10話。撃滅全域
オークを殺して平気なの?
本日2話目の更新です
おう。俺様だ。ベシータ様だ。
めんどくせぇから色々省略するが、前回同様生き残ったキングどもの巣を襲撃し、けちょんけちょんにしてやった結果がこれだ。
令嬢 :4800
メイド :4700
01 :2450 風の魔法と弓矢が得意。中、後衛。援護方。素直
02 :2500 水魔法と体術が得意。。前、中衛。回避盾。
03 :2400 土魔法と武器を使った戦闘が得意。意外と器用で技術力がある。前衛。防御盾。
04 :2600 火魔法と体術が得意。前衛。強襲方
副隊長 :1600~1700×4
騎士 :1300~1400×20
戦士隊長:1200~1300×4
戦士 :500~600×72
こんな感じだな。戦士やら何やらを強化したいのであればレベリングは各自に任せる予定だが、あまり殺し過ぎれば次の世代が育たなくなるからほどほどにするように指示は出してある。
ちなみに襲撃した巣は6個で、あと2個残っているんだが……1個はわざと残し、もう1個は族長の一味用に確保している状態だ。
わざと1個残すのは、あれだ。自分より強いやつがいなくなったら小娘どもが調子に乗って暴走する可能性があるからな。あと令嬢の国が令嬢やメイドに『森を開拓しろ』なんて言ってきたときに『キングが居るからできません』って断るための名目でもある。
事実キングの野郎がスキルを使ったときのBPは約15000もあったからな。
あまりに実力差がありすぎて今の令嬢やメイドでも時間を稼ぐことは不可能と言っていい。
アレをどうにかするには、スキルを封じるか、能力を強化できるような武具を装備するか、はたまた魔法やスキルでバフとデバフを重ね掛けしまくるくらいしか思い浮かばねぇぞ。
「しかし、バフ・デバフっていってもな」
タルカ●ャだのラク●ジャだのランダ●イザを使おうにも最低でも令嬢と同じパーティーに入る必要があるはずだ。距離の問題があるからな。
しかしそれなりの強者じゃなきゃキングと戦う前にその余波だけで死んでしまう。
具体的には、最低でも村長クラスの実力は必要だろうよ。
そうなるとレベリングが必要になるんだが、当然その狙いは村長だ。
だが普通に考えれば、レベリングのためだけに村長を狙って森の中を進むのは無理がある。いや、俺がその気になればいくらでも量産できそうな気がするが、正直めんどい。
つまり? 令嬢の国が令嬢に何を言おうが「キングを刺激するような真似はできません」って断ることができるってことだ。
そういう口実に加えて、そもそも人間と小娘どもの間に力の差が空き過ぎても困るんだよな。
01とかにも聞いたが、この世界の人間も欲深い生き物らしく、人間ほど信じられねぇ生き物はいねぇって感じだったし。
令嬢やメイドが何もしなくとも森にちょっかいをかけてくるやつはいるだろう。そうした連中を始末するためにも小娘どもには力が必要だ。
「そのためにわざわざ貴様らの分を残してやったんだ。ありがたく思え」
ラスイチだ。コンビニなら特別なやつが貰えるレアなやつだぞ。まぁもう1個残しているからラスイチと言えるかどうかは疑問だが。
「いや、理屈はわかるし、人間どもに屈服するつもりもないからご配慮はありがたいとは思うんですよ? 思うんですがねぇ」
「なんだ。言いたいことがあるなら言え」
聞くとは限らんがな。
「……結局ベシータ様って誰の味方なんです?」
「ん? なにが言いたい?」
「いや、ベシータ様がアタシらに目を掛けて下さっているのはわかるんですが、それでも一番はお嬢とメイドでしょう? 今はいいでしょうが、結局あの二人は人間ですよ? 上からの命令でアタシらを用無しって判断したらベシータ様はどう動くのかなぁと思いまして」
「あぁ、なるほどな」
個人としてはまだ信用できるが、種族としては信用しないって感じか?
