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15/56

15話。満足

いつの間にか戦闘力ポイントが1大根ラディッツを超えていたので、本日二回目ですが初投稿です。


勘違いタグを追加しました。

おう。俺だ。ベシータ様だ。


バスクだかジャマイカンだか知らんが、騎士の野郎がありきたりな命乞いをしてきやがったから容赦なく汚ねぇ花火にしてやったぜ。


迷ったのは話の持って行き方くらいだな。具体的には『だが断る』にするかDB風にするか悩んだが、DB芸人で在る以上DBを優先するのは当然だよな。


ってなわけで色々弾けて混ぜた殺し方をしてすっきりしたんだが、話はまだ終わったわけじゃねぇ。


「さて、と。小娘」


「は、はい!」


「貴様の願いは叶えてやったぞ。文句は有るか?」


「い、いえ! ありません!」


「だろうな」


これで文句があるとか言われたらビックリするわ。


まぁ二人ほどメイドが倒したからその点は譲る必要があるかもしれんが、それだって俺がいたからこそできたことだからな。


「で、報酬についての話をしたいんだが、なんでもすると言った言葉に嘘はないだろうな?」


「……はい」


あの時は絶体絶命のピンチだったから『なんでもする』と言えたんだろうが、状況が落ち着いた今となっては後悔しているのかもしれない。


「なら俺からの要求は……」


「お待ちください!」


何を要求されるのか、と不安な様子を隠そうともしない令嬢に対して要求を告げようとしたところ、いつの間にか服を着たメイドが言葉を差し挟んできやがった。


(まぁ、予想はしていたがな)


メイドからすれば自分たちが助かるのはいいことだが、それで令嬢になにかあったら意味が無いと考えているのだろう。


それに加えて俺が口にした台詞から令嬢が俺に何を言ったのかも理解しているようだ。


吐いた唾が呑めんのは交渉の基本である。それが貴族であればなおさらだ。


尤も。もしもここが貴族としての権威が通用する場であったなら、正体不明の男と交わした約束なんざ踏み倒すことは簡単、とは言わないが不可能ではなかっただろう。


だがここは権力ではなく暴力がものをいう森の中だ。踏み倒した場合俺の怒りを買うことは明白。そしてメイドは自分が疲れ切っているのを差し引いたとしても、俺と自分の間に隔絶した実力差があることを自覚しているはずだ。


