ドラゴンの調査報告(1)
『変異種』
それは、通常のモンスターとは違う個体の事を指す。『違い』と一口で言っても、ただ外見が違うだけではない。
例えば、通常は体当たりしかしないスライムの中には、魔法を扱える変異種がいくつか確認されている。
ただ、スライムは割とどこにでもいるモンスターだから、スライムの変異種は確かに異質ではあるけど、そこまで大事にはならない。
例えるなら、人間の中に黒髪の人間と金髪の人間が混じって生活していても、誰も違和感を感じないのと同じ。
ただ、そのモンスターが滅多に見かけない、特殊で貴重な存在の場合、どこまでが通常個体で、どこまでが異質個体なのか、その目安がさっぱり分からない。
例えるなら、人獣の中でも黒い毛並みを持っている唯一の存在、ウルシだ。
人獣自体、まだあまり認知されていない種族だが、そんな俺達人獣の中でも、黒い毛並みを持っているウルシは、希少中の希少。
本人はそこまで気にしていない様子だったけれど、このドラゴンも、自分が異質である事を気にしなかったのだろうか・・・?
いや、そもそもドラゴンは群れで行動しないから、異質かどうかなんて、ドラゴンにとってはどうでもいい事なのかもしれない。
さっきから調べても調べても疑問しか出てこない。完全に出口の見えない調査に、もう全員がヘトヘトな状態。
俺だって、早く自分の部屋に帰って休みたい。数週間ずっと歩きっぱなしだったから、足の感覚が麻痺している。
でも帰って来た直後に亡骸の調査にも同行されるなんて、足だけではなく思考まで停止してしまいそうだ。
そんな状況を見かねたのか、ヴァル殿下が区切りをつける為に、わざわざ足を運んでくれた。
ヴァル殿下は、モンスターに関しての情報に優れている話を聞いた。殿下はモンスター研究員になる為の試験を受けて、一発で合格した程の逸材。
話を聞く限りでは、その試験の難しさは、兵士になるよりも遥かに難易度が高いそうで、大半の研究員は、何度も何度も試験を受けて、ようやく合格になっている。
中には、合格する為に十回以上は試験を受けている研究員もいる。
俺も訓練生時代、モンスターに関しての基礎的な知識は身に付けているけど、種類別の知識に関しては皆無に近い。




