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5話。豚野郎対決アール

再告知:あとがきが気に入らない方がいらっしゃいましたら削除も検討いたしますのでご一報お願いします。

(削除するとは言っていない)

おう。俺だ。ベシータ様だ。


あ…ありのまま今、起こったことを話すぜ!


「俺が気の訓練をしていたら目の前に豚野郎が現れた」


何を言っているのかわからねぇと思うが、俺も何がおきたかわからなかった。


相手が豚野郎とはいえ、あの掛け声を聞かれ、踏ん張りポーズを見られていたかと思うと頭がどうにかなりそうだった。


催眠術だとかわすれろ草だとかで記憶を消し去ってやりてぇくらいの絶望を味わったぜ。


と、絶望するのはここまでだ。


「ブモォォォォ!」


呆然としている俺を見て『隙だらけ』と判断しやがったのか、豚野郎が襲い掛かってきやがった。


「(なんでこいつがここにいるのか)よくわからねぇが、好都合だ! かかってきやがれ豚野郎!」


罠も張ってねぇし、気についても検証は終わっていない。だがいつかは正面から戦わなけりゃ駄目だったんだ! それが今になっただけの話じゃねぇか。


この世界で生きていく覚悟を決めるって意味もある。それに何より……


「なにもしてねぇやつを罠に嵌めて殺すよりも正当防衛の方がやりやすいからなぁ!」


いくら修羅の国と言われる北九州は福岡で生まれ育ち、最近は栃木でジビエを堪能しているとはいっても直接命の奪い合いをする機会なんてほとんどなかったからな。吹っ切るきっかけとしては十分だぜ!


「ブモッ!」


上背を活かし、上段から振り下ろされる棍棒。確かに威力はありそうだ。だがなぁ。


「デカブツめ、そんなテレホン棍棒が当たるか!」


「モッ!?」


FG〇じゃねぇんだ! 見えている攻撃なら回避するに決まっているだろうが!


「お返しだ、くらえぃ!」


「ブ、ブモッ!」


避けられることを想定していなかったのだろう。無様に態勢を崩したところを狙って蹴りを入れれば、あっさりと入る。やれやれ、こっちのガタイが小さいからといって油断していやがったな?


大きいは強い。特に自然界ではそれが顕著なのは事実だが、BPがある世界ではその限りではない!


戦闘員でしかない菜っ葉よりも王子である俺様が強いのは当たり前だし、帝王を名乗っていたフルーザだって、不気味な格好をした第三形態よりもこじんまりとした最終形態の方が圧倒的に強かったってのはもはや常識だ。 大王? 第二形態っぽい恰好のまま調子こいて死んだ阿呆なんざ知らんな。


とにかく、だ。ガタイの大きさが戦力の決定的な差につながらないということを教えてやるぜ!


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「ブモ! ブモ! ブモモ!!」


殴る、殴る、蹴る、殴る、蹴る!


「ふはははははは。一方的ではないか!」


BPはたった10しか違わねぇが、俺とこの豚野郎の間には大きな違いがある。それが技術だ!


ザイヤ人の体と戦闘の才能のお陰だろう。元々短距離走で『巨乳走りしている』なんて言われる程度には運動が得意ではなかった俺だが、ここに来てかなり体がキレているのがわかる。


それだけじゃねぇ。今まで俺が蓄えてきたサブカル知識が体に馴染んできたおかげで、DB以外の技だって思いのままだ。例えば体が液体になるかのように脱力をして……。


「ブモ?」


はっ。急に攻撃が止んだことが不思議そうだな。だがそんな無抵抗でいいのか? この技はどんなに鍛えた奴だって泣いて痛がっちまうほどの激痛を齎す技だぞ!


「くらえ! 鞭打っ!」


「ブ、ブモォォォォォ!」


痛いだろう? この技は皮膚を、もっと言えば触覚神経を直接攻撃する技だからな! 


