11話 蒼
ちょっと遅れましたが、3000PVありがとうございます!!
最後に一個残っていたのは[状態異常回復]というまほうらしい。でもレオさんは、「この魔法は見せて分かりにくいし使いどころが限られてくるから今はまだいい」と言って説明を省いた。
「……ふうー。これで、一通り……終・了!」
大まかな説明を聞いた感じ。
単純に、支援魔法は、全体的にとても使いやすそうだ。
ユーリも同じことを思っているのだろう。
嬉しそうに頬を緩ませている。
「それで、どうやって教えてくれるんですか?」
「それはだな……一回、この魔法を使う感覚を覚えてもらう」
そう言ってレオさんは、ユーリの手を握った。
「じゃあ、カナデ。ちょいとこっちに」
言われるまま、おれは小走りで走り寄る。
何をするんだろう。
また怖いことじゃないといいけど……。
「ほっ」
レオさんは、ユーリの手を握ったまま魔法を使った。
すると今回は、レオさんではなくユーリの手が光り始め、そしてその光はまっすぐおれに届く。
きっと[帯魔]だと思う。
一度受けた、この体が堅くなる感覚でなんとなく分かる。
「……なんか、変な感じ……」
ユーリは、ぼーっとしている。
「いい感覚だぞそれ。覚えてるか、魔法使った感じ」
ここで、おれはレオさんがしようとしていることがなんとなく分かった。
要するに、ユーリを通じて魔法を使っていくことで、ユーリ自身にその「使用感」を覚えさせようとしているのだ。
「な、なんとなく覚えてる……かも」
「いいぞ。じゃあ、再現してみてくれ」
「い、いきなり!? できないよ……」
そりゃそうだ。
一度自分を媒体にされただけで、簡単にそんなことができるはずないだろ。
「いやできる! とにかく、さっきの感じを思い出して、再現しようとしてみてくれ」
「そこまで言うなら……ん~、ていっ!」
いきなりユーリがおれに向けて力を込めたけど。
なんか、起こったかな?
少なくともおれはなんにも感じなかったけど。
「……いよし! きっとうまくいっただろ! じゃあ、そりゃ」
いたい!?
何すんのさ!!
つー、ほっぺいたいー……。
レオさん、いきなりビンタはやめてくださいよお……。
「あ、あれえ? おかしいなあ? ごめんごめん」
「だから言ったじゃないですか! おれなんかが、一発で成功するはずないですよ。カナデ泣いてますよ?」
泣いてない。
痛いだけで、泣いてない。
「……いやあ~。てっきりこんくらい、一発でいけるもんだと……。ボクの時のは、偶然だったのかな……」
ん?
なんて?
「あのー……今、聞き捨てならない言葉が聞こえたような気が」
レオさんは、こんなことを一発で成功させたっていうのか?
「あ、いやいや。ボクもその時のことは覚えてないから、ただ聞いただけなんだけどね。なんせこんなに小っちゃい頃だからさ、ははは」
レオさんは、自分の腰より下で手をふりふりさせた。
いやそんなにちっちゃいころ、って……。
「はははまさかー」
「いやホントホント」
「はははははー」
「ホントホント」
「…………ホント?」
「ホントホントー。オヤジが、言葉より先に[種火]を教えてくれたんだって」
言葉よりも先にって。
どうかしてる。
ユーリだって、全然できてないのに。それも一発だなんて。
やばいだろ。
すごすぎだろ。
「……というか、そのお父さんもすごいですよね。そんな小っちゃいときに、そんなことをしようとするなんて」
ユーリが言ったことも確かにもっともだ。
どんな英才教育なんだろう。
「……まあ、ね。あいつ、魔法の腕だけは凄かったし……ボクを、自分と同じようにさせたかったんだろうな……」
レオさんはそう明るく言ったけど、その顔は明らかに暗く、うつむいていた。
お父さんのことが嫌いなのかな?
