎を超えたんだ!」
尤も、あの野郎の場合作品によって1200-1600と幅が有るから一概に超えたとは言えねぇかもしれんが、少なくとも基本単位とされる1大根は1500だからな。その分はしっかりと超えてやったぜ!
「しかし……レベルでプラスされるよりも豚野郎どもを倒したときに得られるBPの方が効率がいいとは思ってなかったぜ。レベルが上がれば変化するかも? なんて思っていたが、豚野郎を瞬殺できるレベルになっても得られるBPが10%のまま変わらなかったのは大きな発見だ」
まぁ、これももしかしたら10レベル単位で規制がかかるかもしれねぇが、その時はその時だ。今はこのまま強くなれることを喜ぼう。
なんたって豚野郎どものBPは平均で100だからな。100匹倒せばプラス1000だ。もうレベルよりも討伐数のほうをチェックしたくなってきたくらいだぜ。
他にもいくつか発見はある。
まずこの森についてだ。
確かにこの森には大量の豚野郎どもがいる。だがそれだけじゃなかった。
熊や狼。鹿もいたな。あとは鳥とか昆虫。あぁ、水場には魚もいやがったな。
考えてみれば当たり前の話だ。豚野郎が何かを食っているのは知っていたからな。ならば食料になるナニカがあるのは当然の話。むしろそういった連中がいなければいくらダンジョンとは言っても豚野郎どもが数十万もの数を保てるわけがねぇからな。
そのことに気付かなかったのは、偏に俺がスカウターに頼り切っていたからだ。
基本的にスカウターってのは高性能な機械だ。それこそ1単位(5のオッサン)どころか0・001(ウミガメ)の単位で見ることができるくらいにな。
原作でもナメッグ星全体をサーチしてピンポイントで集落を見つける、なんて真似をしていたから俺も使っていたんだが、この機能には落とし穴があった。
それが『基本は人型をサーチするように設定されていること』だ。
これまた当たり前の話なんだが……星全体から一つの集落を見つけようとしている場合、BPが1しかねぇ動物の群れだとか、BPが10ある大きな魚の大群なんか見つけても意味がねぇだろう?
だからこそスカウターって機械は広域探索をする場合、特に何かしらの条件付けを加えない限りは人型だけを映すようになっていやがるんだ。
もちろんその星その星で住人の姿形は違うから後で設定を変更することはできるが、基本は人型を映すよう設定されているってわけだ。
「まったく。この俺様がこんなことにも気付かなかったとはな。ちぃとばかし浮かれていたらしい」
最初からこのことに気付いていれば絶望に沈むこともなかったし、BP90の豚野郎を最初に獲物にするような賭けをしなくてもすんだってのにな。
「まぁいい」
それもこれも過ぎたことだ。今更言ってもしょうがねぇ。反省して次回以降同じことをしねぇように気を付ければいいんだ。
で、反省できる俺様としては、もう少しレベルを上げたら村を強襲するつもりだ。
具体的には2大根、つまり3000くらいだな。
それくらいあれば豚野郎の500~600匹くらいは何とかなると思うんだ。
勿論BP5000以上の野郎が居る集落は狙わねぇ。
狙うのはあくまで2000前後の野郎が治めているっぽい集落だ。
これを落とすことができれば俺のBPは最低でも5000から6000は上昇するからな。
問題は俺様が狩り続けたことで豚野郎どもが警戒してしまい、集落の外に出てこなくなったり、BP2000を超えるような連中が出てきたりした場合だな。
「後者の場合はまだいい。強いやつがいなくなったところを襲えば良いだけだからな」
フルーザがいなくなったところで暴れるのと一緒だ。集落を襲ってレベルアップして、集落の異変に気付いた強い豚野郎が帰ってきたら、接敵する前に逃げるだけだ。スカウターがある俺様には不可能ではない。
前者の場合は……そうなったらまずいが、恐らく大丈夫だ。
なにせこの森にいる豚野郎の数は数十万だからな。集落から出るヤツが居なくなるなんてことは早々ねぇはずだ。
「それにいざとなったら熊とか狩ればいいだけの話だしな」
熊のBPは平均で50だが、強いのは70くらいあるからな。レベルアップは見込めなくとも一匹で5~7プラスになるのであれば、300匹倒せば1500~2100のプラスだ。
数だけ狙うのであれば狼も悪くない。
連中はだいたい20前後だが、数が多いからな。一つの群れで大体50匹くらいいるから、一匹でプラス2だとしても、群れでみればプラス100を見込める。群れの数も多いから獲物には困らんってわけだ。
「尤も、熊の肉や狼の肉が旨いとは思えねぇし、なにより豚野郎の方が一匹当たりの効率がいいからな。どうせならそっちでBPを稼ぎたいところだぜ」
日本人として狼を倒すのは気が引けるってのも否定はしねぇがな。
いや、だって絶滅種だぞ。絶滅種。絶滅危惧種じゃないんだぞ。『それはニホンオオカミの話じゃないのか?』とか『種族が違う』と言われればその通りなんだが、どうしても、な。
んんっ! 俺様の気分はどうでもいい。兎にも角にも今の俺様には力が必要だ。力がなければ死んじまうからな。
ただ、最近よく考えていることがある。それは基本というか、もっと根本的なことだ。
「あの白い部屋の野郎。奴はこの俺様にここで何をさせようとしていたんだ?」
まさか俺様が『ためはめ波』を使うところを見たかったわけではあるまいし、まして今みたいにコソコソと豚野郎を倒しているのが野郎の望みに適っているのか? と問われれば、当の本人である俺だって『それはねぇだろ』と即答できるくらいにはありえねぇ話だ。
異世界あるあるだと、魔王的な存在の討伐とか、逆に勇者的存在の討伐をしてってのがあるが、どうも違う感じがする。
あとは『システムの都合上転移してくれるだけで良い』ってパターンもあるが、それならそれで一言くらいはくれると思うんだよな。
いや、確認しなかったから言わなかったって言われたらそれまでなんだが。
とにかく、後者のパターンなら好き勝手やるだけだからどうでも良いんだが、もし何かしらの制限とか有る場合はどうなるんだ?
いきなり『君は一線を越えたので殺します』とか言われて存在ごと消されるのはごめんだぞ。
「ちっ。本来真っ先に確認すべきことをしなかったのは痛いな」
くそったれめ。ステータス同様に不親切な野郎だぜ。
……まぁ徹頭徹尾番組の企画だと思って何も確認しなかった俺が悪いんだが、何かしらの指針は示して欲しかったって思うくらいはいいだろう?
「結局のところはいくら考えても真相は闇の中。それなら気付かないフリして果てしない暗闇から飛び出すのも一興、か」
今はDB芸人らしく、愛と勇気と誇りをもって戦う。それだけに集中しよう。
「よし! さしあたっては都合の良い豚野郎の集落でも探すとするか」
せいぜい油断しているがいい。貴様らが気を抜いているうちにたんまりと稼がせてもらうぞ!
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