……いや、個人としても信用はしていないが、俺の手前それは言及していないだけだな。
随分と信用のないことだが、それもこれも人間の行いの結果だから俺から言うべきことはねぇ。
それにこいつらの懸念は尤もだ。
キングっていう命令を断る口実は残してあるものの、当のキングは奥地に1匹しかいねぇからな。
加えて、さっきもちらりと話したが、人間は強欲だ。
メイドや令嬢が断っても、この森を開拓したがっている連中は国家規模で森の浅い部分を開拓するために人を派遣するだろうよ。
その際、人間が小娘どもと接触すれば連中は必ずちょっかいを掛けてくる。
繰り返しになるが、小娘どもを強化するのはそいつらを殺すためでもあるんだからな。
だが小娘どもが抗えば抗うほど国も意固地になるだろう。
そうなったら令嬢やメイドに討伐命令が下ってもおかしくはない。
命令を受けた二人も、人間社会で生きていく以上、権威にはある程度従う必要があるからな。
自分を殺そうとした叔父はまだしも、祖父だの国王に言われれば逆らえない可能性は否定できん。
で、族長にとっての懸念はそのときに俺がどっちに付くかってことだ。
小娘どもの味方になるのであれば問題はない。
ちょっかいをかけてきた国ごと滅ぼして終わりだ。
だが令嬢たちの味方になれば族長たちに生き延びる術はねぇ。
人間の欲深さを正しく理解しているからこその疑問ってとこだな。
こいつらの疑問がわかったところで俺の答えだが……。
「少なくとも俺が生きている間は問題ねぇな」
「と、言いますと?」
「お前らは令嬢とメイドの配下ではあるが、同時に俺が庇護した存在だ。戦争かなんかで令嬢やメイドが必要なことだと判断したうえで貴様らに『死ね』と命じたら死んでもらうこともあるだろう。だが、なんの関係もねぇ国王だの祖父だのがメイドや令嬢にお前らを潰すよう強制的に命じた場合は違う。国王がいる居城を都ごと消し飛ばして終わりだ」
命令した責任を取れってな。それが祖父でも同じ結果になるだろうさ。
「……なるほど」
おっと。これだけだと質問の答えには足りんな。
「もしも令嬢やメイドが欲に溺れて貴様らを討伐しようとした場合も同じことだ。確かに俺にとってあいつらはそれなりに価値のある存在だが、俺の主義主張を曲げてまで味方する必要があるとは思ってねぇからな」
そもそも族長とかを討伐しようとするってことは、獣人である俺も討伐対象だろう?
自分を討伐しようって連中に情けを掛けてやる趣味はねぇぞ。
それがたとえ令嬢やメイドであったとしても、な。
問題があるとすれば、もしそれをやった場合俺の中のベシータが死ぬ可能性があるってことだが、それについてはその時にならんと何とも言えん。
一つ言えるのは『頑張れ、その時の俺』ってだけだな。前もこんな感じのことを思った気もするが、人生なんてそんなもんだろ。
「これで満足か?」
「えぇ。えぇ。十分以上です。ちなみにもう一ついいですか?」
「なんだ」
まだ何かあるのか?
