第七殺
セイクヴォルグは笑っていた。戦うことが楽しいと言わんばかりに。もしかしたら俺も似たような表情になってるかもな。
それよりもなんで狼の顔で表情がこんなにはっきりわかんだよ。すげえ技術使ってんなエレファン。
「さっさと殺せ。俺はもうスタミナが切れて動けねえんだよ」
俺がそういうとセイクヴォルグの顔は笑うのをやめて戦闘時と同じ顔つきに戻っていた。やっぱりこいつ俺の言葉理解してるだろ。
セイクヴォルグは俺の目の前に立って左手を銃の標準のように俺の体に合わせて、右手を顔の横に構えてその手が光が集まっていく。俺の歌舞伎の決めポーズみたいな感じ(偏見)。その光はどんどん強くなっていった。絶対これ貯める系の攻撃だろ。通常攻撃でも簡単に死ぬ俺にこんなスキルまで使うなんてオーバーキルが過ぎるだろ。そんなことを考えていたらセイクヴォルグが今までの攻撃とは比にならない速度で貫手が放たれた。
「楽しかったよ。対あり」
動けたら避けれたな、なんてことを考えながらその手は狐の仮面ごと俺の頭を貫いた。当然俺は即死してポリゴンエフェクトとなって消えていった。
◇ ◇ ◇
『プレイヤーネームシャロードは死亡しました。デスペナルティ、一時間のステータス激減、戦闘スキル使用不可が課されます』
『プレイヤーネームシャロードのレベルが上がりました』
『《奇襲》のレベルが上がりました』
『《首狩り》のレベルが上がりました』
『《呪い》のレベルが上がりました』
『短剣熟練度が5に上がりました』
『短剣武技を獲得しました』
『片手剣熟練度が5に上がりました』
『片手剣武技を獲得しました』
『【称号】《月下狼の宿敵》を獲得しました』
『【スキル】《月狼流:溜光貫手》を獲得しました』
『【スキル】《月狼流:朧月》を獲得しました』
『【称号】《月下の祝福》を獲得しました』
『【スキル】《月下の輝き》を獲得しました』
『【称号】《無謀な挑戦》を獲得しました』
『【スキル】《格上上等》を獲得しました』
『【称号】《紙一重の回避職人》を獲得しました』
『【スキル】《回避職人》を獲得しました』
『装飾品《狐のお面》が月下の大精霊によって昇華され、頭装備《月下の黒狐面》に変化しました』
セイクヴォルグに負けて、リスポーンしたら、ウィンドウにやけに多い情報が表示された。とりあえずデスペナは分かった。今から一時間は戦闘は不可能と。まあ上から順番に見て行くか。
まずは、俺のレベルが14から23に上がった。スキルレベルはまあいい。次は熟練度が上がって、片手剣と短剣の武技が取得できた。性能はこんな感じ。
ヴォーパルスラッシュ:攻撃時、STRを1.2倍にする。さらに弱点にヒットしたときに+80%の追加ダメージが発生する(RT:20秒)
アサルトスラスト:前方に加速し、その次の攻撃の威力が1.3倍になる(RT:20秒)
普通に強いし使いやすい。このゲームの基本スタンスとして、モーションの強制をしていないのが売りであり、プレイヤースキルが響いてくるところだろう。一応、モーション補助が付く設定もあるらしいがほとんどのプレイヤーがマニュアル操作なのでどうしても、スキルが強化系になってしまう。
問題は次からだ。
月下狼の宿敵:[月下の人狼セイクヴォルグ]に自身の宿敵であるということを認められた者の証。宿敵の証として月狼流の技をランダムで二つ獲得できる。[月下の人狼セイクヴォルグ]とのレベル差が150以上の状態でセイクヴォルグの体力を8割以下にすることで宿敵として認められる。
月狼流:溜光貫手:溜めれば溜めるほどに威力が上がる貫手(RT:30秒)
月狼流:朧月:自分にヘイトが向いてるとき、幻の分身を出し、分身がヘイトを肩代わりさせることで自分のヘイトをリセットする(RT:60秒)
習得条件:[月下の人狼セイクヴォルグ]を倒す。または月下狼が与える称号によって習得できる
