ギンは ただ見守るしかできなかった
なのに、そんなドラゴンが何故、この個体に限っては、積極的に人を襲っていたのか。そもそも、何か襲う目的があったのか。
人を襲うモンスターに関しては、それほど珍しくもない。だが、ドラゴンに関してはまた話が別だ。
歴史的に考えても、人を積極的に襲ったドラゴンの話は全くと言っていい程聞かない。つまりこれは、明らかに異常事態。
一体どこから手をつければいいのか分からなくなるのも仕方ない事、ドラゴン以外のモンスターが、人間に危害を加える話も、無くは無いけれど・・・
「ギン。」
「はい、何でしょうか兵士長」
「陛下が君を呼んでいたよ。
「妹や弟の晴れ姿を『兄』が見ないわけにもいかない。」との事だ。」
『殿下』という言葉に反応したのは、俺だけではない。この場にいた全員が、一斉に手を止めて、俺を見ていた。
俺だって、一瞬兵士長の言っている言葉が理解できなかった。
殿下ならまだしも、この国を治める『主』であり、俺達兵士にとっては最も守らなくてはならな
い存在、国王陛下と顔を合わせる事ができる兵士なんて、滅多にいない。
兵士長は幾度か顔を合わせているらしいけど、俺にとっては初対面。落ち着いて目を合わせる事すら難しい。
ただ、陛下自らが俺を誘ってくれたのなら、行かないわけにもいかない。・・・それに俺だって、着飾った妹や弟を見てみたいし。
コンは俺と同じく、服装等に関しては無頓着だったし、ウルシもそこまで気を遣っている様子もなかった。
そんな2人が一流に着飾った姿は、想像できないからこそ見てみたいのだ。決して馬鹿にしたいわけではない。
「じゃあ兵士長も一緒にいきましょうよ、コンが喜びますよ。」
「えぇ! でも・・・」
兵士長が他の先輩兵士に目を向けた。すると先輩兵士の目からは、「行ってこい」という意思のこもった視線が送られる。
渋々ではあるけど、兵士長にも来てもらう。1人だけじゃ怖いからな。
ようやくこの行き詰った状況から抜け出せても
ギンに待っているのは 緊張の対面
彼の逃げ場は どこにもなかった