「隙だらけだ。続けていくぞ!」


鞭打が水を意識して叩くのに対し、この技はインパクトの瞬間に全身の関節を固定して放つ技だ。


「剛・体・術!」


「ブ、ブフォッ!」 


生半可な攻撃なら弾けるであろう分厚い筋肉と脂肪に守られているどてっぱらに拳を突き入れれば、拳は弾かれるどころかズムッと音を立てて腹の中にめり込んでいく。


「ブ、ブモ……」


「たった二発でもう死にかけだな。さっきまでの余裕はどうした?」


まぁこいつがこうなるのは当然と言えば当然だがな。


なにせこの剛体術って技は全体重を拳に乗せる技だ。俺の体重がおよそ70キロだから、この豚野郎からすれば高速で飛んできた70キロの鉄球が高速で腹にめり込んだようなものだ。確実に内臓は痛めたはずだ。


さぞかし痛いことだろうよ。


「このままいろんな実験に使ってもいいが、ここは敵地だ。俺様は死にかけの獲物を前にして舌なめずりするような三下じゃねぇぞ」


多少は勿体ないと思うが、それでも失敗フラグの存在を知っていながら踏むほど余裕があるわけじゃねぇからな。援軍が来る前に終わらせるぜ。


「豚野郎。死ぬ前に教えてやる。俺の名はR藤木! RJとRVを使い分けるお笑い戦闘民族の王子、R藤木だ!」


締めはこの豚野郎が来る前につかみかけていたアレを使わせてもらう! 


「たぁ」


両足を広げて腰を下ろし、両手を腰の横に固定する。


「めぇ」


全身の力を丹田に、そして丹田から両手に集める。


「はぁ」


三秒吸って7秒吐く。


「めぇ」


集めた力を押し出すイメージを固め、そして放つ! 喰らえ! 


「波ぁぁぁぁぁぁ!」


「ブ、ブモォォォォォォォ!」


「これが、世界中の男子が思い描いた最強の技にして、俺様のライバルが使う必殺技だぁぁぁ!」


俺の手から放たれた光が、鞭打と剛体術によって与えられた痛みに悶えていた豚野郎を包んでいく。


「くたばりやがれぇぇぇぇぇ!」


「ォォォォォォォォ……」


「くっ。ここまでだな」


光を放つこと数秒。疲労を感じた俺は構えを解いて豚野郎がいた場所を確認する。もちろん「やったか?」なんて言わない。


万が一反撃してきても対処できるように構えを取りつつ視線を向ければ、その先には……。


「ブ、ブモ、モ……」


息も絶え絶え、まさしく死にかけとしか言えないような状態になった豚野郎の姿があった。瀕死ではあるが死んではいない。


「ちっ。あれだけでは消し飛ばせなかったか」


確か原作に於ける仙人のBPは139だったはず。それを考えれば100しかない俺でもそれなりの結果が出せると思っていたんだが……そうか。


「あの時の仙人は完全にオフだったからな。連中は戦闘力をコントロールすることに長けている。つまり本気であの技を放つときの仙人の戦闘力は、通常時よりもかなり跳ね上がっていると考えるべきだ」


対して俺のBPは100。複合的な要素があるのだろうが基本的にこれが上限で、戦闘中に上昇はしないと思われる。


「ちっ色々とわかったが、まだまだ検証が必要だな」


まぁ諸々の検証は後にするとして。


「はっ。豚野郎にしては楽しめたぜ」


死ぬ行く敵を嬲る趣味はねぇし、援軍が来て回復されても面倒だ。そう思った俺は豚野郎に止めを刺そうと思ったんだが……。


「はぁ?」


――そのとき、不思議なことがおこった――


思わずナレーションを入れちまうくらいには不思議なことがおこった。何があったかというと、ピクピクと痙攣していた豚野郎が完全に動きを止めたと思ったら、光って消えやがったのだ。


「……どうなっていやがる?」


と言いつつ、何となくは理解しているがな。


「魔法か何かで逃げられた可能性もあるが、おそらく違う」


あの状態で魔法をつかえたとは思わないし、何らかのアイテムを使うにしてもあの状態になる前に使っていたはずだ。で、あれば残る可能性は一つ。


「ここは、ダンジョンだ」


ダンジョンで倒された魔物は、死体を残さずに魔石とかドロップアイテムを残して消える。そういうパターンの世界と考えれば、さっきの現象にも説明が付く。


この世界観を踏襲した場合、ダンジョンで死んだ魔物が消える理由として『ダンジョンが資源を有効活用するため』というそれなりな理由がある場合と、単純に作画の都合って場合があるが、今回に関しては作画は関係ないので前者でだと思っていいだろう。