なるほど、溜光貫手はセイクヴォルグが最後に使った技だろう。朧月は見ていないが、セイクヴォルグが使う技の一つだろう。そして、習得条件を見る限り、セイクヴォルグを倒せればこの月狼流をすべて習得できるということだろう。それにしても、習得条件が鬼畜すぎるだけあって、能力は非常に強い。そもそもこの称号を獲得するためにまず150以上のレベル差で奴のHPを8割以下にするとか、普通に考えて無理だろう。俺自身でも少し驚いている。次だ、次。
月下の祝福:月下の大精霊に気に入られた者だけが受けられる祝福。月下の精霊に連なる精霊と契約した状態で月下の加護を受けた人狼との戦闘を30分以上続ける
月下の輝き:一分間STRを1.5倍する。月が出ている夜に使用すると3分間STRを2倍。AGIを1.5倍する。戦闘が終わるとRTが0になる(RT:9999秒)
称号の取得条件の月下の大精霊についてはよくわからないが、ノワールがその精霊に連なる精霊なのだろう。そしてスキルの月下の輝きは戦闘中に一回だけ使える超バフスキル。使えばウルト〇マンの如き力が手に入ると。あれって、戦闘前にカップラーメンにお湯を入れてから行けば帰ってきたときにはちょうど食べごろになっているよな?まあそんなどうでもいいことは置いておいて、すげえスキルをもらった。月がなくても一分はSTRを1.5倍するというかなりシンプルに強い効果だ。俺的にはすごくありがたいスキルだな。それでは次に行こう。
無謀な挑戦:レベル差が100以上の敵に挑戦する
格上上等:レベル差が50以上の敵と戦闘する時、一番高いステータスが1.2倍になる
これはまあ、ボス戦が少し楽になるくらいだろう。次だ。
紙一重の回避職人:紙一重で攻撃を一つの戦闘で20回躱す
回避職人:敵の攻撃の軌道を視認できる(RT:30秒)
簡単なお助けスキルだろう。初見の攻撃が躱しやすくなってより攻撃をくらうリスクを減らせる。そして問題の最後の報告だ。装飾品であるお面の昇華とはどういうことだろうか。
月下の黒狐面:月下の大精霊によって昇華させられたお面。Lvが存在し、Lvが上昇すれば性能も上がる。レベルは《錬金》の《合成》によって素材を合成することでLvを上げることができる DEF+50 STR+5% 耐久値:- EXP:0/100 【スキル】《精霊憑依》
精霊憑依:仮面に月下に連なる精霊を憑依させることで、契約精霊固有のスキルを扱うことができる。このスキルを発動させると精霊は戦闘を行えなくなる。戦闘が終わるとRTが0になる (RT:9999) ([黒狐ノワール]の憑依で使用可能になるスキルは《狐火》《天眼》)
こういうのって普通武器につける能力じゃね?確かにあの時武器はなかったけど、さすがにお面が成長する系の装備になるとは思わなかった。ただまあ性能自体は悪くないのでありがたく使わせてもらおう。Lvが上がれば新しいスキルを使えるようになるかもしれないし。
それにしても、セイクヴォルグに出会ったときは運が悪いと思ったが蓋を開ければいいものばかり手に入ったし、セイクヴォルグを殺すという一先ずのこのゲームの目標ができた。とりあえずデスペナの一時間は今まで触っていなかった《錬金》を使おう。トゥルムには悪いが、また一時間くらいは別行動としよう。まあその前に連絡を入れなければ。
シャロード:死んだ。夜のランダムエンカボスに出会った。頑張ったけど殺された
トゥルム:あー。それは運が悪かったね。逆によく2時間も耐えられたよ
シャロード:それでデスペナが1時間入ったから一時間別行動にするか?俺は錬金スキルを試そうと思ってるが
トゥルム:わかったよ。今はパーティー組んで遊んでるからまた一時間後ね
シャロード:ああ。また一時間後な
これで良し。それじゃあ、さっそく錬金を試しに行きますか。
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