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7話。令嬢の進路?

おまけが本編? 気のせいですね。

セレス視点


結果だけ言えば叔父様との会談はあっさりと終わったわ。


まず私が継ぐ予定だった本家を叔父様が正式に継ぐ。そして私は叔父様が当主を勤めていた分家の当主となる。それだけね。


ちなみに爵位は子爵。ただし所領は今まで叔父様が治めていた都市ではなく、オークの森に面したところにある人口数百人の村が二つと、二千人くらいの街が一つだけ。これは叔父様の要望ではなく私からの要望。


提案を受けた叔父様は終始『正気か?』みたいな顔をしていたから、一応私を心配する気持ちは持っていたみたい。


もともと叔父様が私を排除しようとしたのは恨みとか個人の欲ではなくてブルマリア侯爵家のためだしね。


当時の私がもっとお父様の手伝いをしたり、叔父様の手伝いをしたりしてブルマリア侯爵家を支える姿勢を見せていたら初めからこんなことにはなっていなかったんだし。


えぇ。その点については申し訳ないと思っているわ。


だからと言って殺そうとしたことを許すわけじゃないけどね。特に私を心配するふりして裏切っていた連中なんて許す気はないわよ。えぇ絶対に。


そういった連中に対する復讐については後でサキと一緒に色々とやるとして。問題は王家とリーフブライト侯爵家よね。私が何を言おうと『無理やり言わされている』とか言って兵を出してくる可能性があるんでしょ? 


謀略は貴族の嗜みみたいなものだから、それに対して怒ったからと言ってわざわざこっちから攻め滅ぼそうとは思わないけどさ、向こうから来るなら殺らないとだめよねぇ?


そう思って戦の準備を手伝おうとしていたんだけど、どうやらそうでもないようで。


「王家とてクトニオス卿とお主が正式に話し合って決めたことに対しては口を挟むことはできぬよ。それを許したら領地貴族の家督継承に対して干渉されることを認めることになるからの。ほぼ全ての貴族が反対するじゃろうて。無論、リーフブライト侯爵家もな」


「あら、そうなんですの?」


「そうだな。そのうえでお前の祖父であり、私とお前の会談を仲介したミッタークエセン伯がそれを認めたのだ。血縁者の全てが認めたことを覆すことなどできぬ。リーフブライトはあくまで婚約者でしかないのだからな」


「へえ。それだったら最初から戦の準備なんてする必要はなかったのでは?」


最初から私と叔父様が会談したってことにしておけば王家も兵を出す口実にはならなかったのでは? その後で私が病死したとでも言っておけばいいと思うのだけど。


「お主が生きていることが大事なのだよ。その上でクトニオス卿と和解して、儂がそれを承認する。そんなことが簡単にできると思うか?」


「あぁ。なるほど」


会談をしたことを証明するには私の存在が必要不可欠。私がいれば『会談の内容は本当です』と言えるけど、いなければ『嘘だ』って言われたら反論できない。


だから私が生きて、それも健全な状態で見つかる必要があったんですね。


その上で私がお爺様の力を借りて復権するのではなく、叔父様と和解するというのもなかなかに難しいのもわかる。普通、命を狙われたら復讐を望むものだからねぇ。


加えて、私と叔父様が和解したところで、仲介者である御爺様に得がない。だから御爺様が仲介者という立場に留まってもなお利益を得たと思えるだけのナニカがない限り、御爺様がミッタ―クエセン伯爵家の利益を優先するのは当然。


具体的には、私を叔父様相手の交渉材料とするか、もしくは私を旗頭にしてブルマリア侯爵家を攻めるか。面倒なら王家にでも売ればいい。どれを選んでも御爺様に損はない。


それらをさせず、私が私の意思を貫くためにはそれが可能なだけのナニカ。

御爺様が大人しく仲介者に留まることをヨシとするだけのナニカ。

そのナニカに該当するのは、もちろんジェネラルクラスの魔石……と、御爺様たちの命。


そりゃ、ねぇ。目の前にいる相手がいつでも自分を殺せる相手とわかれば譲歩もするわよね。


ただし、命惜しさで譲歩した。なんてなったら矜持に関わるからね。しっかりとした対価として魔石を提供する形にしてあげたことで、御爺様も叔父様も折れやすくなったって感じかしら。


