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判決、異界流し。  作者: ポク塚
二章 電撃入社事変
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10話 支援魔法

某お笑いコンビをテーマにした曲と、それのMADばっか見てる。

めちゃめちゃエモーショナル。

 「よし。じゃあ早速、初級一次魔法の練習から始めるか」


 ええ?

 な、な、何て言った? 初級? 一次?


 聞き慣れない単語の羅列が、おれの耳を襲った。


 「ど、どういうことですか?」


 おれが訊こうとしたことを、ユーリが先に質問した。


 レオさんは、ちょっと困ったような顔になって、


 「あー。もしかして、そういうのも全部知らない感じ?」


 「わかんないです! そもそも、魔法自体こないだ初めて見て」


 「な、なるほろなるほろ。じゃあ、一から説明するから。耳かっぽじれ」


 レオさんは、また胡坐をかいて話し始めた。


 「えーっと。まずこの世界には、『魔力』というものが空気中にあります。そんで、さっきお前たちがやったみたく、それらをカラダに取り入れて」


 レオさんは、何でもなさげに魔力を掌に集め、そして前方に光を放出した。


 「うわっ!」


 その光はさきほどから少し弱くなってきていた篝火に飛び込み、見るまにその火は大きくなった。


 「……こんなふうに圧縮し、放出するのが魔法。ちなみにいましたのは、初級火魔法[種火]だね」


 「あ、あのー。その、初級とか、さっき言ってた一次とかは?」


 「ああ。それは、簡単に言うとその魔法の強さ的なものかな。例えば火系統の魔法だと、『一次』が火魔法、『二次』が業火魔法で、一番強い『三次』が絶火魔法っていう感じ。んで、それぞれに初級と中級と上級のレベルがあるっていう」


 ふーん?


 わかったような、分からないような……。


 と、とにかく、魔法には九段階の強さがあるってことでよさそうだ。


 「その、『絶火魔法』ってのが一番強い魔法ってことでいいんですか?」


 ユーリは興味津々だ。


 前のめりになって質問している。


 「いや、そういう訳でも……まあ、そんなことはまだ知らなくてもいい。とにかく、初級魔法だ。さあやるぞー!」


 「え、えー……」


 うまい具合に話をそらされたユーリは不満そうに首を上に向けたが、すぐに立ち直って「で、どうすればいいんですか!?」と質問している。


 激しいな、感情の上がり下がりが。


 ……おれには、ちょっとだけ無理してるように見えなくもないけど。


 「って言っても、二人とも魔法の種類は全然違うんよね。まずユーリの支援魔法だけど、これは攻撃魔法と違って、ちょい特殊でさ。魔法の種類が五種類しかないんだ」


 「いきなり、例外出てきた……」


 「は、ハズレってこと……?」


 レオさんは、大きく首を横に振った。

 手も激しく振って、「ないない」と笑っている。


 「そもそも、支援魔法の適性があるやつ自体珍しいからな。ハズレなんかじゃない、むしろラッキーだ」


 「そ、そうなの! ところでそれって、どのくらいレアなの……?」


 「ん-、二十人に一人くらい?」


 結構レアなんだな。すごいじゃんユーリ。


 じゃあ、おれのはどうなんだろ。

 えーっと、火魔法。

 うん、「火魔法」ってかっこいいし強そうだし、さぞレアに違いないな!!


 「あ、ちなみに火魔法はスタンダードだよ。五人に一人くらいいる」


 「ふ、ふーん? まあ、そんくらいかなとは思ってた」


 おれは必死で誤魔化した。


 「さて、まず支援魔法からね」


 レオさんは、五つの支援魔法を順に紹介し始めた。


 まず、[帯魔]。これはもうすでに知ってた。レオさんが、おれたちのことをハゲの水魔法から守ってくれた魔法だ。

 レオさんはおれの背中に手をかざして[帯魔]をかけ、その後すぐに殴った。


 「あいってえ!? いきなり何を……ん? 痛くねえ」


 「はは、びっくりしたか?」


 レオさんが笑ってるから、おれもつられて笑っちゃったけど。

 突然殴っておいてそりゃないよ。


 気分的には痛いので、おれは思わず自分の背中を押さえてさすった。


 レオさんは、「そういうのいーから」とクスクス笑った。

 ひでえよぉー。


 次に、[体力増進](フィジカルブースト)


