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1話。アールとスタッフ?

頭を空っぽにしてから閲覧していただければ幸いです


不定期更新。


反省も後悔もしていませんが、運営さんやネタ元となったご本人様からクレームが入ったら消す所存ですので、閲覧できなくなったら『そういうこと』だと思ってください。

「ここは、どこだ?」


起きたらなんか白い部屋にいたことに気付いた俺の第一声がこれである。


言ってから咄嗟に「知らない天井だ」とネタに走れなかった自分に腹が立ったが、今はおいておこう。大事なのは現状を把握することだからな。


俺の名は藤木亮。とあるお笑い事務所に所属するごく一般的なモノマネ芸人だ。

強いて違うところをあげるとすれば、筋金入りのDB(ドラグーンベル)芸人ってとこかナー。


よし、自分のことは問題無し。


それはいいんだが、寝る前に何をしていたのかがわからん。確か……舞台の千秋楽が終わったんでみんなで打ち上げに行って、散々飲んだんだよな。それから二次会に行こうとして……う、頭が。


とにかく、アパートに帰った覚えはないし、何より俺が借りている部屋はこんなに白くないから自分の部屋ではないことは確定的に明らかである。


結局此処は何処なのか、自分はどういう状況におかれているのか。それが問題だ。


『目が覚めたようだね』


「ん? 声?」


そうこう悩んでいると、どこからともなく声がかかってきた。


声の主の姿は見えない。変声機を使っているのか男の声なのか女の声なのかもわからないし、声の出所を探ろうにも、どこから声が聞こえたのかすらわからない。所謂天の声ってやつだろう。完全にお手上げだ。


『色々考えているみたいだけど、とりあえず今の君が置かれている状況を説明してもいいかな?』


声から情報を得ようとしている俺をどう思ったのかは知らないが、声の主は少しあきれたような声を掛けてくる。なんともイラっとするが、向こうが情報を教えてくれるというのであれば是非はない。


と言ってもここまでくれば俺の中でも結論が出ているがな。


(酔いつぶれた俺を訳の分からん部屋に連れ込んで企画に参加させるって……さすがにこれはやりすぎだぞ)


そう、これは番組の企画だ。それも俺が所属している事務所の看板とまで言われている大御所がMCを務めている巷でも大人気の番組。


その番組の名は木曜日のダウソダウン。


主に芸人がプレゼンターとして登場し、〇〇な説とか言って無茶ぶりやドッキリを仕掛けてくる番組として有名だな。視聴者からすれば普段見られない芸人の生の反応を見れて面白いのかもしれないが、芸人からすればある意味命がけの番組でもある。


なにせ芸人には多かれ少なかれキャラというものが存在するからな。


例えを挙げるなら、事務所は違うが画頭2:50さんなんかがわかりやすいところだろうか。


今では『カメラが回っているときの破天荒な行動をとるが、カメラが回っていないところでは紳士的な行動をとる人物』と知られており、一つのギャップ萌えのような状況で受け入れられているが、本人からすればそんな暖かさは求めていないだろう。


紳士として扱われる度に『破天荒な部分だけでいいんだよ!』と全力で叫びだしたいのを必死で我慢しているはずだ(実際に叫んでいるときもある)


そりゃな。尊敬されるのは誰だって気分が良いのは確かだし、誰だってバカと呼ばれるよりはいい人と思われたいと思うだろう。普通はそうだ。俺だってこんな仕事に就いてなかったらそう思ったかもしれない。


だが俺たちは違うんだ。


バカなことをやったときに『彼は本当はいい人なんだよ』とか『頑張っているなぁ』なんて生ぬるい視線を向けられるくらいなら、容赦なく『あいつ、バカだなぁ』と指差して笑ってほしいのだ。


だって俺たちはお笑い芸人なんだから。


人としての評価(尊敬)を得るよりも、芸人としての評価(笑い)を得る方が嬉しい。それが俺たちお笑い芸人といういきものなのだ。


だからこそ、俺たちにとって思わぬギャップを晒すことになる可能性が極めて高いこの番組は、出演できること自体は非常に嬉しいし番組に呼んでくれたことに感謝もするが、感謝と同時に多大な犠牲を払うことを覚悟しなくていけない番組でもあるということだ。