あ、ついでに今回の件で一方的に婚約を破棄することになったリーフブライト侯爵家にもお詫びは必要って話だったんだけど、それについては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を譲渡することで話はつけられるらしいから、そこについては心配はいらないわ。


いやぁ持つべきものはジェネラルの魔石よね。対貴族用の贈り物としての汎用性の高さは金貨よりも上だわ。


問題があるとすれば……。


「ほー。つまり貴様はこれから王都にある学園に入学する必要がある、と?」


「は、はい。貴族である以上学園に通わなければならないという法がありまして……」


貴族になって街や村を貰ってハイおしまい、とはならなかったのよねぇ。


私もすっかり忘れていたんだけど、王国法には『貴族として街を預かる身となるのだから基本的な統治に関する知識や、人の使い方を学ぶ必要がある。貴族の子女はそれらを学ぶために王都にある学園に入学しなくてはならない』とあるせいで、貴族の子女はどうしても学園に通わなきゃいけないらしいのよ。


実際私も何事もなければ侯爵令嬢として通う予定だったし。


ただし、それらはあくまで私たちの都合であって、王国の民でないベシータ様には関係のない話。


「その学園を卒業するまで統治に関わることはできん、か。ちっ。めんどくせぇ話だな」


「申し訳ございません!」


約束通り騎士に任命して市民権を受け取ってもらおうとした矢先にこれだものね。

そりゃベシータ様も怒るわよ。


ただ、気持ちはわかりますからお怒りで城とか壊さないでくれると助かります。


家督を叔父様に譲って私は分家を継いだとはいえ、本家に力があるかないかで降りかかってくる面倒ごとの量が全然ちがうので。なんとかご寛恕お願いします!


「いや、俺に謝られてもな。それがこの国の法律だってんなら仕方ねぇだろ。あまりに不条理な法だったらぶち壊すことも考えるが、今回の件はそれなりに納得できるものだし」


「あ、ありがとうございます」


ヨシッ! 納得いただきましたぁ!


いやぁ叔父様と御爺様の気持ちがよくわかるわぁ。

気分一つで自分を殺せる相手と交渉するって本当に怖いわぁ。


まぁ、理知的なベシータ様がそんな理不尽なことをするとは思っていなかったけど……現実的な問題として、この方が少し力加減を間違えただけでお城が消えるからね。


このお方クラスになると『くしゃみ』でも十分怖いのよ。


(お嬢様。お話はまだ終わっていませんよ?)


(いや、終わったから)


サキ。ベシータ様も一緒に学園に通ってもらうっていうのは絶対に無理だから諦めなさい。

学園に通っている間に疎遠になることを気にしているみたいだけど、もともと疎遠だから。

もう現実を認めて諦めなさい。


(お嬢様?)


(あーあーきこえなーい)


少なくとも私は絶対に頼まないからね!



