第十殺
PKたちを倒して、街に戻ってきた俺は、とりあえずトゥルム達三人と合流するべく、街の入り口に向かった。トゥルムに入り口のすぐ近くで待ってるとフレンドチャットで知らせる。
「あ、いたいた!おーい」
数分ほど待っていれば、トゥルムが俺を見つけて手を振ってこっちに来ている。当然2人も一緒にいる。
「あ、あの!さっきはありがとうございました!その……私は[リッカ]といいます」
会話できるくらいには近づいたところで、トゥルムとパーティーを組んでいたプレイヤーの1人、リッカと名乗った黒髪のショートヘアの女の子がお礼を言ってきた。
「助かった。ありがとう。私はキョーカ」
もう一人の青髪のキョーカと名乗るポニーテールの子がリッカに続いてお礼を言った。
「気にしなくていいよ。トゥルムがSOSなんて出してきたから何事かと思って駆け付けただけだから。俺はシャロード。よろしく」
「それよりも、シャロは2人を見てなんとも思わない?」
不思議なことを聞くなぁ。確かにどこかで見たことあるとは思うが、それ以外はかわいい、とかか?
「しいて言うならどこかで見たことある気がする。もし見た目の感想を求めているなら二人ともかわいいと思うけど」
俺の答えにトゥルムは諦めの様な、知ってた、とでも言いたげな顔になってた。リッカとキョーカの2人は軽く信じられないとでもいうような顔と、少し恥ずかしそうな表情になっていた。
「やっぱり覚えてなかった。2人は私たちと同じクラスのクラスメイトなんだよ?それに2人ともかわいいから他のクラスでも有名なんだよ?」
あぁ、だから見覚えがあったのか。まさかクラスメイトだったとは。これは悪いことをしたな。
「そうだったのか。すまなかった。でもこれで2人のことは覚えたから大丈夫だ」
一体何が大丈夫なのかはわからないがとっさにそう返した。
「別にいい。あなたはクラスのみんなに興味なさそうだった。それにあなたはなんだか近寄りずらい」
初対面だがなかなかに手厳しいことを言ってくる。まあ事実なだけになんとも思わないが。
「キョーカ!?礼でしょ?!え、えっとキョーカがごめんなさい」
なぜか、発言したキョーカではなく代わりにリッカが俺に謝罪を入れた。
「事実だと思うから、気にしなくていいよ。それよりもトゥルム、腕のいい鍛冶師の知り合いはいないか?セイクヴォルグと戦って武器が全部壊れたんだよ」
俺の発言に少し疑問を持ってすぐに納得したように大きく頷いた。
「ああ、だからさっき素手で戦ってたんだね。煽るために舐めプかましてるのかと思ったよ」
まあ、半分くらいはその気持ちがなかったと言えばうそになる。
「まあいいや。鍛冶師でしょ?今ログインしてるから大丈夫だと思うよ」
どうやら心当たりはあるようだ。トゥルムはいろんなMMOをやってるからこっちの界隈ではかなり顔が広いらしい。俺もかなり顔は広い方だとは思うがこと、MMOとなると俺も少ししか知り合いがいない。
「よかった。今から紹介してくれないか?二人も戦闘後だから一緒に行って損はないだろうがどうだろうか?別のことがしたいなら無理は言わないが」
「私は大丈夫です」
リッカは返事してくれた。キョーカは返事はしてくれなかったが手で丸を作っているのでOKということだろう。
「それじゃあ行こうか!」
◇ ◇ ◇
トゥルムの紹介で俺たちはあるプレイヤーのもとを訪れていた。その人のプレイヤーネームは[ヘファイスパイス]。鍛冶の神ヘファイストスをもじった名前だろう。それはまあ気にならないわけではないがそれ以上に気になるのはこのプレイヤーの姿にある。トゥルム曰く、怪しさはマックスだけど鍛冶の腕もマックスらしい。そんな彼の格好はというと……まず頭は髪の毛がない海外映画の軍人の様な肌の色ときれいなスキンヘッド。そして、服装はたくましすぎる腕が目立ちまくる半裸エプロン、下半身は短パンに靴はビーサンだ。もはや怪しいというよりもただの変態のようだ。
「こんにちは、ベイビーちゃんたち。私はヘファイスパイスよん。私のことはヘファちゃんとでも呼んでちょうだい。私は鍛冶と裁縫の2つができるから、武器と防具なら何でも任せてちょうだい!」
そして彼?はオネエさんだった。はっきり言って、キャラが濃すぎて頭痛が痛いみたいなおかしなことになってしまいそうである。ただ、こんな見た目でも腕は超一級というのだ。世の中には不思議な人もいたものだ。
「わかった。ヘファちゃんと呼ばせてもらうよ。じゃあ早速で悪いが、とりあえず片手剣を1本と短剣を2本。それと、防御力は度外視でいいがこの狐面に合う防具を見繕って欲しい。金なら心配しなくていい。少し臨時収入が入ったからな」
まあ、変態といっても前世からこういった輩はいた。しかもこういう個性しかないような奴らは自分の中に揺るがないモノを確実に1個は持ってて、なぜだかその技術は飛びぬけている。簡単に順応した俺にリッカとキョーカが驚いている。ちなみに、臨時収入というのは、もちろんさっきのPKたちのことだ。さすがPKで他人の金を奪いまくっている奴らだ額が違う。
「任せなさいな!武器は何か1つ使いたい素材を出してちょうだい。他の素材は私が持ってる素材を使ってあげるわ。防具は私が1から作ってあげるわ」
「そうだな。短剣はこいつを使ってくれ。片手剣は普通に鉄の剣でいい」
そう言って俺はインベントリから[血狼の毒爪]と、はじめのレベリングの時にエンカウントしたレアモンスターの[キラーホーネット]の針をヘファちゃんに渡す。
「この2つね。片手剣は鉄の剣を作るくらいなら私が作ったこの子たちから普通に買った方がいいと思うわ」
そう言って、ヘファちゃんはウィンドウを操作して売っている片手剣を見せてくれた。確かにわざわざ作ってもらう程のものではないか。
「……この剣にするよ」
俺が選んだ剣は[致命剣]という名の片手剣だ。効果は名前の通り、弱点へのダメージ増加。見た目は普通の剣。しかし、この剣は質がいい。攻撃力も高く、耐久値も優れている。ヘファちゃんが凄腕だというのは間違いないだろう。
致命剣:弱点に攻撃時、与ダメージを15%アップ STR+30 耐久値400/400
ちなみに鉄の剣の耐久値は100だった。4倍だ。
「毎度ありっ!大切に使ってちょうだい!この子と他の子たちも併せて8万3000Gよ!先払いできるかしら?できなければ後払いか、分割払いもできるわよ」
あ、危なかった。PKがいなかったら足りなかった。SOSに呼んでくれたトゥルムと俺のお金になってくれたPKerたちには感謝だな。ごちそうさまでした。
「ああ。大丈夫だ」
俺はウィンドウから支払いを済ませて、リッカとキョーカの後ろに下がった。
俺の次は2人の番だったが2人はお金もそんなにないので修理だけしてもらうことになった。修理はすぐ終わるようで、さっさとしてもらっていた。その時の作業を見せてもらったが、ヘファちゃんの信じられないほどの真剣な顔が今も頭から離れない。やっぱりこういうたぐいの人間はどの世界でも職人だ。
ちなみに俺の装備は明日には完成させるとやけに気合を入れていた。
読んでくれてありがとう




