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判決、異界流し。  作者: ポク塚
二章 電撃入社事変
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12話 黄金と蒼の炎とユーリとおれ

12話を大幅改稿したものです。

あと、二週間くらい投稿が空いちゃったのはテスト期間だったからでした。

 止まれ。

 火よ、止まりなさい! 止まりたまえ!

 えぇーい!!


 神様おねがい。この火をとめてーー!


 頭の中で、何度も本気で命令する。

 信じてもない神様にも祈る。


 だめだ。こんなことしても何の意味もない。

 いくら止めようとしても無理だ、制御なんて少しも効かない。


 というかそもそも、そんなやり方わかんないし。魔法だって教わったばっかのおれにそんな初めてのこと、無理無理無理、無理だし。 


 火は、止まらない。

 いくら祈っても願っても、命令しても変化はない。


 勢いを落とすことなくおれの腕を這う蒼の炎は、残酷なほどに美しい……。


 なーんてキザなこと考えてるのは、恐怖を紛らわすために他ならない。変なこと考えてれば、つらさが軽減されるんじゃないかなんていう淡すぎる希望だ。


 でもこんなこと考えていても少しも気が晴れるなんてことはなく。

 というか熱い熱い!! こんな状況で落ち着いてられるかバカ。


 ふう。


 「……来るな来るなあ!! 助けてレオさん助けてよおおお!!」


 「お、落ち着けカナデ! 今なんとかするから、余計なことだけはするな」


 余計なこと、ってそんなこと言われても!!

 のたうち回るのは不可抗力だ!!


 腕を床に何度も打ち付ける。

 痛いけど、熱いほうがずっと辛い。じっとなんてしてられないんだ。


 そうして火が消えるとは思ってない。さっきからずっと暴れててなんとなく理解できた。この火は、今まで囲炉裏で見てきた火とはぜんぜんちがう。


 何が違うかって、具体的に言葉で説明すんのは難しいけど……まあとにかく火が強すぎる。

 

 「うわあっ、うわああぁっ」


 これで平気でいられるのは化け物だけだ。

 こんなん耐えられるわけないだろ!


 「まじで!! 死んじゃうよこんなのさあ!!」


 熱い、熱い!!


 「カナデ! 大丈夫!? 大丈夫じゃないよな!!? ……どうしよう、どうしよう!!」


 「ユーリも、落ち着け! とにかくカナデに近寄るな!!」


 …………。


 いや辛辣ぅーー!!

 近寄るな、ってさあ。

 こっちは今、現在進行形でめちゃめちゃ苦しんでるんですけど!? 転げまわってるんですけど!?

 

 そんな塩対応じゃ、おれまじで怒るよ!??


 「どうすれば……た、[帯魔]なんてしても意味ないだろうし。やっぱり助けを呼ぶしかない」


 「でも! そんなことしてたら、カナデが……」


 「わかってる! でもそれ以外に方法なんて考えつかない!!」


 何やらもめてるけど、とにかく早くおれを助けてくれよぉ!


 「ユーリ、一分以内に戻ってくると約束する。だから、余計なことしないでそこで待っててくれ」


 うそでしょ、一分? 

 短く聞こえるけど、短くないぞ!!


 「え! そんな……。何もしないで見てろってんの!?」


 レオさんはユーリのその問いに答えず、扉を開けて走っていった。ユーリはレオさんを引き留めようとして追いかけてったけど、レオさんの足にかなうはずもなくすぐに戻ってきた。


 「く、くうう熱いい」


 熱すぎる。痛すぎる。

 でも肘から先の痛みは、なぜかちょっとだけ治まってきた。……でもこれは、前にも経験したことがある。

 神経が、麻痺して感覚が失われたんだ。


 「カナデ。オレ、ここで見てろってさ」


 ユーリはへなへなと座りこみ、そんなことを呟いた。

 おれはなにか言おうと口を開こうとしたけど、なんか声を出すことが難しい。声が出せない、苦しい。


 熱気で息すらまともにできなくなってきてるんだ。


 「……そんなん無理」


 炎が肩まで上がってきた。

 ほっぺにも炎がチリチリ当たって、すげえ痛い。


 せめて顔は、って首を最大限まげて火から遠ざけてるけど、もうじきそれすら意味がなくなる。


 火の勢いがホントにえぐいんだ。


 「カナデ、ちょっと動かないで」


 ユーリはまた小さな声で……なんて?


 「じっと、してて!!」


 なんで?


 動かないで、って……なんだよ今更。無理だよ無理。普通に考えてじっとこれを耐えてるなんて、一秒でも無理だと思う。


 「ん? ちょっと待って。ユーリ、何してんの?」


 ユーリは深呼吸をするみたく胸をのけぞらせ、後ろに体重を預ける。レオさんに言われた「余計な事するな」は、もうユーリの頭から抜け落ちてるみたいだ。


 「ユーリ、いったい何を」


 「ぉぉおおおおーーっ!!」


 ユーリは後ろに預けていた力を一気に開放してその位置についてのかっこうから、走り出した。

 いつもおれとかけっこするみたく、躊躇ないスピードで。


 それも、こっちに向かって。


 いやいやいや。ほんとに何してんのユーリ。

 そのままのスピードでこっちに来たら、そんなんもうぶつかるしかないだろ。

 ……いや、マジで突っ込んでくる。

 

 「ぶつか」

 

