仕立て屋の娘は 勇気を振り絞る
「・・・ん?」
生まれた時からずっと仕立て屋の中で育っているから、相手の顔よりも相手の服装に着眼してしまうのは、完全に『職業病』としか言えない。
人獣自体、一体どうゆう場所で、どうゆう生活をしているのか、私も詳しくは知らないけれど、その服装も、今までに見た事のない不思議なデザインだった。
不思議・・・というよりは、ちょっと色っぽい・・・というか・・・
お洒落よりも動きやすさを重視している見た目をしている。その証拠に、彼女の足はまるで花の茎の様に細く長い。
女性であっても男性であっても、その足の長さは羨んでしまう。その上、上半身のバランスも完璧に近い。
私は今までに、何人かのお客さんの体型を調べてから、オーダーメイドの特注品を作った事があるけど、彼女の様な美しい体型の女性は、今までに見た事がない。
私も含め、当初は驚いていた全員の目線が、今度は一気に人獣の女の子へと向けられる。
それはもう驚きの目ではなく、憧れや惚れ惚れする眼差しへと変化していた。
その視線に気づいているのかいないのか、人獣の女の子は、兵士となった人獣の後ろへ隠れてしまう。
・・・ん??
何であの子、ずっと右手で胸元を握っているの??
怪我をしている・・・様子でもないし・・・
・・・もしかして
服が破れてる???
その考えに行き着いた私は、全力ダッシュで家まで戻って、店に置いてあったローブを引っ張って、すぐさま野次馬の中へと戻ってきた。
本当はお店に並んでいる商品なんだけど・・・
人獣の女の子が、抑えている胸元部分をずっと気にしている・・・という事は、『見られたらまず』いという意味。
仕立て屋の娘だから分かるのだ、抑えている胸部の布地が、切れている可能性が高い・・・という事が。
こんな大衆の目前で恥を晒したら、女の子にとってこの場所がトラウマになってしまう。
それは、せっかくドラゴンを倒した女の子による、裏切り行為にも近い。
それに相手は女の子、アクシデントになったら、心を病んでしまう可能性だって十分に考えられる。
それもまた、仕立て屋の娘であるからこそ分かる、『女の恥』というもの。
男の人はそれほど気にしないか、面白半分なのかもしれないけど、女の子は外見をバカにされたり笑われたりすると、それを一生根に持つ。
決して忘れる事のできない、大きな傷になってしまう。そんな話を、私は何人ものお客さんから聞いていた。
しかし それでも『職業病』からは逃れられない
コンがドラゴンを成敗した様に
娘にも娘なりの 『気遣い』があった




