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第四殺

「影道もエレファン始めたんだろ?今どんな状況よ」




 あの後、結局真桜は自分の欲望に負けてゲームを続けたみたいで今日の朝は大変だった。そして今俺に話しかけてきているのは俺の数少ない友人の一人である御堂春明(みどうはるあき)だ。こいつは発売日からエレファンをやばいくらいにやっている所謂ガチ勢というやつだ。




「まだ最初の街でレベル上げ。とりあえずエリアボス倒して次の街に行って、それからどうするか考えるつもりだぞ」


「なるほど。なら早くセカンダルに行くんだな。セカンダルでクエストが解放されるからそれをこなせばいいぞ。ファーストリクスは言ってしまえばチュートリアルステージだからな」




 そういえばクエストがなかったな。次の街で解放されるのか。




「わかった。情報感謝」


「おう。今日と明日は予定があるから一緒にはできないが、まあまた今度一緒にボスにでも行こう。レイドボスを二人で攻略!なんてのもやってみたいしな」




 それは可能なのだろうか?だがまあ、それも楽しそうではある。何より動画のネタになるしな。




「レイドボスもいいが俺はやっぱりPvPのほうがしたいな。トップ層は結構強いのか?」




 やはり、ゲームはモンスター相手も面白くないわけではないが対人戦が一番胸躍るものだ。




「ああ。めちゃくちゃ注目されてるゲームだからな。いろんなゲームのプロやら配信者やらがたくさんいて、意味わかんねえ動きばっかだよ。このゲームには【誓い】があるだろ?あれのせいでほかのゲームの技術やら特性、そのプレイヤーの得意技を疑似的に真似できるわけだからそれはもうすごいことになってる。お前でも苦戦するんじゃないか?」




 それを聞いて俄然としてやる気が出てきた。すごく面白そうだ。下手すれば今までしていたどの格ゲーよりも対人戦という意味では面白い気がしてならない。




「待ってろ。すぐに追いついてぶちのめしてやる」


「対人戦は苦手なんだよ。まあ、何人かお前の相手になりそうなやつを見つけておく」




 俺のために強い人を見つけておいてくれるという春明に感謝して、終業式が始まるまでエレファンのことを話していた。




◇ ◇ ◇




 何事もなく終業式は終わり、学校の誰もが待ちわびていた夏休みが始まった。宿題さえなければ完璧なのだが、面倒だが早めに終わらせてゲームに浸っていたい。そんなことを思いながらエレファンにログインしている。




「今日はエリアボスさっさと倒して次の街に行くぞ」


「おー!」




 昼食を食べて、トゥルムと広場で合流して言う。聞けば昨日新しいスキルが楽しすぎて調子に乗ってモンスターを狩りまくって少しレベルが上がっている。ちなみに強い敵と戦いたくて夜の時間にフィールドに出て、超高レベルの徘徊モンスターに会って瞬殺されたらしい。エレファンでは六時間が一日のペースで進むので結構早くに朝から夜になる。これは夜しかできないプレイヤーでも朝から昼にかけてのモンスターと戦えるようにと配慮した結果らしい。




「それでボスの情報はあるの?」




 ボスは次の街につながる道を陣取っていたのを確認しているのでそこに向かって歩いている。




「いや、特に調べてない。昨日見た通りのただでかいだけの狼ってことしか知らない」




 さすがにチュートリアルステージのボスをそんなに強くするとは思えないので調べる必要はないと思う。もし負けたらその時に調べればそれで済む話だ。




「じゃあ初見攻略だね。でも私たちが見たときボスのレベル20くらいだったよね?せっかくだしそれぞれソロ攻略してみない?」




 確かにレベル的には一人でも問題ないだろう。ソロでやりたい気持ちもわかる。普段はMMOをしないとはいえ俺もゲーマーであると自負しているのだからそう思わない方がおかしいというものだ。




「そうだな。お互いのスキルを見せるのにもいい機会かもな。ソロは俺もしたいし」




ということでソロでボスの相手をすることになった。




「順番は俺からでいいか?トゥルムは初見の技は苦手だろ」


「そうだね。初見でやってみたいところではあるけど行動が分かってれば楽になるしそっちの方が確実だね」




 しばらく歩いて、ボスが見えてきた。見れば、俺たちよりも先に戦士二人の魔法使い一人の三人パーティーが戦っていた。これで俺も初見ではなくなってしまう。


 でかい狼改め、ブラッドウルフと表示された狼は片手剣と片手盾を持ったプレイヤーに飛び掛かってお手のように前足を振り下ろし、それを盾で受け止めてその隙にもう一人の剣士と魔法使いが攻撃を仕掛ける。攻撃を防いで攻撃をするというセオリー通りの戦い方をしている。今のところは安定している。だが、ブラッドウルフが瀕死の状態になりあともう少しでこのパーティーが勝つ、といったところで変化が起きた。追い込まれた狼が遠吠えをしたと思えば狼の体を黒色のオーラが溢れてきた。俗にいう発狂モードという奴だろう。内容自体はステータスの大強化といったところだろう。ちなみにプレイヤー側もそこそこ体力が削れてしまっている。回復アイテムを使ってそれなりに回復をしているが如何せん、攻撃を受ける回数が多い。結果、かなりギリギリの戦いとなっていた。もうすぐ倒せると思ってかなり気を抜いていた三人が気を引き締めなおしてしっかり対応していた。最後は盾役の戦士が狼の攻撃をパリィして全員のスキルで倒していた。




