第三殺
あの後、一時間くらいレベルを上げて街に戻ってきた。レベルもそれなりに上がってスキルレベルも少しだけ上がった。ステータスも割り振り、今のステータスはこんな感じだ。
Name:シャロード
Lv :12
HP:100
MP:20
STR:600
VIT:0
INT:0
DEF:0
DEX:50
AGI:500
LUK:100
【スキル】(所持スキルポイント:22)
《潜伏Lv:5》《鷹の目Lv:5》《呪いLv:3》《首狩りLv:3》《奇襲Lv:2》《錬金Lv:1》《弱点感知Lv:-》
【武器熟練度】
《片手剣熟練度:3》《短剣熟練度:2》《弓熟練度:2》
【称号】
《首狩る者》
首狩る者:一度も被弾せずに50回連続で弱点に攻撃する
首狩り:弱点ダメージ+3%
習得条件:称号《首狩る者》の取得
奇襲:認識されていない状態で攻撃を当てた時のダメージ+5%
習得条件:認識外からの攻撃で敵を30回連続でキルする
新しく手に入ったスキルがこんな感じで、スキルポイントを使ってスキルはまだとっていない。最初のスキル選択の時よりもレパートリーが増えている。スキル選択の時に表示されていたのは消費スキルポイントが3以下のスキルばかりだった。ステータスはもちろんSTRとAGIにほぼすべてを割り振っている。今後も装備条件が満たせない場合以外はこの二つのステータスを上げるつもりである。獲得できるステータスポイントはレベルが一つがるごとに50ずつ、スキルポイントは2ずつである。
そして今、俺とトゥルムは街に戻って精霊王を祀る教会のようなところに来ている。ここでは精霊王に何かしらの誓いを立てることでその誓いにふさわしい自分だけのスキルを入手できる。普通はログインしてすぐに来るべきだったのだろうが俺たちは一番の見どころともいえるこのシステムのことを忘れて狩に出かけてしまったわけだが。この誓いというのは割かし何でもいいらしい。例えば、「仲間を守る」という単純な誓いでもいいが「回避をすることなく仲間を守る」というような自分に制限をかける誓いほどデメリットもあるが効果の強いスキルが手に入ることが分かっている。
「それでは精霊王様への誓いを行います。どちらから始めますか?」
この教会にいた神父さんみたいな人が精霊王の像がある礼拝堂に案内してもらって俺とトゥルムのどちらから誓いをするのかを聞く。
「私からします」
これはあらかじめ決めていた。すぐに答えたトゥルムは神父さんに言われたとおりに精霊王像の前に膝を地面につけて跪いた。
「それでは誓いを」
神父さんが少しトゥルムから離れて言う。
「私は物理攻撃をしないで最強の魔法を使います」
トゥルムの縛りは物理攻撃を禁止すること。この好きな武器を選べるゲームにおいて武器を杖の一種類に限定する制限はかなりきついと判断されるのではなかろうか?トゥルムにとっては魔法以外は使う気がないらしいから本人にとってはそんなにきつい制限ではないだろうが。特にトゥルムに変化と言えるものはなく誓いを終えた。新しいスキルの確認でメニュー画面を見ている。
「次は俺だな」
「それではトゥルムさんと同じようにこちらに跪き、誓いを立ててください」
神父さんに促され、トゥルムと同じように跪いた。
「それでは誓いを」
トゥルムの時と同じ言葉を口にする神父さん。
「俺は敵の攻撃に当たることなくスピードと攻撃力で敵を殺します」
俺が作った制限は攻撃に当たらないこと。欲したのは攻撃力とスピード。誓いを立てて少ししてメニュー画面が新しいスキルを取得したことを告げる。表示された新しいスキルはこんな感じだ。
疾風迅雷:攻撃を回避するごとにAGIとSTRが上昇する。攻撃に当たるとバフが無くなる。加えて被ダメージ量が二倍になる。
普通に考えて被ダメージ量二倍は痛すぎるがまあ攻撃に当たりさえしなければいいのだ。それよりもこの制限だとかなりの上昇率が期待できる。それにこのスキルはパッシブで使いどころを選ばないのも強い点だろう。
「どうだった?かなりきつそうな制限つけてたけど」
誓いが終わって、この教会にもう用はないので教会から出て隣を歩くトゥルムが聞いてきた。
「大当たりだよ。敵の攻撃を躱せば躱すだけSTRとAGIが上がり続けるって言うスキルだ。少なくとも俺にとっては大当たりだよ。そういうお前はどんなスキルだ?」
誓いの後、かなり嬉しそうな顔をしてたが。
「当然大当たり!その戦闘中に物理ダメージを与えてないことを条件に発動できる超高威力の属性の無い魔法をもらったよ。しかも自分のHPが低ければ低いほどこの魔法の威力も上がるんだよ!そのせいでちょっとはDEFとか装備をしっかりしないといけなくなったけど……」
それは仕方がないことだろう。しかしこの魔法はどれだけの威力が出るのかが気になるところではある。まあそれはボス戦に期待だな。
「それで俺は武器屋に行ってそのまま宿でログアウトするつもりだがトゥルムはどうする?」
そう言った俺をトゥルムが信じられないとでもいうような顔で見てきた。
「な、なんで?まだやらないの?」
「何言ってんだ。明日も学校はあるんだぞ。明日は終業式なんだから明日からは存分に遊べるだろ?万が一遅刻したらどうするつもりだ?」
今日が授業が最後だったからもう夏休みに入ったとでも思っていたのだろうか?そんな気がする。
「そ、そっか。それじゃあもうちょっとだけ狩をして、新しい魔法を試したら寝るよ。まあ、寝坊してもシャロが起こしてくれるでしょ?」
それはそうだが、あまり不健康な生活はするべきではないと思うぞ。
「それはそうだが、あまりやりすぎるなよ。肌が荒れても知らないからな」
とは言ってみたがこの真桜という女はなぜだか全く肌が荒れないし荒れたところを見たことがない。ずっと異常なまでにきれいな肌をしている。
「そ、そうだね……。気を付けるよ。じゃあまた明日ね」
そう言って少しの時間も惜しいのか全力で走ってフィールドに出て行った。その背中を見送って俺も武器屋に向かった。
◇ ◇ ◇
「らっしゃい!何を探してんだ?」
武器屋に入れば店主と思わしきマッチョが俺を出迎えてくれた。
「短剣を二本。片手剣を一本見させてほしい」
俺がそう言うと、店主が何本か剣を俺の前の机に並べる。どの剣も能力こそそこまで変わらないが丁寧に作られていていいものだと思う。
「気に入ったのはあるかい?それとも素材があればできるのは先になるが俺が作るぞ」
店主はそういうが、あいにくと武器になりそうな素材は持ち合わせていない。さすがにスライムとゴブリンの素材で武器は作れないだろう。今は耐久力ギリギリの初期装備の代わりになればそれでいい。
「そうだな。この剣を三本もらう」
俺が手にしたのは初期装備より少し性能が上の鉄の片手剣一本と鉄の短剣二本を買った。そうして武器屋を出て、宿屋に入ってログアウトした。
読んでくれてありがとう