仕立て屋の娘は 勇気を振り絞る
卿もまた いつも通りの穏やかな日常を迎えられると
誰もが思っていた
だが その予想を大きく上回った光景に 息を呑むしかなかった
「・・・じゃあ、あの噂は本当だったんだな。」
「まさか・・・あのドラゴンを人獣が仕留めるなんて・・・」
「兵士長も共に戦ったそうだけど、トドメを刺したのはあの・・・女の子みたいだぞ。」
「信じられないわ・・・まだ娘と同じくらいの歳に見えるのに・・・」
私も信じられないわよ。
見た目は私と大差ない歳に見えるのに、不思議な形の剣を携えた人獣の女の子の雰囲気は、兵士ですらも固まる程の凛々しさがあった。
私を含めた野次馬も、大声で彼女を疑うような発言はしない。聞かれてしまうと、タダでは済まされない、そんな威風を感じていた。
ずっと王都で安全な暮らしを謳歌していた私でも、何故か納得できてしまうのだ。彼女が自分達よりも遥かに大きなモンスターを倒した事が。
ドラゴンを倒した証明として、残った亡骸を持って来たそうだけど、その残骸だけでもかなりの重量と大きさがあるのか、引っ張っている馬の息も荒くなっている。
布を被せてあるから全体は見えないけど、布が風で捲れた瞬間、そのおぞましい中身が一瞬だけ確認できる。
あんな巨大で生々しい鱗を携えたモンスターと戦える度胸も凄いけど、残骸であの大きさ・・・
大半を『燃やしてしまった』と、人獣の兵士さんは言っていたけれど・・・
彼女、魔術師の様にも見えないし・・・
野次馬全員が、もう何から手をつけていいのか分からず、ただただ呆然とするしかない状況。
様子を見に来た兵士達ですらも、呆然と立ち尽くしている。
・・・にも関わらず、彼女と一緒に来た兵士長さん達は、黙々と入国の手続きをしている。
人獣の女の子は、ちょくちょくこちらを見ては、申し訳なさそうな顔をしていた。その顔は、『美人』というよりは、『可愛い』寄りだった。
でも、大人になってから『美人』になりそうな気がする。確証はないけど、何故か断言できる気がした。
でも、そんな人物がこの王都へ来た理由も謎ではあるけど、何故彼女と一緒に殿下まで・・・??
・・・もしかして、あの『噂』って本当だったのかな・・・?
殿下が花嫁候補を探す為に、時々王都を歩き回っている話は前々からあったけれど、その噂が、最近になって変化していた。
王都内だけではなく、その足を王都の外側まで広げている・・・という話。
噂でしかなかったけれど、今の状況を考えると、その噂が単なる『与太話』から『真実』へと変わっていく。
・・・じゃあ、あの人獣の女の子が・・・??