「それじゃあ、行くか。って言っても俺一人でなんだが。面白いことしてやるからよく見とけ」




 前に挑んだパーティーがボスがいたところを通り抜けてすぐに湧きなおしていた狼に向かって歩いて、トゥルムに宣言してから行く。




「うん。楽しみにしてるよ」




 一旦ソロで挑むためにトゥルムとのパーティを解除して狼の前に出る。ほんとは奇襲したいところだがボス戦が始まらなければいけないので仕方なくボスエリアに入る。それに今回は《疾風迅雷》を生かした戦いをするつもりなので暗殺的な戦いにはならないし、しない。




「早速かかって来いよ。犬っころ」




 俺の挑発を理解したのかはわからないが狼が遠吠えをして俺に向かって駆けてくる。そのスピードはかなり速く、その勢いのまま飛び上がって噛みついてきた。その噛みつきはかなりの高さがあり、思いっきり俺の頭にかじりつくつもりで飛び掛かってきている。それは普通に考えて横に躱すか受け止めるの二択だろう。だが俺はそこであえて後ろに体を倒してその首に軽く撫でるように短剣を振るう。首が弱点とはいえ、かなり軽い攻撃であったためあまりダメージは入っていない。だが、これで攻撃力とスピードが上がる。そして俺の上を通り過ぎって行った狼が首から赤いポリゴンエフェクトを出しながら俺を警戒するように体勢を低くして俺に攻撃をしてくる準備をしている。今回の作戦は狼の攻撃をすべて回避と同時に攻撃を加えるスタイルで行くつもりだ。めっちゃ攻撃を躱して、一撃で決めるのもロマンではあるが今回の作戦のほうが魅せプな気がする。




「ははっ、この程度か?」




 この回避と同時に攻撃を加えるのを、何度か繰り返していると俺が自分から攻めることがないからなのか、狼が待ち状態になった。そこで、最初の挑発が効いたのでもう一度挑発する。そうしたら狼ははじめと同じように怒りをあらわにして襲い掛かってくる。かなり攻撃力も上がっていそうだからそろそろ発狂モードに入ってもおかしくないはずだ。そう思っていたらやはりこの攻撃で発狂モードに入り、黒いオーラを纏った。確かに早くなったがもともと直線的だった攻撃がさらに直線的になった。突っ込んでくる狼の引っ掻きを回避すると同時にその足の付け根に攻撃を加える。




「これで最後だ」




 狼の体力を考えるにこれが最後だ。ここが一番の魅せプどころだ。俺は今まで自分から仕掛けることなく後の先をとってきたが最後だけは俺から攻撃したかった。なぜか?それは突っ込んでくる俺に対してこの状態の狼ができることは躱すか俺に攻撃することだけだろう。攻撃してくるなら俺はそれを回避しつつ攻撃するだけだ。


 そして俺が狼に突っ込み、狼がとった選択は回避だった。俺が短剣を逆手に構えて走っていったがそれを見て、狼は横に大きく跳んで回避しようとする。それを確認して、もう片方の手に握っていた短剣を狼に向かって投げる。これも狼はギリギリで回避して見せた。野生の勘だろうか?俺の攻撃を見てなかった。しかしそれで体勢が崩れてしまっている。このままもう一本の短剣を投げれば簡単に決着はつくだろう。だがそれでは面白くない。最初に投げたのも掠る程度の攻撃だった。俺は上がったスピードを最大限発揮するためにできる限り体を前に傾けて全力で走り出す。それだけで狼の目の前まで迫ることができた。狼はまだ体勢を整えられていないため隙だらけだ。しかし狼もただやられるつもりはなく、無理な体勢のまま噛みついてきた。最初と違って狼の狙っている位置はかなり低い、当たれば腰くらいだろう。俺は体を横に少しずらして狼の首に攻撃を叩き込んだ。狼はポリゴンが砕け散るように消えていった。疾風迅雷の能力の上昇値は思ったよりも高いかもしれない。それよりも消えていった狼に感謝しないとな。例えモンスターだろうと一対一で殺しあったのだ。礼を欠かすことはない。まあ、少し煽っているように聞こえるかもしれないがこれは俺がゲームを初めてからの心がけのようなものだ。




「対あり」

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