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判決、異界流し。  作者: ポク塚
二章 電撃入社事変
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第三十二界:そんな育成ゲームも悪くないぜ

 おいおいおい。

 本当にさあ、何してくれてんの?

 せっかくあんなにたくさんの魔力供給源を集めたのに、バカみたいに食い散らかしてさあ。


 「まあ、多分こいつを食えばこのゴキブリ何体分かの魔力は得られるんだろうけど」


 それにしてもこのゴキブリ、ゴツい。ただの虫のくせに筋骨隆々という表現でも違和感がないほどだ。まああの中で最強のゴキブリなんだから、そんくらいはあるよなといった所だが。


 とりあえず、どうしようか。

 飼うにしても、こんな凶暴なやつを他のゴキブリと同じところには置いておきたくないな。

 実際もう一つの方の瓶の中のゴキブリは、みんな大人しくしている。

 見た感じ、まだ共食いもないようだ。


 でもいつかこっちの瓶の中でも、同じことが起こるかもしれないってんだよなあ。


 惨劇が起こった方の瓶のふたを開け、問題のゴキブリを取り出す。

 やっぱり、デカい。

 今まで見た中でもトップレベルだと思う。


 「いてぇっ!!?」


 こいつ、僕の指を嚙みやがった。顎の力は相当強いようで、人差し指の先っちょから、つーと血が垂れる。


 なるほどな……。僕に対して、そんなに忠誠心というものが無いみたいだ。

 現に、僕の掌から逃れようと懸命に暴れている。

 何もしないっての。ただ、いざという時に食べさせてくれるだけでいいんだよ。


 心なしか、逃げようとする力が少し強くなった。何なら今のうちに食べておいてやってもいいんだぞ? わかってるよな。


 「はぁー、大人しくしないならこうだぞ」


 もう片方の瓶から一匹ゴキブリを取り出し、食す。この間わずか1秒、最速のGチャージだ。


 この暴れ馬いや暴れゴキブリを、[魔力操作]を使って従わせる。

 おら、おら。

 止まれ。抵抗をやめろ。


 その瞬間ゴキブリはぴたりと動きを止め、先ほどまでの暴れっぷりは嘘のように静まり返った。


 「よしよし、やっぱこの魔法は使えるな……」


 ――かと思ったわずか数秒後、ゴキブリは再度暴れ始めた。急なことだったので対応できず、まるっきり力を抜いていた手に噛みつかれた。


 「えぇ? 何でだよ、いてて。何で思い通りに操れないんだよ」


 そうだおかしい。

 今Gチャージしたばっかりだから、この一匹くらいなら軽く20~30分は発動し続けられるはずなのに。


 そこで僕の目に、再度手で押さえつけられているゴキブリのたくましい姿が目に入った。そうか、こいつはこの瓶いっぱいのゴキブリを食ったわけだから。


 きっと持ってる魔力が大きすぎて、僕の未熟な[魔力操作]では簡単に操り切れないんだ。


 未熟って言っても、あのゴキブリの大群をも操れる実力はあるはずなんだが……それでもこのたった一匹のゴキブリを操れないとは。

 まああの時は魔力量が普通のゴキブリ一匹一匹を操作してたことになるから、大量の魔力を持つこの個体を操るのとはまた事情が違ってくるのかもな。


 詳しいことは分からないが、とにかくあれだ。


 こいつは、「Gチャージ用」として飼うにはかなり扱いにくいってことだな。


 「じゃあ、どうしろって言うんだよ。これだけの魔力の持ち主、放すってのもちょい勿体ないしさ」


 この界に来てからは、そもそも魔力自体貴重だから。資源は大切に使わないと。


 ……そうだ、いいことを思いついた。

 Gチャージをせずに、戦場で有効活用する方法。

 

