ギンは ただ見守るしかできなかった
実はこのドラゴンによる被害は、あの町だけではなかった。貿易路にも度々現れては、最悪人を命を奪う事例もある程。
俺は当時、王都内を中心に警備していた事もあって、話だけは聞いていた。
それに・・・コンにはまだ言っていなかったけど、俺も実は本物のドラゴンを見るのは、あれが初めてなのだ。
あの時は咄嗟に刃を突き立てたけど、正直心の中は不安でいっぱいだった。
モンスターに関しての資料は幾度も読んでいるからこそ、ドラゴンが並みのモンスターとは比べものにならない存在である事は知っていた。
ドラゴンに襲われ、滅ぼされた村や町は数知れず、退治できた事例もほんのひと握り。兵士が何人束になっても、互角になれるか怪しい。
それくらい、ドラゴンという存在は、『脅威』の塊であった。その上、ドラゴンによっては、持っている能力も技量も違う。
それもまた、人間がドラゴンに敵わない要因の一つでもある。
一度ドラゴンを退治できた作戦を、再び別のドラゴンに活用させようとしても、全く上手くいかないのが当たり前なのだ。
そして、それらの資料を読んでいると、つい過去の記憶が甦り、あの時の親父の勇敢な行動力に、今でも憧れている節がある。
後から聞いた話だが、親父もドラゴンを見たのは、あれっきりだったそう。
でも親父は、逃げ出しもせず、呆然と立ち尽くすわけでもなく、俺を真っ先に助けられる精神力は、ドラゴンの脅威を凌駕していた。
ある意味俺にとって1番の目標は、兵士長ではなく、親父なのかもしれない。
その話を、幾度か同期に話した事があったけど、半信半疑な人が大半だった。何故なら兵士でも、ドラゴンを目にする機会が滅多にないからだ。
兵士長ですら、今回を含めてドラゴンと退治したのは、たったの3回程度らしい。
「本来ドラゴンは、積極的に人間へ危害を与えに来る事はない。山や空の向こうで飛んでいる姿
が見られる事だけでも、相当稀なんだ。」
いつだったか、そう兵士長が言っていた事もあった。