―――


以下おまけ。


某所。


『……サロゲートが死んだ、か』


『不甲斐ない。とは言えんな』


『然り。肉体強度だけで見れば彼女は魔王の中でも最弱だが、そも最初の被害者が最強の肉体強度を誇るメルカーリだ。他の誰でも同じ目に遭うであろうよ』


『うむ。最強の精神干渉系と最強の肉体強化系が拠点ごと沈められたと考えれば、これはもう個人の力がどうこうではあるまい』


『……魔王だけをピンポイントで狙って殺す神器、か。ふざけやがって』


『まったくもって同感だ。しかし愚痴を言ってもしょうがあるまい。とりあえず私はサロゲートの意見を取り入れて拠点を移すが、怠惰はどうする?』


『……面倒くせぇが移動するしかねぇだろぉな』


『そうだな。そうしたほうがいいだろう』


『うむ。ちなみに件の神器だが、メルカーリがやられたときと今回のことを鑑みれば、チャージに必要な期間は凡そ1か月から2ヵ月といったところだと思うが異論はあるか?』


『座標の特定に時間がかかるのか否かも考える必要があるだろう』


『なるほど。それもあったな』


『……移動してもなお追尾してくる可能性はあると思うか?』


『現状では神器の詳細がわからんから何とも言えんが、ないとは言い切れんだろうな』


『うむ。何らかの方法で魔王だけを特定しているのであれば、移動したとしても追尾される可能性は高い』


『それも海底の岩盤だけでなく、地下深くに造られたダンジョンの天井さえも貫く威力がある攻撃だからな』


『……どうしろと?』


『『『頑張れ』』』


『おいぃ』


『冗談ではないぞ。こちらも聖都への攻撃を強め件の神器やそれを使う勇者を排除するつもりだが、いかんせん聖都には特殊な結界があるからな』


『我らの力を半分以下に落とす、あの忌々しい結界か』


『……あれさえなければ我々が直接出るのだがな』


『愚痴を言ってもしょうがあるまい。とりあえずはキングクラスとジェネラルクラスの派遣数を増やし、向こうに長期籠城を強いることで内部崩壊を狙う策を継続しつつ、決死隊を募って勇者やその関係者を殺す。もしくは神器の破壊を狙う策を実行に移したいと思うが如何?』


『策そのものに異論はない。だがリソースは有限だ。目標を勇者の殺害と神器の破壊を両立させるのではなく、どちらか一方に徹底した方が良いのでは?』


『それはこちらも考えた。だがこれまで神器の特徴どころか、存在の有無さえわからなかったらな』


『あぁ。少なくとも勇者は特徴も掴んでいるし、居場所も特定している、か』


『そうだ』


『確かに。現状狙いやすいのは勇者で間違いない』


『……ではチャージが終わる前、つまり1か月くらいまでは神器を捜索させ、1か月を経過したら勇者を狙うというのは?』


『ふむ。これからさらに1か月もの間連中に籠城を強いて消耗させた後であれば、勇者や関係者の警戒も緩むかもしれんな』


『付け加えれば、その頃になれば人間同士の空気も最悪になっているだろう。多少手を加えるだけで周囲が勇者を敵視するように仕向けることもできると思うぞ』


『なるほど。如何に勇者とて、護るべき民から石を投げつけられれば神器の使用も躊躇するやもしれんな』


『そのまま人間と相討ってくれれば最良。次善は我らが派遣した決死隊が勇者の殺害に成功すること。次いで神器の破壊に成功すること、か』


『最悪でも聖都から勇者を引き離すことができればそれでいい』


『そうだな。そうなれば我らの手で勇者を殺せる』


『では作戦を発動する。……もう二度と件の神器は使わせん。皆もそのつもりで頼むぞ』

『あぁ』

『うむ』

『同感だ』

『おぅよ』


―――


『『『グォォォォォォォォォォォォ!!!』』』


「援軍、だと!?」

「おおよ! それもキングやジェネラルクラスが大量に、だ!」

「ただでさえ限界が近いと言うのに!」

「おのれ魔族ども! それほどに勇者が怖いか!」

「……なぁ。連中の狙いが勇者だとすれば、ここから勇者を逃がせばどうなると思う?」

「それは!」

「……試す価値はあるかもしれんな」

「おい! 勇者を、あの子たちを見捨てるってのか!」

「落ち着け。我々はまだしも、民の限界が近い。それは貴様も知っているだろう?」

「……」

「然り。このままでは暴動がおこるぞ」

「事実、この攻勢が勇者のせいだという声もある」

「このままでは護るべき民に攻撃されかねんのだ。対策がないというのであればここは避難させることも考えるべきではないか?」

「くっ」


『避難、ですか?』

『私たちだけ?』

『……そうですか(俺たちが邪魔になったか)』


【ユウシャ、二、ノロ、イ、ア、レ】


――聖都の戦はまだ続いている。

令嬢たちと聖都陣営の温度差よ。


勇者の明日はどっちだ?


閲覧ありがとうございました。




構想を練り直すために少し更新ストップする……かもしれません。


あらすじとタグに不定期更新って書いてあるからシカタナイネ!(書いてない)


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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔王側の対聖都用作戦案がガッチガチのマジで舐めプせず、隙も見せない構えなところとか、本当に素晴らしいのに。 仮にすべての作戦が成功しても、挙げられる成果は「勇者召喚陣の破壊」「人間の主要拠…
[一言] ベシータ様、小さいおっさんやど?おっさんに十代の子供達に混じって学校に通えとか、鬼かっ! 確かに、この世界の知識を学ぶ必要性を常々説いてきたベシータ様にとって学園はうってつけの場所でもあるけ…
[一言] 頑張れメイド! 学生服に身を包んだベジータ様を見られるチャンスだw 全力で交渉してくれ給えw ……でもアールさんの学生服姿だと思うとさほどレアでもないなぁw
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