5話。小娘たち、森の中へ
王道を征くレベルアップ回
おう。俺様だ。ベシータ様だ。
こっちに向かって侵攻してくる豚野郎どもを倒し続けること数日。
なんやかんやあったものの、令嬢とメイドは村長4体を含む結構な数の豚野郎どもを討伐したことから他の小娘どもからある程度の尊敬を勝ち取ることに成功したようだ。
それを見て「もういいや」と判断した俺は、令嬢とメイドに戦闘を切り上げさせ自分の手で豚野郎どもを殲滅することにした。
だってBPもったいねぇし。
そんなこんなでこっちを狙ってくる豚野郎どもを叩き潰し、思う存分(というには微妙だが)BPを稼いでやったぜ。
もちろん、当然これもただの趣味ってわけではない。
ここまでやってようやく集落の安全が確保されるのだ。
集落の安全が確保された今、俺たちは心置きなく小娘どものレベリングを行うことができるようになったのである。
「いや、ベシータ様がいる時点でどこよりも安全な気が……」
「この阿呆め」
「えぇ!?」
「お嬢様。いつもベシータ様にお守りいただけるとは思わないでください」
「サキまで!? いや、言いたいことはわかるけれども!」
小娘どものレベリング計画には、当然ながら小娘どもを配下にすることに成功した令嬢とメイドも参加させるべきだと考えて一緒に計画を練ることにしたんだが、これがまぁうるせぇことうるせぇこと。
特に令嬢がな。妙なスイッチが入ったのか積極的に意見を言ってくるのは良いんだが、もう少し考えてから口に出してほしいところだぜ。
ま、なんやかんや言ってもお子様だからしょうがねぇと言えるかもしれんが、向こうはこっちが子供だとか令嬢だとかを斟酌してくれるわけじゃねぇからな。
油断慢心で気を緩めるには百年早ぇんだよ。
「実際ベシータ様はお一人しかおられませんからね。新人さんたちのレベルアップに付き添われた場合、この集落から離れることになります」
「そうだ」
メイドの言うとおりだ。
「むぅ……」
第一、レベリングさせるメンバーを空輸できるのは俺だけだからな。豚野郎の巣を狙って襲撃するタイプのレベリングをする場合、どうしても俺が付き添う必要がある。
その際は当然ながらこの集落に俺はいない。今の令嬢とメイドであれば普通に戦えば村長的な野郎にも勝てるが、相手が複数だった場合は後れを取る可能性がある。
こいつらは大丈夫でも、他の連中が何人か死ぬことになるだろう。
鍛えた後なら逃げることもできるだろうが、今の段階ではほぼほぼ死ぬと見ていい。
そういう危険性を鑑みたからこそ、近場の連中を一掃する必要があったわけだ。
「今なら近場に連中の巣はねぇし、こっちに侵攻してきている連中もいねぇからな」
連中が増える方法は出産によるものが基本らしいが、ここは異世界でダンジョンだ。時間を掛ければリポップする可能性もあるからな。それを考えれば時間的な余裕があると悠長に構えるのは危険だろう。
だからこそ今が攻めどきってやつだと思っている。
「では以前のように壁に乗せて移動されるのですか?」
「そうだな。予定では前より小さい壁にして1班25人。いや、班長を加えたら26人ずつを運ぶ予定だ」
「遠征期間のご予定は?」
「理想的としては一班あたり巣を6、7個ほど襲いたいところだから、まぁ一度につき2~3日くらいじゃねぇか?」
なんやかんやで連中も全員BP100を超えたからな。前に比べて少しくらいはスピードを上げても大丈夫だろうから移動時間の短縮はできると思う。
ただし数が数だからな。
レベルアップした後に慣熟訓練をする必要もあるし、夜間の見張りやら戦闘やらの経験を積むことを考えれば少しくらいは多めに見た方がいいと判断した結果が2、3日ってわけだ。
「なるほど……」
メイドが何か考えているが、これに関しては譲らんぞ。何よりこいつらはこいつらで、俺が抜けた後に如何にして集落を維持するかって訓練をしてもらわなきゃならんのだからな。
100人程度、それも力の差を知って従順になった連中の統率もまともに取れないようじゃあ貴族としてはやっていけないだろう?