「ベシータ様は番を作る予定はありませんか? もし番を作るなら獣人の血を継いでる方が良いと思いませんか? アタシも独り身ですし。もし若いのが良いってんなら用意しますよ? ウチのテトラなんかお薦めなんですけど、どうでしょう?」
「冗談はそのくらいにしておけ」
どうでしょうもなにもねぇよ。番もなにも、フルーザがきたら死ぬんだぞ。
子供をかわいがって5年無駄にした人参野郎と一緒にすんな。
まぁ森に飽きたっつってレベリングを中断しようとしている俺が言っても説得力に欠けるかもしれんがな。
「いや、冗談じゃ……」
「そんな冗談が言えるってことは余裕があるってことだな。よし、ならさっさと行くぞ」
「えぇぇ!?」
「わめくな! 黙らねぇと首の骨をへし折るぞ!」
「えぇぇぇぇぇぇ」
「最初からキングのところに行く予定だったが変更だ。予定より多くの集落を襲わせてからキングと戦わせてやる。もちろん貴様らの部下もだ」
「姐さん……」
「……アタシ、なんかまずいこと言った?」
「ついでに一連の予定を消化したらこの俺が直々に訓練を施してやるぞ。
死んだ方がマシだったと思えるほどの、な」
「「「「……」」」」
そして立派な配下にしてやるぜ。
―――
「「「「ブモ――――――!!」」」」
「ま、こんなもんか」
これで俺らが造らせた集落付近の巣と森の全域に点在していたキングの巣は1つを残して壊滅したな。
「「「「……」」」」
度重なる戦闘で疲れたか、無言でぶっ倒れているのは族長以下数百人の群れだ。
こいつらが返事をする余裕がなくなるくらい鍛えた結果がこちら。
族長 :3600
副長 :1800
部下1 :1200×10
部下2 :500×20
部下3 :200前後×約350
族長と令嬢の差が大体1000前後。同じく班長との差も1000前後。
このくらい差があればまぁ問題あるまい。
ちなみに部下1ってのが最初に族長を見つけた時に一緒に王都に潜入していた連中で、部下2ってのがそれ以外で集落に残ってた戦闘員。部下3は一般民だったが、最低限戦えるようにしたって感じだな。
これに最初に俺が回収した4班104人の戦闘員が加わり、総勢約500人がこいつらの勢力になる。
「あ~確かこれから数日以内に、豚野郎どもの王都で貴様らの将来を決める戦闘があるんだったな?」
「……はい。どうします? 潰しましょうか?」
「ふむ」
大義に酔いしれたラーズって野郎が主導する独立を求めるための戦争らしいな。
なんでもアベルナとかいうやつもいるらしい。
なんとも生意気な名前だぜ。
俺個人としては速攻で叩き潰しておきたいって気持ちがある。なんならそいつらが住んでいるところに、豚野郎が住んでいた集落の一部を叩きつけてやりたいくらいだ。
だが……。
「まだ潰すな」
「……そいつはどうして?」
どうして? 決まっている。利用価値があるからだ。
「そいつらにはお前らみたいなハーフの受け皿として存在してもらう必要がある。聞いたところだと、ハーフが生まれたらオークの方からそいつらのところに捨てにくるんだろ? その場所は残しておかないと、今後の障りになるじゃねぇか」
いちいち森に捨てられたのを拾うなんてできねぇからな。尤も今回の戦闘でどうなるかはわからんが、それなりに優秀らしいし、どでかい失敗をしない限りは向こうでなんとかリカバリーするだろ。
連中だって自分たちの足場を固めるために数が必要だってことくらいは理解しているはずだからな。
「あぁ、なるほど。まだってのはアタシらの準備期間ですか」
「そうだ」
せめてこいつらが受け皿を作れるようになるまでは残してやるさ。
その後? その時の気分次第だ。
そのときのことはそのときに考えればいい。
差し当たっては当日の指示だな。
「貴様らも連中の戦闘に関与する必要はない。それなりに戦ったら戦闘中に離脱して西に向かえ。二日ほど行ったところに物資と迎えを用意しておくから、そこで合流する。いいな?」
「はっ!」
アレだ。賤ケ岳で柴田を見捨てた前田みたいな感じだ。見捨てられた連中が何を言っても関係ねぇ。勝ち馬に乗るのは今も昔も当たり前のことなんだからな。
「それでいい」
その後は俺が担ぐか、歩かせてマッピングさせるかだが……今後のことを考えればマッピングさせた方がいいだろうな。こいつらの合流は急ぎではないし、なによりこいつらを止めることができる豚野郎の集落は存在しない。あとは道中で襲撃を行って戦闘訓練を積みつつ補給をするなり、弱い連中のレベルアップに役立たせるなりすればいいさ。
「それにしても大義、なぁ」
大義によって立っていれば勝てるってわけでもねぇが、それだって狂気と感情で無駄に戦線を拡大させるような連中に文句を言われる筋合いはねぇわな。
うん。どう考えてもあの主人公、いや、あの部隊の連中は全員頭がおかしい。
そりゃ軍法会議もかけられますわ。
いや、誰のこととは言わんけど。
閲覧ありがとうございました。
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