斯く言う俺も、一回失敗してしまった口である。


あるとき俺はこの番組で『とある有名番組のコメンテーターになれる』なんてドッキリを受けた。そこで本来であれば『マジで!?』と大げさに驚くべきところを、俺は何をトチ狂ったか『いや、世間が認めないから』と、素で返してしまったのだ。その結果視聴者から笑いが起きるどころか「真面目」とか「地に足が付いている」なんて評価を得てしまったのだから、芸人としてはありえない失態と言えよう。


実のところ、今でも悔しさで自分自身を殴りたくなるくらいには後悔している。


だがそんな無様を晒した俺に、番組はもう一度チャンスをくれたらしい。確実にラストチャンスだ。今回は失敗しない!  


……それでも酔いつぶれた俺を拉致監禁して無理やり企画に参加させるのはどうかと思うが、それはそれ。スタッフに説教するのは種明かしが終わってからだ。


俺が決意を固めるのを待っていたのか、声の主が語りかけてくる。


『まず最初に、君は死にました』


「……っ」


危ねぇ。危うく素で『は?』と聞き返すところだったぜ。この場で素を出すのは厳禁。俺は学んだのだ。では素を出せない俺が取るべき行動は何だ? 簡単だ。カメラに映っていることを自覚し、キャラを貫くこと。それしかない。


「ほ、ほほう。では貴様が死んだ俺をこの空間へと呼び出したのか?」


『そうだよ』


「わざわざ呼び出したくらいだ。何か俺に用があるのだろう?」


『へぇ。話が早いね』


「当然だ」


俺はDBだけの男じゃないからな。


『もう勘付いているのかもしれないけど、君には所謂異世界へと行ってもらいたいと思っている』


どこぞのZ級映画に出てくる科学者みたいな言い方しやがって。いや、それよりこいつ、今なんと言った?


「異世界、だと?」


『そう。こことは違う、剣とか魔法がある世界だね』


なるほど。異世界転生ものか。


「ほう。……面白そうだな」


『でしょ?』


「では、この場はその説明と転生特典について語る場か?」


『そうそう。話が早くて助かるよ』


「当然だな」


ひと昔前には一部のオタクたちにしか通用しなかった概念だが、今は某人気アニメのキャラクターであるオ〇ガだの、某筋肉漫画のキャラである烈〇王だの、とある掲示板の創始者だのが異世界に行く時代だからな。おそらく番組スタッフか漫画好きな芸人がその概念を学んだのだろうよ。


で、今回の説としては『どんな芸人でも異世界に行けるとなったら自分のキャラを忘れる説』と言ったところか?


これは『無人島に行くとしたら何を持って行く?』という話題のように、確かに一定の需要がありそうな話題であるな。


「ふむ」


ここでそんじょそこらの若手や異世界ネタを知らない芸人なら『異世界でも使えるスマホ』だの『金』だの『魔法の才能』だの『最強の武器』だのを選ぶのだろうが、様々なジャンルに精通しているこの俺様は違うぞ!


DB芸人として最前線で戦い続けて十数年。原作すら読んでねぇニワカDB芸人や、腰掛気分でとりあえずDB芸人やってるようなコスプレ芸人とは年季も覚悟も違うッ! 四十を超えてもなお現役で王子を続けているこの俺様を無礼(なめ)るなよ!


「その特典とやらはこちらから意見を出すことはできるのか?」


そう。一流のオタクは提案されたものから選ぶのではない。自分から提案するのだ!


『え? えーっと。まぁ、うん。大丈夫みたいだね』


ふっ。スタッフめ。予想外のことに手間取っているな。その程度でこの俺様を転がせると思うなよ。


「ではまず、ザイヤ人の体だな。これは絶対だ」


『え? 君、もともとザイヤ人じゃないの?』


くっ。スタッフめ、痛いところを突いてきやがる! だがこの俺様がその程度のツッコミを想定していないと思ったか!


