ウルシは 負け続けていた
「・・・・・」
「・・・ヴァル殿下?」
「・・・いや、何でもない。」
自分とアン殿下が色々と話し込んでいる間、ヴァル殿下は、何故か兵舎のある方向をずっと見ていた。
何か・・・兵舎に用事でもあるのか・・・?
・・・もしかして、自分に気を遣って用事を後回しに・・・??
「ヴァル殿下、兵舎に用事があるのですか?」
「・・・いや・・・あぁ・・・」
そんな曖昧な返事だけを残して、城へと帰ってしまった。顎に手を当てて、何かを深く考え込んでいる様子。
「気にするな、ウルシ。ヴァルは時折、あんな感じになるんだ。
ああゆう時は、黙って見守っていた方がいいぞ。
変に話しかけると、「うるさいです」なんて、静かに怒ってくるんだよ。それで俺もよくアイツと喧嘩
した事があったんだ。」
そう言っているアン殿下だけど、その顔は何だか妙な嬉しさを感じられた。
『喧嘩』と一口で言っても、そこまで大袈裟な喧嘩ではなかったのだろう。兄弟なんだから、ちょっとした喧嘩があっても当たり前だ。
・・・そういえば、自分は全然『喧嘩』なんてしない。
そもそもそんな記憶もないし、そんな事しても無意味な事は、何故か幼い頃から植え付けられていた気が・・・
「兵舎の方もちょっと覗いてみるか?」
「はい、行ってみます。」
・・・そうか、もし姉さんが結婚したら、兄さんが『三人』になってしまうんだ。でも、悪い気はしないな。
むしろ、賑やかで楽しくなりそうな予感がする。
ウルシもまた これからの生活に胸を躍らせていた
ウジミヤの悲劇を胸にしまい込みながら
ウルシは今日も 歩み続けていた