で、ある以上メイドが取れる手段は一つだけ。


「お嬢様に変わって私がお相手を致します。それではいけませんか?」


こうなる。


勘違いされているが、男が女に対して『なんでも』していいならソッチ方面を想像するのは当然の話だからな。別に「下品な女だ」なんて怒るつもりはないぞ。


「相手をする? 貴様は何か勘違いをしているようだな」


ただまぁ、それはそれとして勘違いは糺しておこうと思う。イメージってもんがあるからな。


「勘違い、ですか?」


「あぁそうだ。どうせ貴様は俺が令嬢の体を要求すると思ったんだろう?」


「……はい」


隠してもしょうがないと思ったのか、メイドはあっさりと頷いた。


「阿呆が。俺が望むのは情報だ。ついでに騎士たちの装備だな」


「情報、ですか?」


「そうだ」


首を傾げる令嬢とメイド。本来であればもっとちゃんと話をしたいところだが、今はその前にすることがある。


「説明も交渉も後だ。貴様らはまず水を飲んで寝ろ」


「はい?」

「寝ろ、と言われましても……」


突然のことに目を白黒させる二人。だが俺だって何の意味もなくこんなことを言っているわけではない。


「貴様ら、特にメイドのほう。貴様、最後に寝たのはいつだ? 時間は? どれくらい寝た?」


「あっ!」

「……」


こいつらがさっきの騎士どもからどれだけの期間を逃げたのかはわからんが、少なくとも襲われた場所からここにくるまでゆっくり休む時間なんて無かったはずだ。


特に令嬢を護っていたメイドなんて、馬車の御者は勿論。食事の準備に加えてボディーガードも兼ねていたんだ。確実に不眠不休、トイレにすら行ってない可能性もある。


「サキ、ごめんなさい」

「お、お嬢様が謝罪するようなことではございません!」

「でも……」


今更ながらにそのことに気付いた令嬢が頭を下げれば、メイドがそれを押しとどめようとする。麗しい主従関係だと思う。だが無駄だ。


「今は俺が話しているんだ。貴様らの問題はあとにしろ」


「「は、はい!」」


不毛な謝罪合戦なんざ見ててもしょうがないからな。家でやれ家で。


「メイドが限界なのは見ていれば分かる。メイド程でなくとも令嬢とて疲れているだろう。そんな連中から情報を貰っても信憑性に欠けるからな。話は貴様らが最低限の睡眠をとってスッキリしてからにしたい。だから『まずは水を飲んで寝ろ』と言ったんだ。わかったか?」


「「はい」」


「良い返事だ」


なんだかんだで寝惚けて交渉することの危険性は理解しているのだろう。二人は今度こそ反論することなく頷いた。


「寝床は……そこで転がっている馬車の中でいいだろう。見張りは俺様がやってやる」


「馬車、といっても……」


「横転してしまっていますが……」


「ん? そうだな。だがそれがどうした。こんなのこうすればいいだけだろう? ……よっと」


「「は?」」


荷台を馬車とは言ってもしっかりとした箱型ではなく幌しかないタイプのやつだが、少なくとも屋根はあるからな。なにもないところで寝るよりは数倍快適だろうよ。


「少し傷んでいるが大丈夫そうだな。ほれ、これで良かろう」


「「え、えぇ」」


転がっている馬車を引き上げてそう告げてやれば、二人は目を白黒させながらもしっかり頷いた。


なんか「扱いが悪い」とか言いたそうな顔をしている気がするが、何も言われないからヨシ!


「あぁ。寝る前に取り分だけは決めておきたい」


「取り分、ですか?」


「そうだ。騎士が装備していた武器や防具。そして持っていた道具や金だ。分配は俺が殺した8人分は俺のもの。メイドが殺した2人分は貴様らのもの。ついでに馬車に積んでいるものも貴様らのものだ。それでどうだ?」


どうだ? と言いつつ断らせるつもりはないがな。


「それは……」


思った通り難色を示すメイド。


個人個人で持っていた金はともかくとしても、武器や防具は侯爵家の連中が使っていたものだからな。見ず知らずの男に渡るのは避けたいと思っているんだろうが、残念だったな。


このベシータ、容赦せん!


「これ以上の譲歩を望むなら何か貰うぞ。貴様らに支払える物はあるのか?」


そんなものあるわけがないよなぁ。


「え、でもそれって……」

「……わかりました。それでかまいません。お嬢様もそれで良いですね?」

「サキ? でも……」

「お嬢様、今は……」

「……うん。わかった」


何やら不満そうだった令嬢も現実を受け入れざるを得ないことを理解したのだろう。最終的に二人は俺の提案を受け入れることとなった。受け入れることしか出来なかったともいうけどな。


「回収はこっちでしておく。2人分の装備や道具も預かってやろう。あぁそうだ。馬に関しては……すまんが面倒みきれん。開放するぞ」


この世界の馬の価値は分からんが、侯爵家の騎士が乗っていた軍馬が安い筈がない。それはわかっているんだが、だからと言ってどうしようもないのもまた事実。


「えぇ。それはそうよね」

「そうですね。私もそうするしかないと思います」


動物は好きだ。もちろん馬だって好きだ。好きなんだが、それと飼うのとは話が違うのだ。今の俺には彼らを飼育できる余裕がない。無責任に連れ回すくらいなら解放するべきだろう。その結果、野生に戻るのか、もと居た場所へと帰るのか、それとも森の獣に殺されてしまうのか。正直どうなるかはわからん。