「ダンジョン、か」


自分で言ってて『異世界にきたんだなぁ』と痛感するぜ。


ちなみにダンジョンってのは元々地下牢を指す言葉なはずだが、最近は平原型のダンジョンも当たり前にあるからな。この森がダンジョンだとしても驚きはしねぇぜ。というか、豚野郎しかいねぇこの森がダンジョンじゃなかったらそれはそれで怖い。


「とりあえず色々わかった。知らねぇことが多すぎるってこともな」


無知の知ってやつだ。焦ることはない。徐々に知っていけばいいさ。


「で、問題はドロップアイテムがあるかどうか、だよな」


確定で魔石っぽいのを落とすのか、それとも何も落とさないのか。何も落とさない場合は肉を得る手段がなくなっちまうから、低確率でもいいからドロップして欲しいところだぜ。


「リアルラックには自信がねぇんだが……お!」


一抹の心配を抱きつつ豚野郎が消えたあたりに目をやれば、豚野郎が着ていた布っぽいものの上に、なにやら大きめの塊と石っぽいものがあった。近づいてみれば塊は肉だとわかる。


「やったぜ!」


初戦闘の収穫としては肉、布、魔石、棍棒ってところか。


肉が確定で出るかどうかはわからねぇが、少なくとも『豚野郎を倒せば肉が出る』ことはわかった。ならばあとは豚野郎を狩りつつ経験を積んでレベルアップするだけだ。


「安心したら腹が減ったな」


よくよく考えてみれば、白い部屋で目覚めてから今まで何も食ってねぇ。


覚えている限りだと、最後に何かを腹に入れたのは酒と少量のつまみだけだ。そりゃ腹も減るわ。


「よし、食うか。火は……面倒だし、いらんな。ナマでいくぜ」


元々生で食うつもりだったしな。ちなみに胃腸が貧弱な地球人が豚の生肉なんて食ったら大変なことになるから絶対に真似するなよ。


「では実食……う、こ、これはっ!」


多少行儀は悪いが誰が見ているわけでもなし。生肉にガブリと音が出るくらいの勢いでかじりついてみれば……なんということでしょう!


「嚙まなくても口の中で溶けていく。間違いねぇ! これは高級肉の味だ!」


ロケでしか食えないA5クラス、それも一流の料理人が調理したときのそれに匹敵するぞ! 調理もしないでここまでの味を出すとは……。豚野郎め、BP90のくせになんて肉質をしていやがる!


「びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛」


空腹であったのも影響していたのだろう。俺は豚野郎が遺した肉の旨さに驚き、気が付いたときにはキャラを保つことすら忘れてキロ単位あったはずの肉を綺麗に完食していたのであった。

簡単な用語解説


わすれろ草――未来から来たと嘯く青い狸型ロボットが持っていた秘密道具という名の違法薬物。記憶を失ったり植えつけたりすることができる草だ。こんなのが当たり前にある社会は怖すぎるぞ。


栃木――北関東に位置している群馬のライバル。たくさんのDB芸人が闊歩しているのを見ることができる。時折空からフルーザが降ってきたり、運動会とかしているぞ。


FG〇――ソシャゲー。回避の概念がない世界。


鞭打――地上最強の生物曰く、女子供の護身術。普通の女子供にできる技か、これが?


剛体術――速度×重さ×握力(密度)=破壊力 という物理現象が働いている世界に於いて、3つの要素を兼ね備えた理想的な技だ。緊張と弛緩の落差があればなお攻撃力は増すかもしれんな。


RJ――リアル・ジャルおじさんの略。なおジャルおじさんと磯◯家の婿養子と某仙人にはある共通点が……


RV――リアル・ベシータの略。リアルも何も、俺がベシータだ。


必殺技――序盤でさえ月を破壊するほどの攻撃力をもった必殺技だ。当時月にいたはずの兎どもがどうなったかは知らん。


不思議なことがおこった――死亡フラグ。今回は豚野郎が死んだな。


びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛――旨いものを旨いと言って何が悪い。


―――



閲覧ありがとうございました。






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― 新着の感想 ―
[良い点] オークの少年の視点を描いた後にそのドロップ肉を賞味するとはエッグいです。 だがそこが素晴らしい。
[良い点] あとがきは、楽しく拝読しております。
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