貴族の社会から逃げるってのもそいつの生き方ではあるから否定はしないが、令嬢には俺がこの世界を堪能できるように頑張ってもらわんと困るんだよ。だからせいぜい頑張ってくれ。
―――
そんなわけでレベルアップの時間である
「気合を入れろよ」
前回のノウハウがあるからな。やり方は簡単だ。
まず一つ目の巣。
基本的に巣には500の野郎が10前後、1000の野郎が2匹。2000の村長が1匹いる。だからそれを効率的に仕留めるようにすれば最短でレベルアップが可能だ。
「えいっなの!」
「「「「「ブモ―!」」」」」
まず班長である01にBP500のやつを10匹とBP1000のやつを2匹やらせれば、1200くらいになる。さらに1200あれば、村長もスキルを使わせた上で瀕死にしたやつであれば倒せるからな。 それで1500前後になる。
他の連中はとりあえずBP200前後のやつを25で割る。
100匹くらいいるから、1人あたま4匹。これをやるとだいたい200になる。
結果
200が25人
1500が1人ってわけだ。
次いで2つ目の巣
「暴れるなよ。暴れるなよ」
「えい!」
「やぁ!」
「「「「ブモモ―!」」」」
最初にランダムで5人選んで、10匹いるBP500のやつを一人あたま2匹ずつ始末させる。
これで400くらいのが5人できる。
その中からさらに適当なやつを1人選んでBP1000のやつを2匹始末させれば、だいたい800くらいになる。
最後に班長に村長をやらせれば1700くらいだな。
最初の5人に選ばれなかったやつらは戦闘訓練を兼ねてBP200の豚野郎と戦闘だ。
BP100の連中は俺が貰う。
これで2つ目の巣が終わった時点でこうなる。
250が20人
400が4人
800が1人
1700が1人
「予定通りだな」
で、3つ目。
「とう!」
「しね!」
「「「「「ブモモモ―!」」」」」
2回目と同様に、5人選んでBP500のやつを2匹ずつやらせ、その中から1人選んでBP1000のやつを2匹始末させ800を1人作る。
前に800になったやつにジェネラルを殺させて1300にする。
これで3つ目の終了時にはこうなる
250~300が15人
400が8人
800が1人
1300が1人
1700が1人
4つ目。
「はっ!」
「そりゃ!」
「「「「「ブモモモッー!」」」」」
もう省略していくぞ。
300が10人
400が12人
800が1人
1300が2人
1700が1人
5つ目。
「ていっ!」
「うんしょ!」
「「「「「ブモモモモッー!!」」」」」
同上。
300が5人
400が16人
800が1人
1300が3人
1700が1人
6つ目
「ふんっ!」
「けりゃっ!」
「「「「「ブモモッ!!!!」」」」」
いや、もう「この部分の原稿料いりませんから」って本誌で謝罪するくらい同じことの繰り返しだな。
とりあえずこうなった。
400~450が20人
800が1人
1300が4人
1700が1人
7つ目
「よいしょー!」
「こらしょー!」
「「「「「ブモモモ!?」」」」」
もう少しで終わりだ。
ここでBP500の野郎を400の中から選んだ10人にやらせてBPの底上げをする。
400~450が10人
500が9人
800が1人
1300が5人
1700が1人
8つ目
これで最後だ。
「セイッ!」
「ホァタァ!」
「「「「「ブ、ブモッ!!!」」」」」
残った10人の底上げをしつつ班長にジェネラルをやらせて1900くらいにする。
「これで終わりだ。よくやった」
ほんとによくやったもんだぜ。俺がな。
「「「「はいっ!」」」」
延々と輸送と雑魚の処理をしていた俺の苦労はさておくとして。最終的にはこんな感じだ。
まずBP500が18人。これが基本の戦士階級だな。
次いでBP800が1人。戦士の隊長だ。