 単純なことだ。こいつも一緒に戦わせればいいんだ。普通に考えれば、虫けらが人間たちの戦いに混ざれるはずがない。

 しかしこいつなら、僕が少しトレーニングや支援魔法で助けてやれば、即戦力にも成り得る。


 何たって僕は、魔法も知らなかった田舎のガキを、たった一年で副兵士長にまで育て上げたという実績を持ってるからな。


 「口だけで言っても、ただの夢物語」


 早速やっていこう、ゴキブリ軍人育成計画。

 うーん、今気づいたことだけど、いちいち「ゴキブリ」っていうのも面倒だな。


 名前決めるか。

 一応ペットだし、そんくらいは必要だろ。


 ここで僕に、嫌ーな記憶がよみがえってきた。そう、太郎である。すっかり忘れていたが、僕はこの間も一回ペットを飼おうと試みたのである。

 路地裏で捕まえたあのネズミのことだ。


 結局、間違って握りつぶしちゃったんだけどね。


 というかそう考えてみると、こいつ、太郎の時と若干似てるな。

 最初は食うために捕まえたが、途中で愛おしくなってペットにする。何の因果だろうか。


 「お前は、太郎みたいに簡単に死なないでくれよ」


 まあ、僕が殺したんだけどね。

 こいつのことは間違って殺さちゃわないように、気を付けるよ。


 名前は、太郎の生まれ変わりってことで。


 「お前は甲太郎だ。僕の勝手な都合で、お前には最強の虫けらになってもらう。よろしくな」


 そう言うと甲太郎は、思いっきり僕の親指を噛んだ。

 クソいてえ。


 「はあー。その闘争心は認めるわ」


 でも、ペットの分際で飼い主のこの僕にその態度はいただけないな……。いっちょ、きついトレーニングでわからせてやるか。

 

 だからといって僕が攻撃するのはNGだ。力加減を間違えて、また命を奪ってしまうかもしれない。

 そこで、甲太郎に最適な訓練相手がいるんだな。


 ここによお!


 共食いが起きていない方の瓶の蓋を開け、逆さにする。そうすることで自由を取り戻した約三十匹のゴキブリたちは、それぞれ思い思いの方向へ走り出した。


 「そうはイカの丸焼き、ときたもんだ」


 しかしそんなことは、逆さにする前から分かり切っている。最初から僕は、その中の一匹しか狙っていない。

 脚が数本とれた、やや弱った個体。

 懸命に走ろうとするそいつを即座に掌で覆い、そして口に運ぶ。


 [魔力操作]……そして、こいつら全員に[体力増進(フィジカルブースト)]。


 逃げていたゴキブリたちの動きが止まり、徐々に列を作り始めた。その列はやがて規則的な動きをして、行進をしだす。


 僕の最強の支援魔法をかけた、僕の思い通りに動くゴキブリ軍団の完成だ。


 さて、甲太郎よどうだ?

 こいつらは、お前がさっき虐殺したゴキブリたちとは一味違うぞ。とはいえ、お前もたくさんの同胞を喰らって魔力を増やした身……さて、どんな結果になることやら。


 左手でずっと握りしめていた甲太郎を、床に放つ。うし、準備は整った。


 さあ最強のG軍団よ! 甲太郎をヤれ!! ……と僕が命令を下す前に。甲太郎は既に、そいつらに襲い掛かっていた。

 僕が手を離した瞬間、一目散にゴキブリの列に駆けていったその姿には、誰しもが圧倒されることだろう。


 僕自身も、甲太郎の予想以上の軍人魂に、思わず感嘆する。


 行け、甲太郎。

 楽しい楽しい、育成ゲームの始まりだ。

 

 

(長いあとがきなので読み飛ばし可)


今回の話、ちょっと展開が早すぎたかもしれないです。でもまあいいです。テンポがいい作品なので。最近汚い話が続いてますが、筆者自身下ネタや汚いものが大好きな汚らしい人間なので、ご理解をお願いいたします。


あと遅ればせながら、4000PVありがとうございます! とても嬉しいです! なんて言いながら、正直これってかなり少ないですよね。初投稿が二月の終わりくらいなので、およそ五か月でまだそれだけって。言い方悪くなりますが、ゴミ小説じゃないですか。


夏休み中は二日に一回くらい投稿すると思います。見守っていてください。


ここまで読んでくださっている方の中でまだしてない方は、早速ブクマ&星五をしてわたくしを喜ばせてください。


短編読んでね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 普通共食いしたからっていきなり体でかくなるか?
2021/07/29 23:09 イナズマトゥエルブ
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