「あ~あれだ。『仕様が違います』とか言われて現地人の体にされても困るからな」


『なる……ほど? うん。正直その発想はなかった』


「わかったようだな。そういうことだ」


多少強引だが押し通せたのでヨシ!


『とりあえず了解。あとは?』


「まだもらえるのか? だとすれば……やはり戦闘服だな。軽くて伸びるやつが欲しい」


『あー。防具は必要だよね。うん』


「当たり前だ」


段ボールは駄目だぞ。せめてなんかそれっぽい樹脂とかゴムを使えよ。


「あ、もらえるならついでに下半身が丈夫なタイツと、同じ色のシャツもくれ。色は青が理想だが、黒でもいい」


あのジャケットだけ渡されても困るからな。私服にあのジャケットとか罰ゲームだろ。王子は青だが大根や菜っ葉は黒だったからな。黒でもいいぞ。二枚あればなお良し。


『あ~下半身、それも股間の部分は何があっても破壊されないアレね。防御力に限りはあるけど、股間部分に限って無敵、くらいの性能は大丈夫だね』


「それで頼む」


よし。これで視聴者は『あいつ、異世界に転生するのにキャラ優先してる!』と思ってくれるだろう。


『他はない? 正直これだけだとポイントが余るんだよね』


他? ずいぶん大判振る舞いだな。だが、考えてみれば確かにこれだけだと異世界転生ネタには弱いかもしれん。となるとあとは……あぁ、あれがあったな。


「鑑定とアイテムボックス……いや、スカウターとホイホイカプセルを頼む。それと仙人豆もだ」


危ない危ない。普通に異世界転生に於ける三種の神器の内の二つを要求するところだったぜ。回復魔法って言おうとしたが今の俺は戦闘民族ザイヤ人の王子だからな。魔法なんて使わないのだ。


『なんでわざわざ言い直したのかなぁ。鑑定魔法ならかなりポイント使えるのに、スカウターって機械でしょ? それだとそんなにポイント使わないんだよねぇ』


「ほほう」


覚えてしまえば永続的に、それも幅広い対象に使える鑑定魔法はポイントが高く、本体を無くせばそれでおしまいな上、生き物にしか使えないスカウターはポイントが安いのか。中々よく考えているな。


『あとホイホイカプセルは普通に無理。アイテムボックスにしておくよ。あ、仙人豆も無理。回復魔法もザイヤ人だと魔法の適性が低いから覚えるのは厳しいね』


「なにぃ?」


確かにホイホイカプセルは色々と無理があるとは思っていたが、魔法がある世界でも駄目だったか。

さすがブルーフ博士。やりおる。


あと仙人豆もな。一粒で腹が膨れて傷と疲労が全回復する豆なんて無理だよな。うん。知ってた。回復魔法については初めから考慮していない。


『それでさぁ。まだポイントが余ってるんだけど、何かない?』


「まだあるのか」


『そうだよ』


DANDAN面倒になってきた。だがここで放り投げたらこれまでの尺が無意味になるからな。部屋を確保したり、確保した部屋で隠し撮りさせるのだって無料じゃねぇ。俺たちには出費に見合った撮れ高ってのが必要なんだ。だからこそここは最後まで突っ走るべきだろうな。


つーか忘れてたのがあるわ。


「異世界の言語を理解できるようにしてくれ」


さすがの俺も言葉や文字が理解できないと何もできないからな。視聴者の視点でもこれくらいは現実的でも許されると思う。


『りょーかい。あとは?』


なんだと? まだあるのか? こいつは俺に何を求めていやがるんだ。


「んーむ。そもそもの話だが、そのポイントとやらがどの位あるかわからんからな……」


急に現実的になって見えないスタッフに突っ込む俺。画としては十分だろう。さて、そろそろ終わりにしようか。


「とりあえずポイントが余っているなら、余っている分を全部才能に回してくれ」


『才能?』


面倒になったな? とかいうなよ。


「そうだ。体術の才能とか、戦闘の才能とか、気を使う技術の才能とか、あ、年齢も少し若くしてほしい。そっち方面に回せないか?」


『あ~。なるほどねぇ。基礎部分ね。うん。確かに余った分はそっちに回せるよ。だけどねぇ』


「どうした? なにか問題でもあるのか?」


『問題はないけど、称号がないんだよね』


「称号、だと?」


『うん。勇者とか賢者とか。そういうのがないと初期ステータスがかなり低いみたい。あ、ザイヤ人って魔法の適性が致命的に悪いみたいだから、称号を付けるにしても賢者とか魔法系はやめたほうがいいね』


