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お坊様には赤ん坊をぶつけんだよ

作者: とほかみエミタメ

 最近になって、休日のお昼頃に散歩をしている際に、ベビーカーを押している一人の若い女性とよく出くわす。ベビーカーの中には赤々としたベビー服を着せられている乳児が乗っている模様だ。


 そこで、彼女はすれ違いざまには必ず僕に向かい、笑顔で会釈をしてくれるのである。


 彼女とは特段親しい訳でも無いし、恐らくはご近所さんなのではあろうが、何処(いずこ)に住んでいるのかも知らない御人(おひと)だ。


 それで、一応この僕も軽く会釈を返すのだが、それ以上にがっつり言葉を交わして会話をする訳でも無く、本当にただそれだけの関係性だ。


 まあ、面識のない僕なんぞに、何故に彼女が会釈をしてくれるのかは、何となく予想はついている。


 実は、僕のヘアスタイルはスキンヘッドなので、大方何処かのお寺のお坊さんと勘違いしているのであろう。


 その証拠に、僕なんぞが寺院や墓地などへ行きますれば、十中八九、参拝者達から黙礼(もくれい)をされたり、何なら合掌ポーズで拝まれたりした経験が何度もあるからだ。言わずもがなだが、僕は正式な僧侶でも何でもないのである。


 とは言うものの、嫌な顔をされるのではなく、むしろ笑みを向けられるのは別に悪い気はしないし、僕的には何ら問題は無い。


 ふむ、そうだね。今度は僕の方から、一言くらい声を掛けてみても良いかもしれないな。


 そうして、例によって次の休みの日にも、バッチリ彼女と邂逅(かいこう)したので、軽くお辞儀をするのと併せて「今日もいい天気ですね」と、僕は初の声掛け挨拶をする。


 すると、彼女の方も初めて口を開き、こう(のたま)う訳である。


「ああ、勘違いさせてしまって御免なさい。貴方に頭を下げていたのではなく、貴方の背中にベットリと(まと)わり付いている、無数のWi-Fi電磁波様に、なのですよ、うふふ」


 ……何を言っているんだこの人は……それならば一層(いっそ)(こと)、背後霊だとか守護霊が見えると言われた方が、まだしっくりきたものの、何故にそげなハイ・テクノロジーをチョイスしたんだ……などと考えながら、ふと僕はベビーカーの中をチラリと覗いてみる。


 よくよく見てみれば、そこには全身血だらけのメイクを施した、赤ん坊のお人形が座しているではないか。


 ……あっ、なるほど、そう言う事ね。どちらにせよ、マジもんの電波な人に変わらないわ、このお(かた)は……。


「ああ、五体が真っ赤っかで、まさしく赤ちゃんです、と(おっしゃ)りたい訳ですね。こりゃあ、一本取られましたな……って、やかましいわ! (笑)」


 そんな感じで、僕は笑って誤魔化(ごまか)しつつ、狂気渦巻くその場より、大声で南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)南無妙法蓮(なむみょうほうれん)華経(げきょう)を唱えながら一目散(いちもくさん)に逃げ去った。←超ノリノリですやんか(笑)

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