これも無責任と言えば無責任なのだろうが、ぶっちゃけ馬をここに連れて来たのは俺じゃねぇし。一応無駄にしないために俺が殺して食うってのもありっちゃありなんだが、アイテムボックスの中に高品質の豚肉が余っているんだよなぁ。


馬肉にそそられる気持ちが無いとはいわんが、血抜きやら何やらの処理の仕方がわからん俺がシメた肉が何もしなくても旨い肉に勝てるとは思えんのだよ。


嫌な思いをして馬を殺した挙句、喰ってから『不味い』と嘆き、我慢して喰うくらいなら逃がすことを選ぶぞ、俺は。


「あの、一つだけお聞きしたいことがるのですが、よろしいでしょうか?」


「む? 聞くだけは聞いてやろう」


俺なりの我儘を貫こうと決意していると、令嬢の方が俺に話しかけてきた。


(さて、何を聞くつもりだ?)


自分たちが俺に何か要望をできる立場にないことを知っていながらの問いかけだ。何かしらの意味があるのだろうと警戒したのだが、結論から言うと俺の警戒は杞憂に終わる。


「ありがとうございます。それで、あの。私はセレス。セレス・デル・ブルマリアと申します。そしてこちらのメイドが……」


「サキ・ラングレイと申します」


「あぁ。そうか。まだ名乗っていなかったな」


何のことはない。自己紹介だった。こっちはメイドの名前はあれだけ連呼されていたから知っていたし、令嬢もブルマリアってだけ知っていればいいやと思って放置していたが、向こうはそれを知らんし、何より俺も名乗っていないからな。


交渉をするにしても何をするにしても名前くらいは知りたいと思うのは極々当たり前の話だ。


令嬢たちが聞きたいこととやらを理解した俺は、特に引っ張ることでもないと判断し、向こうに居たときから考えていた『異世界に行ったときに名乗る名前』を名乗ることにした。


「俺の名はリョウ。リョウ・アール・ベシータだ。まぁ正確にはリョウ・ウィステリア・クアッドロ・アール・ベシータなんだが長ったらしいからな。リョウでもアールでもベシータでも好きに呼べ」


(語呂重視でミドルネームとか法則とか一切考えていないが、何か言われたら『それがうちの法則だ』とでも言えばいいだろ)


一抹の不安を抱きつつ名乗りを上げたのだが、令嬢もメイドも特に不思議そうな顔はしなかったので、セーフだな。


「リョウ・ウィステリア・クアッドロ・アール・ベシータ、様ですね」


とりあえず一息吐こうとした俺だったが、安心するのはまだ早かった。


「……そうだ」


(なにぃ? この、自分でも長ったらしいと思う名前を一度で理解しやがった、だとぉ!? ふっ。やりおるわ。だがまぁ、それ以上に前々から名乗りを考えていてよかった。よくやったぞ、向こうにいたときの俺)


令嬢の理解力に内心で驚愕しつつ、それはそれとして自然な感じで名乗りを上げることができたという事実に満足した俺は、オタクあるあるとして『異世界に行ったときなんて名乗るのか』なんて一見無意味なことを真剣に考えていたあのころの自分を全力で褒めることにしたのであった。

初投稿とは一体……


どこに勘違い要素があるのかは秘密です。


そろそろ用語解説入れますかねぇ。


―――


閲覧ありがとうございました。



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― 新着の感想 ―
[一言] 山分けの段階で気付いてしまった…一番金持ってそう、良い装備してそうな奴を「きたねぇ花火」にしてしまったことに 死んだらドロップアイテムになれやァーッ!
[一言] 『異世界に行ったときに名乗る名前』ww 何を普段から考えてやがったww だがそれがいい
[良い点] 弱きを助け、強気を挫き、報酬を得ることより女性の体調を気遣い、その上で望む報酬はその功績に比べて細やかすぎるもの、名を問えば堂々たる名乗り…… これはどう見ても高潔なる流浪の騎士様ーー!…
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