なんだそんなことか。


「称号なんざなくとも俺は一向にかまわん。初期ステなんざ飾りだ」


ジオ〇グの足より価値がねぇ。


『そんなもん?』


「そんなもんだ」


だいたいだなぁ。才能があるなら鍛えればいいだけの話だろう。劇場版でレタスの野郎がなんとかの実を食ってパワーアップしていやがったが、あんなのザイヤ人からしたら邪道もいいところだぞ。


『本人がいいならいいか。じゃ、振り分けが終わったから転送するよ。あ、眩しいかもしれないから一応目を閉じてね』


「おう」


目を閉じている間に移動ですね。わかります。


わかったついでにもう一つ、ここまで話をしていてわかったことがある。おそらくこの質疑の本質は『異世界に行く場合、どんな力を欲するか』ではなく『これからやるゲームの主人公のビルド構成』についての確認だろう。そう考えれば初期ステだのポイントだのと言った言葉にも納得できる。


普通は最初からそれなりの上級職に就いてレベルを上げるのが正解なのだろう。


だが俺のビルドは完全な脳筋仕様。それも称号無しで初期値が低いから序盤で散々に叩かれるタイプの構成だ。


まぁそれはそれで画になるから問題はないけどな。


それにな、確かにこの構成は最初は地獄を味わうかもしれん。だがそれがいいのだ。序盤参加者全員から散々叩かれるものの、後に最強クラスになってざまぁすればいいだけの話だ。


ざまぁだって異世界の醍醐味なのだから問題はない。


スタッフやこの説のプレゼンターをしている芸人が異世界転生における最新トレンドである『ざまぁ』を知っているかどうかは知らんが、な。


俺はその時を夢見てゲームを楽しませてもらうとしようか。


(……あんまりにもあんまりなクソゲ―だった場合、ざまぁまでたどり着けるかどうかわからんが、それはそれで画になるだろうよ)


――なんやかんや言っても所詮はゲーム。


そう思っていた時期が俺にもありました。


「は? 急に臭いが……え、なんだ? 森?」


これから白い部屋から出されてゲーム本体のある部屋に案内されるのだろう。そう思っていた俺の鼻を突いたのは濃い植物の臭い、そして驚きで開けた目に映ったのは一面の緑だった。


「……白い部屋から出たらそこは一面の緑に覆われた深い森の中だった。なんて小説の冒頭に書いたら『ちょっと何を言っているのかわからない』とか容赦ない突っ込みくらうんだろうなぁ」


結論から言えば、さっきまでの質疑は番組の企画ではなかったし、質疑をしてきた声の主も番組のスタッフではなかったのだ。


この日、俺は異世界に転移した。


「く、くそったれぇ……」


こんなわけで俺の初めての白い部屋体験はクソミソな結果に終わったのだった……。


閲覧ありがとうございます。


ポイント欲しいです。


面白い、とか続きが気になる、と思って下さった奇特な方がいらっしゃいましたら、下部の☆から評価の方よろしくお願いいたします。

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[気になる点] エガちゃんの父親が江頭2:45の名前でタレント活動をしていたようなんで変えたほうがいいかも。 もうご本人はお亡くなりのようですが・・・
[一言] 神様が老界○神、主人公がCV堀川で再生される
[良い点] 時間の限られた朝、飯を食いながら読んではいけないところw ボーっとした頭でエネルギー補充しつつ読んだら、笑いで目は覚めたけど食事が進まないw マナーは大切、骨身に染みた!www
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