 るね。


 「ぐへぇっ!」


 「ぐへええええ」


 ……当然訪れる、その強い衝撃。そしておれたちはまったく同時に苦しみの声を漏らす。


 ユーリの声は、おれの隣で聞こえた。

 ユーリは、おれの腕に抱きついていた。


 「……ユーリ! なにして……はなれ、離れろ……!!」


 ユーリを振り払おうと腕を振り回すが、焦がされた腕に力なんてもうほぼ残っておらず。ユーリは変わらず、腕にしがみついて離れない。


 「ぃいやだ! この火、オレが消してやる!!」


 無茶だ。

 さっきも言ったけど、この火は普通の火とは違う。おれたちが外から何かしたとこで、そもそも影響がないんだ。


 「ぅおおおお、ぅうううがあああ!!」


 ……と思ったけど、様子がおかしい。なんだかユーリの身体が黄色に光り始めた。

 そしてそれに呼応するように、蒼の炎はなんか、気持ち弱くなったような……。


 「……はあああああ!!!! た、『たいま』ぁああ!!」


 「ま、眩し」


 ユーリの叫び声でおれの耳が破裂する前に、ユーリの身体の黄色い光はさらに輝きを増した。


 「うわあああああっ!!」


 すごい勢いで火が引いてきた。

 シュウウ、という音をたてながら空気と同化していく炎。例えるなら、おれの腕が火を弾いているようだ。


 「ぅぐっ!!」


 その時おれの腕に、熱さとは違った衝撃が襲う。骨が軋み、筋肉が捻じれる。


 「ユーリ、お前……なにしたの?」


 何が、起こった。


 ただとにかく何かが、起こった。


 とにかくおれが分かることはこれだけ。ユーリの身体が光ったと思ったら、おれをさっきまであんなに苦しめていた炎が消滅したこと。


 ああ、あと。


 黄色い光は支援魔法の色だって、今思い出したことだ。


 目が回り、視界がぼやける。

 ユーリの声も、どんどん遠ざかる。

 

 おれは気絶した。


 「……さん、次……」


 「じゃあ……願いし……」


 いつから意識があったか分からない。おれは、いつのまにか覚醒し始めていた自分の脳を完全に無視し、目をつむったままでいる。


 もう少しこのままでいたいと自分に言い聞かせ、本当は目が覚めているものの眠りの世界に甘える。おれの朝はいつもこんな感じだ。


 あー身体がだるい。目え開けたくない。ふええ、眠い。

 考えているのは、そんなことばっかりだ。


 「カナさん、四番ベッドの方、点滴液補充お願いします。あっ、じゃあ私魔力ポンプ動かしとくのでそっちはお願いします」


 ここ、どこだろ。


 おれ確か、訓練場でレオさんと訓練をしてたような……あ、そんでユーリも一緒にやることになって。


 「了解でーす。じゃあ、私は引き続き魔疲まひの患者さんを」


 えーっと……なんか蒼い炎でて。そんでユーリがなんかすごいことして。


 そんで、どうなったんだっけ。


 「……やっぱり。先生! せんせーい! カナデさん、目を覚ましましたよー」


 誰この人。


 まあまあ美人なお姉さん。

 おれの名前、知ってるっぽいけど。


 「お、結構早かったねー。どれカナデ君、気分は?」


 誰かがが話しかけてきたので、急いで起き上がる。

 おれは、ベッドの上に横になっていた。


 この真っ白いシーツに、独特の硬さはおれの記憶にある。二週間前と同じ、病院だ。


 おれの顔を覗き込む、この爺さんがお医者さんかな? んじゃ、こっちのお姉さんは看護師さんか。


 「おーい? カナデくーん?」


 「あ、はい」


 手を振っておれの意識を確認してきた、お姉さん改め看護婦さんは常に笑顔。でも、こっちの緊張をほぐそうとしてくれてるのだとしたらちょっと逆効果かもしれない。むしろ緊張しちゃって、視線が定まらない。


 「どうだね、気分は」


 「はい、大丈夫です。あの、おれってどうしたんでしたっけ?」


 「ああ、大丈夫だよ。確か君は、魔力を身体に初めて通したんだったね?」


 「そうです」


 「うん。それがね、初めてにしては流れた魔力の量が多すぎたんだ。いわゆる魔疲だね。まだ身体がだるかったとしても、寝てればすぐ治るから。そんなに心配はいらないよ」


 「はあ。あっあのー、レオさんは」


 「レオさん? ああ総隊長、ついさっきまでここでカナデ君のこと見守ってたんだけど、なんか上司らしい男の人に呼び出されてね」


 ついさっきまで!?


 なんだ、もうちょい早く目え覚めてればよかったのに……。

 まあでも、うれしいな。


 おれのこと、心配してくれてたのかな。

 うれしいな。


 というか地味に驚いた。レオさんに上司なんて、いたんだな。

 てっきり「前線総隊長」なんて言ってみんなに頭下げられてるから、一番偉いのかと思ってたんだけど。


 やっぱりあのレオさんが上司に敬語使ってるとことか、想像できないんだよな。


 それと多分、その呼び出しってさ。

 あいや、だんだん思い出してきた。おれがなんか、イレギュラーな魔法使っちゃったんだ。レオさんがあんなに取り乱してるの初めて見たもん。


 それに、最後おれの火を止めてくれたユーリ。冷静に考えるとあれ、絶対なんかの魔法使ってたよな。あのときは火が辛すぎてあんまり考えられなかったけど、あの魔法もイレギュラーっぽくなかった?


 レオさんの支援魔法でも全然止められなかったおれの暴走する魔法を、なんかすごいことして完璧に抑え込んでたし。

 未知の魔法を制御した未知の魔法。これって強さ的な意味では、普通に考えてユーリのの方が上だよね。


 ああ、頭がこんがらがってきた。

 

 とにかく、おれたちはほぼ確実に、大人たちからたくさん調べられることになるんじゃないかということになる。


 何されるんだろ。


 ……人体実験、とか。


 いやいや。

 いーやいやいやいや。


 やめてくれよ、脳。

 勝手にやな妄想をするな。

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