第二章 休息の合間に
「姉さん、『さんどいっち』って美味しいんだね!」
「そうか、ウルシ君も初サンドイッチなんだ。ウルシ君はどの中身が好き?」
「・・・『葉っぱ』」
ウルシ君の天然発言に、私は思わずポカンと口を開けてしまう。その会話を聞いていたアンと兄は吹き出す始末。
そして、私達の座るテーブルの周りで、同じく昼食をとっていた人達も、必死になって笑いを堪えている音が聞こえる。
私もまさか、『葉っぱ』なんて言葉が飛んでくるとは思わなくて、考えている事が全部噴火の如く吹き飛んだ。
「う・・・ウルシ君。それはね、『葉野菜』だよ。」
見かねて訂正したのは、バカラさん。でも確かに、ウルシ君の行っている事は分からなくもない。
山に生えている野草の中にも、葉野菜もどきはある。これこそ、田舎と都会のギャップなのかもしれない。
・・・あぁ、山に生えている山菜も、ちょっとだけでもいいから採ってくればよかった。
バカラさんも、ウルシ君を『弟』の様に慕ってくれている。
ウルシ君にとっても、バカラさんを歳の離れた『兄さん』と見ても差し障りは無いのかも。
これは、一人っ子故の『兄弟姉妹願望』の現れだと思う。
バカラさんにも兄弟姉妹はいないわけだから、『一人っ子×一人っ子』というのは、案外ピッタリなのかもしれない。
「アンさん、今のうちに聞きたいことがあるんですけど。アンさんのご家族って、どうゆう人達
なんですか?」
「・・・そうだな、今のうちに話しておいた方がよさそうだ。」
アンはカップに入っていた紅茶を飲み干して、「まず誰から話すか・・・」と、手を口に当てて考え込む。
野宿中に聞いても構わなかったんだけど、今の落ち着いた時に聞いておいた方が良いと思い、私は思い切って自分から話を切り出してみた。
何せ私は世間を全く知らない、アンが殿下である事自体も、説明しなければ分からなかったくらいだ。
だから、ある程度は知っておかないと、色々と怖い。私は一応・・・アンの花嫁『候補』でもあるんだから。
まだどうなるかは分からないけど、この国を治めている人の名前くらいは、知っておいても損はないし、里の皆にも色々と教える事ができる。
あ、もしこの縁談が上手くいかなかったら、王都である程度勉強して、里に戻ってから『教師』になるっていう道もアリかもしれない。
・・・今のところ、その可能性は薄いけど。
4人の珍道中は
笑いを交えつつも 勉強になる
そんな濃密な時間であった