まあ、このことについてはもう深く聞かなくていいか。おれもそこらへんは、ちゃーんと大人なんだ。
兄ちゃんから、いつ使うか分からない敬語なんかも教わったしな。
「とりあえず! ユーリは、何回も練習だ! あとでまた媒体にするから、今はとりあえず自分に向かって魔法を試してみて!」
「そ、そんなんでできるもんなんですか……」
「やれば、できるっしょ。さあさあ、反復反復。徹底反復練習こそ至上じゃー」
「は、はーい」
ユーリは素直に、自分に掌を向けて「[帯魔]! [帯魔]!」とつぶやき始めた。
傍から見たらちょっと……な光景だけど、これが魔法を使えるようになる秘訣なんだ。きっと。
「さて。カナデ、待ちくたびれただろ。ようやくお前の出番だぞ」
「……はい!」
よっしゃ。
正直、楽しみだ。
ずっとまだかまだかとうずうずしてたんだ。
「じゃあ、[種火]な。えーっと……あ、ちょうどいい」
レオさんの隣の篝火の火は、少し弱くなっていた。
それを好都合に思ったようでレオさんは嬉しそうだ。
さっきユーリにしたのと同じようにしたレオさんは、篝火に向かって光を放った。
「ぅおっ」
つい、声を出してしまった。
さっき占望石を光らせたときと似たような感覚。
でも、やっぱりなんかちがう。
さっきより、たくさん体の力が抜ける感じ?
っていうか、体の中を熱いものが通り抜ける感じ。
くう……。
……おなかのあたりがちょっと熱い。
それにちょっと、疲労感というか、たくさん走った後みたいな感じがする。
レオさんが放った光は篝火に吸い込まれ、一瞬消えたと思ったら。
火が大きく、燃え上がった。
すごいや。
「これが、初級火魔法[種火]。この感覚、覚えて」
覚えて、って言われても。
ただ、体が熱くなったってことしか覚えてないんだけど。
あとは、手から反対側の手にエネルギーが通り抜ける感覚?
多分このエネルギーってのが「魔力」なんだと思うけど。
再現しろ、って言われたらちょっときついかも。
「ほら、うだうだ考えてないで」
レオさんはおれの背中をポンと叩いた。
……よし、だめもとでやってみるか。
どうせできない。
けど、挑戦するにこしたこたない。
「あ、そうだ。魔力をカラダに蓄えるとこまでは、さっきの占望石と同じ感じでいいよ」
なるほど。
えっと。
占望石の時は、確かこんなふうに……。
「大きく、息を吸って……」
すうー。
「左手から、魔力を……」
よい、しょー!
「……んで、右手に集める!」
おらあ!
「……お、おお! カナデ、いいぞ! ちゃんと右手に集められた! あとはそれを、いましたみたく火に変えるだけだ!!」
そんなこと言われても!
どうすりゃいい?
どうすりゃいい??
「体温上げるには……激しい、運動!」
ふおおおお!!
全力・腿上げ!!
「な、なにしてんのカナデ?」
「……いや……いいね」
おらおらおら!
おららららららららああーー!!
「はあ、はあー……」
汗がおでこににじんできた。
そろそろ……。
「今だ!! 篝火に解き放て!」
……りょう、かいい!
「はあっ! 初級火魔法[種火]!!」
レオさんの合図で右手に力をこめる。
今のおれの熱を、全部ここに集めるイメージで。
いっけえええ!!
……えええ!
ええ! ……。
「……だ、だよねえ」
まあ、予想通りというか。
案の定というか。
何も起こんなかった。
「はあ……」
ちょっと、手ごたえあったんだけどなあ。
うーん。
やっぱ、時間かかるもんなのかな。
「ドンマーイ。カナデ、それが普通だよ。一緒に、地道に行こうぜ」
ユーリが慰めてくれた。
やっぱいいやつだなユーリ。
うん、そうだな。
急ぐことない。
何もそんなに、焦る必要はないんだ。
「おうよ。反復練習だ。ユーリ、じゃあもう一回……」
「カナデ!! 違う! 魔法は成功だ!! 早く振り払え!!」
え?
突然、レオさんがこっちを指さし叫んだ。
確かに、ちょっと右手のあたりが……?
「……え」
うそでしょ。
確かに、成功してる?
というか……。
なにこれ。
「蒼い、炎?」
おれの掌からは、ねばねばした蒼い火が吹き出ていた。
その火はゆっくりと、掌から腕に巻きついて……。
あちちちちち!!?
「だから、早く振り払えって!!」
ぐわあああああ!!!!
燃える、燃える!!
腕が焼ける!!
どんどん蒼の炎は上に登ってきている。
おれの肌を、ゆっくりと焦がしながら。
「こんなん、今まで見たことない……。[状態異常回復]!!」
レオさんのその魔法は、全く効かなかった。
「クソッ! どうすりゃ……」
この場で、まともに魔法が使えるのはレオさんだけ。
そのレオさんの魔法をもってしても、この謎の蒼い魔法は止まらない。
あれ?
これ、ちょっとマズくない?