その次にBP1300が6人。騎士階級とでも言おうか。
これで一班25人。
班長はBP1900あるから普通にやればジェネラル相手にも時間稼ぎはできるし、騎士と一緒に戦えば戦いようによっては勝てるだろうよ。
これをあと3回やれば一つの班に依存しない感じの、ちゃんとしたシフトを組んだ防衛も可能になるはずだ。
で、今後新人が増えたら戦士の下につけてそれぞれ戦闘訓練を施すって感じだな。
ちなみに俺は今後付き添わんから、今回のような効率を重視したパワーレベリングは今回限りってことで諦めてもらう。理由? 簡単だ。
「やってみてわかった。輸送がめんどい」
いや、マジで。1回目か2回目くらいはノリで楽しめるんだが、それ以降はもう駄目だ。
自分で企画した奴だから最後まで付き合うが、何度もやりたいとは思わんぞ。
ただまぁ最終的に32の巣を潰すことで周囲の安全確保もできるだろうし、何より俺のBPがとんでもないことになっているから損をしたとは思っていないけどな。
「久しぶりに見てやろう。出ろ。ステータス。あ、100以下の単位は省略でな」
―――
名前 リョウ
レベル 36
BP 284000
―――
これである。他の連中にとって、最初はともかく1回目の襲撃が終われば普通の豚野郎なぞなんの旨味もない相手になるってんで全部俺が仕留めることにしたんだが、そもそも俺の場合はBP100の奴らを500匹潰せば5000のBPを得る仕様だからな。
連中は1つの巣に500匹以上いるから、32(最初の巣を除けば28)の巣を潰したら単純計算で500×28で140000のプラスだ。レベルは前に偉そうな連中を仕留めたときから上がってねぇが、BPだけが跳ね上がったんだよ。
だから今回の件も、俺のレベリングを兼ねていたと考えれば悪いことではないんだ。
悪いことでは、な。
「……ここまで強くなる必要があったかどうかはしらんが、弱いよりはマシだ」
戦えば戦うほど強くなる仕様の恐ろしさよ。ある意味、つーか普通にチートだろ。だが、これでも安心ができないのが異世界ってやつだ。
「俺以上の存在がいると仮定して動くのが正しい、はずだ」
俺がここにいるってことは他のザイヤ人や、なんならフルーザだっているかもしれないんだからな。異世界の仕様がどう働くかは不明だが、遊び半分で星を破壊するような奴がいた場合、この程度の力じゃ抵抗できん。
「なにせフルーザのBPは初期状態でさえ530000。今の俺のほぼ倍もあるんだからな」
そのうえ第二形態で100万。第三形態で200万。最終形態で6000万。フルパワーで1億2000万ってなんだよ。インフレどころの騒ぎじゃねーぞ!
「今の俺が大猿化できたとしても280万。第三形態には勝てるが、そこで倒せないと死ぬのは俺だ」
ちなみにこの星にも月があるし、一か月に一回くらいの周期で満月になるんだが、それを見ても変身はできなかった。
これが俺の仕様なのか、それともこの世界の月から照射されるプラーツ波が1700万センノに満たなかったせいかはしらんが、結果として変身はできなかったんだ。
「だからこそ、俺が変身するためには弾けて混ぜたらできる例のボールを作るしかないんだが……作り方がわからんのよなぁ」
単純に力を籠めただけだと操気丸になるんだよな。いや、あれはあれでロマン攻撃だから悪くないんだが、切り札にはならんのが問題だ。
「まぁいい」
後のことは後になってから考えよう。差し当たってはこいつらのレベルアップと、04が言っていた族長とやらの確認だな。
頑張れよ、後の俺。応援しているぞ。わりと本気でな。
自分がインフレし始めたので他のインフレ勢が出てくることを警戒するアールの図。
警戒、しちゃいますよね?
―――
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