第十五章 『フジの屋根』
「・・・ちょっとコン、大丈夫?
さっきから妙に息が荒いけど・・・」
「あ・・・はい・・・」
やっぱり女王陛下は鋭い。緊張と不安が入り混じり、とうとう普通の呼吸だけでも歪になってしまった私。
何故か今の私は、しっかりと呼吸ができているのか、自分自身でも分からなくなっていた。
ただ、単純に不安と恐怖だけが心を支配しているわけではない。その奥底には、陛下に会えるドキドキと嬉しさが潜んでいる。
多分、色んな感情が混じりすぎて、どれを表に出していいのか分からないのが、今の私の現状。
そんな私の背中を、女王陛下は優しく撫でてくれた。
その手はすごく柔らかくて、背中から伝う温もりは、生地の外側からでもしっかりと身に染みる。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。陛下が予定を早く切り上げたって事は、陛下自身も貴女に会ってみ
たいからこそなの。」
・・・それはそれで申し訳ない気持ちでいっぱいになります・・・
でも、女王陛下の仰っている事は、確かに的を射ている。早めに切り上げてくださったのなら、私としても、会わないわけにもいかない。
『フジの屋根』に近づくと同時に、段々と廊下が狭くなっているような気がする。もしかして、侵入者とかを防ぐ為の設計なのかもしれない。
つまり、この奥にあるのは、やっぱり国として大事な場所。そんな場所に足を踏み入れるなんて、『凄い』なんてものじゃない。
馬車に揺られていた時は、「自慢話にできるかなぁー・・・」なんて考えていたけど、軽々しく『自慢話』として持ち上げてもいけない気がする。
・・・でも、この出来事をきっかけに、王都にとっても、里にとっても、良いきっかけが起こる事を信じたいな。