 これは初めて聞く魔法だった。


 レオさんはまたしてもおれに手をかざし、何かをした。

 というのも、された時にはまだ何をされたのかが分かんねえんだ。


 「ちょっと、走ってみてよ」


 そう言われたので、理由は特に考えずにドアまで走る。

 十秒くらいかかってたどり着き、振り返る。


 「こうですか?」


 「あー、いや違くて。もっと本気でよ」


 そう言われたので、次はレオさんの元まで本気で走ってみる。


 「よっ……え? え?」


 スタートダッシュは意外とうまくいった、なんて思った次の瞬間。

 すっごい、風を、切った。


 おれの足は、意識よりもずっと加速した。

 まるで後ろから誰かに押されているみたいだ。顔の川がびろびろ伸びきり、呼吸困難に陥る。


 「うおーっ!! っとっと」


 結局、レオさんの目の前でギリギリブレーキをかけるまでにかかった時間は、体感で五秒を切ってる。


 なにこれすごい。

 めちゃめちゃめちゃ速くなってる。


 「す、すごいよカナデ! そんなに速く走れただなんて知らなかった!!」


 キラキラした目でユーリがこっちを見てるけど、多分違う。

 というか絶対違う。

 魔法の力に決まってる。


 「……どう? 速かったでしょ」


 「……は、はや……はあ、はあ……ひいー、ふう……」


 返答しようとして、ようやく自分の今の状態が分かった。


 話せない。声が出せない。灰が圧迫されていて、死ぬほど苦しい。


 おれは、えぐいくらい息切れしている。


 はあ、はあ。


 今までに感じたことないくらいの疲労。


 思わず、膝を着き。

 そのままうつぶせで倒れこんでしまった。


 「ひいー……ふひー……」


 やべえ。これやばい。


 汗が全身から吹き出てきた。体中、特に太ももがはちきれそうだ。

 あ、暑い……。

 くらくらする……。


 「だ、大丈夫……? ねえねえ、カナデかなりやばそうなんだけど……レオさん……」


 動けねえ……。


 はあ、はあ……。


 「[体力回復](S・ヒール)


 その時、レオさんはまた何かした。

 おれに向けて光を放ってる。


 「レオさん、何を……って、あれえ?」


 あんなにひどかった息切れがすっかり止まっている。


 それで、簡単に声を出すことができた。


 「はは、びっくりした? これは三つ目の支援魔法[体力回復]。今みたいに息切れした人を、元の状態に戻すことができるんだ」


 「す、すげえ」


 「へえ」


 「でも、気を付けないとなのは、これは回復魔法の[再生](ヒール)とは全く別物だってこと」


 なんて?

 回復魔法? [再生]? 出てきた情報が多すぎて、頭がパンクしそうだ。


 「詳しく言うと、[体力回復]はスタミナ回復だから一時的なもので、[再生]はちぎれた腕をくっつけたりとかの医療系だってこと。だからズタズタになった兵士にこれをかけても、息切れとか筋肉痛が収まるだけで、本質的にはなんにも変わってないから」


 いや[体力回復]、よわくね?


 「あいや……これだけ言うと[体力回復]が[再生]の下位互換みたいだけど。そうじゃなくて、むしろ逆。[体力回復]のほうが、戦場では重宝されるんだ。なんたって、満身創痍の兵士を何度もリサイクルできるんだからね」


 何を言ってるんだ?


 満身創痍の兵士を、って。


 「リサイクル」。


 そう言ったレオさんの顔は、とても冗談を言っているようには見えなかった。


 ううん! ダメだダメだ!


 こういう考え方も、生き抜くためにはきっと必要なんだ。


 レオさんを疑うなんて、絶対にダメだ!

 だって、レオさんは、おれたちを救ってくれた恩人なんだから。


 「うん? カナデ、どうかした?」


 「い、いや! 何も」


 「そうか。じゃあ、次は[溶地](メルト)な。んじゃあぁ……ユーリ! 次は、お前が走ってみてくれ」


 「オ、オレえ!? わ、わかりました……」

 

 言われた通り、素直に走りだすユーリ。


 そんなユーリを、レオさんはにやにやと、何かを企んでいるようなわっるい目で見ている。


 「……くくく……ほいっ」


 レオさんはユーリの足元に向かって、手を下から振った。


 まるで、泥を軽くかけるかのようにさりげなく。


 「ひゃあ!」


 その途端、ユーリは不自然に立ち止まった。

 そしてそれまでの勢いを急停止によって抑えきれず、ステンと転んだ。


 「ど、どうしたユーリ!?」


 「はははは、どう? [溶地]のお味は……。動きにくいだろ?」 


 「な、なにこれええ……! ドロドロで、起き上がれない……」


 ユーリの足元は、石でできているはずなのにドロドロに溶けていた。


 ユーリは必死でそこから逃れようとしているが、うまく力を入れられていないようで、苦戦している。


 「うーん……! はあ、はあ。やっと抜け出せ……」


 「はい王手」


 目にもとまらぬ速さで、レオさんはユーリに追いついた。


 やっとのことでドロドロから抜け出し自由を得たユーリだが、目の前でレオさんに手をかざされ、固まっている。


 「……ふっふっふー! 本来ならちょっと機動力を悪くするくらいの影響しかない[溶地]だけど、ボクにかかればこんなもんよー!!」


 なるほど、こうやって使うのか。

 支援魔法と聞いて、ちょっと弱そうだななんて思ったけど。

 意外と、強そうだ。


 「こ、こわいよお……」


 ユーリは、レオさんに心から恐怖していた。


 「あー、そんなに怖かった?」


 「うう……うううー」


 レオさんは少し悩んだ後、ユーリを思い切り抱きしめた。


 「や、やめてよ」


 「よし、これで安心したでしょ!! こわくない、こわくない!! はいおしまい、次いこう!!」


 う、うらやましい。

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