第五章 大物との対決は 決まって難航する
コンは逃げ遅れてしまった女の子を守る為
〈宝剣〉を握りながら か細い体を奮い立たせる
大勢の大人に混じって聞こえた子供の泣き声の主は、この女の子だった。周りで見ている大人達も、恐怖で動けない様子。
・・・仕方ない、勝てるかどうかは分からないけど、逃げるわけにもいかない。このままだと、この町が荒らされてしまう。
それにドラゴン方は、完全にその気になってる。逃してはくれないみたいだ。
この事態を予見していたのか、私の手には、いつの間にか〈宝剣 キュウビ〉が握られていた。
・・・あっ、そうか。最初に宿屋でドンドン叩く音が聞こえた時、「泥棒・・・??」と思って、思わずベッドに立てかけていたキュウビを手に持っていたのを忘れていた。
良かったぁ・・・
こんな奴、素手でなんて絶対戦えない。あまり実践経験のない〈キュウビ〉で戦うのは少し不安ではあるけど、今更後に引けない。
私はゆっくりと〈キュウビ〉を鞘から引き抜き、静かに構える。それと同時に、周りのパニックが一瞬にして沈静化した。
泣き続けていた女の子も、私の刀を見て余計に驚いてしまっている。
小さな子供にとって、刀はナイフよりもよっぽど恐ろしく見えているのかもしれない。
しかし、躊躇なんてしている余裕はない。既にドラゴンは口から唸り声を漏らしている。私は意を決して、ドラゴンに直撃する。
そして、その腹を横にスパンッと切り付けた。すると、思いの外しっかり切れていた。
てっきりドラゴンが身に纏っている鱗の鎧は、刀では太刀打ちできないと思っていたけど、ドラゴンの腹には、しっかり真横にスーッと傷がついている。
・・・でもやっぱり、切り込み口がかなり浅い。思い切り切りつけたつもりだったのに、これでは致命傷にはならない。
そんな私を嘲笑うかの様に、ドラゴンは左翼で私を吹き飛ばそうとする。
しかしドラゴンは左腕を振りかぶったと同時に、刀を再び握り直して、今度は左翼の飛膜に穴を開けた。
すると、思いの外ドラゴンが苦しんでいる様子。飛膜にも神経が通っているのか・・・
〈キュウビ〉の刃先を見ると、そこには生々しい、深紅の血液がこびり付いている。それに一瞬卒倒しそうになったけど、ギリギリで持ち直した。
動物を狩るのとは、また違った感触だった。どちらかというと・・・モンスターの方が妙な気色悪さを感じる。
でもまさか、初対面のモンスターがドラゴンになってしまうなんて、呆れて笑いが込み上げてくるよ、まったく。
弱点とか何もかも分からない状態で始まった戦いだけど、案外自分が互角に戦えている事にも、正直びっくりしている。
これって・・・『主人公補正』・・・っていうヤツ??
辺りにはドラゴンが撒き散らした血液が飛び散り、ドラゴンは縦横無尽に暴れ始めた。




