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判決、異界流し。  作者: ポク塚
二章 電撃入社事変
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第二十五界:虎

シャトルラン102回だった。

ポク塚です。


カナデ編 7話投稿しました! 第十七界の前にあるので、まだ読んでない方はぜひ読んでください!

 なにやら場所を変えるらしく、僕は黒スーツたちに誘導されて部屋から出された。


 守屋に事情を聞きたかったのだが、黒スーツにずっと囲まれていたせいで守屋と話すことはできなそうだ。

 そこで、


 「あのー、黒スーツさん? 今から何が、始まるんですか?」


 と尋ねてみると、黒スーツの一人が反応した。


 「何が、だって? お前何を言ってるんだ。お前自身が、守屋とこのことを考えたんだろうが」


 「ど、どういう意味です?」


 「はあ? だってさっき、お前自己紹介で自分のコードネームなんて言ったよ?」


 「『獅子屋』、ですけど……」


 それになにか問題でもあるのか?

 ほらそうだろ、と言われてもなんのことか分からない。

 「獅子屋」になにかマズい意味でも含まれてるってんのか? というかだったら守屋は、なんで教えてくれなかったんだ?


 「『獅子』が入ってんじゃねえか。知ってるだろうけど、ここでは動物の名前を名乗っていいのは幹部の九人だけだぞ」


 「はあ……って、つまり……?」


 先頭の黒スーツが動きを止めた。そしてこちらを振り返る。

 

 気づいたら、僕を囲む五人全員がこちらを凝視していた。


 「……もしやお前、ホントに知らないであんなこと言っちゃったのか? ……こりゃ守屋の野郎にしてやられたな」


 「ここでは、社長に動物のコードネームを宣言することは、現幹部に挑戦することを意味しているんだよ」


 ……え。


 先頭の人と、後ろの人から説明を受けたけど。全く整理できない。


 つまり……?


 「今からお前が受けるのは、『幹部テスト』。訓練場で戦って、現幹部から幹部の席を奪いに行くんだ。ちなみに、挑戦者が負けたら、大体クビだ」


 なるほどなるほど。


 「こいつが言ったことを正確に言うと、首になると決まってるわけではないんだ。しかし、大体の挑戦者は、責任を取って辞表を出す」


 うんうん。


 なーるほどね。


 聞いてねーよーーーーー!!!!




 

 訓練場に着いて驚いたことがある。

 観客の多さだ。ほぼ正方形の会場の壁に隙間なく立っていて、そのどれもがいかつい顔つきをしているのである。


 「カモメ組」というのは、こんなに多いのか。

 部屋の広さは……ざっと、<一界>の訓練場の一部屋と同じくらい。……なんて言っても、分かりにくいか。


 とりあえず部屋の広さ的に人数は大体二百人くらいかな。


 僕のような全国指名手配犯を保護してるグループと聞いたけど、正直もっと少数精鋭のイメージがあった。


 「んおい、何をボケっとしてるう。んお前は一応、今回の主役だ。シャキッと立て」


 「は、はい」


 注意されちった。


 あれ、誰だろ。黒いマントを羽織って、肩までの髪を手で溶かして歩いている。


 そしてローズの残り香。


 ……男だよな?


 なんか見た目は馬鹿みたいだけど。


 ただ、黒スーツとはちょっと違う感じがする。

 威厳があるというか、グレードが違うというか。

 もしかして、あいつが幹部とかいうやつなのか?


 あんまり強そうな感じはしないけど。まあ、一口に犯罪と言ってもいろんな種類があるし、あの人にはあの人の、特異な分野があるんだろう。

 知らんけど。


 「挑戦者。こっちに来い」


 社長に呼ばれたので、小走りで訓練場の真ん中に向かう。


 そこにいたのは十一人。

 その誰もが個性的な服を着ている。


 社長と、イグマと……、


 「こいつらは、わが組の幹部九人だ。それぞれの自己紹介は省く。で、お前の対戦相手は……」


 あと、ローズマントもいた。

 やっぱり、幹部だったのか。


 「おいおい、まさか幹部テスト挑戦者って、そいつじゃねえよな!?」


 「嘘だろ、こんなヒョロヒョロ野郎が!!?」


 「誰だよそいつー! ひっこめ-!!」


 ぎゃーぎゃー。ぎゃーぎゃー。


 前に出ると、観客たちから多種多様なヤジが飛んできた。


 実にうるせえ。


 耳せんがここにあったら迷わずつけるね。


 ……つーかまあ、そりゃそうだよな。確かに体格はお前ら黒スーツの方がいいもんな。


 それに、僕のことなんて知らないだろ。

 知らん奴が、それも自分より弱そうなやつがイキッてたら、イラつくのも当然だよな。


 うん。


 「黙ってみてろ、バーカ!!」


 でも、腹が立つことは腹が立つ。

 

 知らん奴が、それも僕より明らかに弱いやつに煽られてるんだからな。


 「……は?」


 「……何言ってんだてめえ!!」


 「バカはてめえの方だカス!!」


 「死ね」


 「死ね」

 

 「死ねーー!!」


 「マジ死ね」


 一瞬ヤジが止まったが、逆にそれが燃料となり、さらにうるさくなった。


 ……はあ。

 これは、圧倒的に幹部をぶちのめして黙らせるしかないみたいだな。


 


 「……くはは。対戦が始まる前から、ずいぶんと人気だな?」


 「いえ、それほどでも」


 「それで、お前の相手はこいつだ。おい」


 社長が指さしたのは、バラバラに立っている幹部たちの端っこにいる、角刈りのおっさんだった。


 耳がでかくて、髭が青い。

 そして唇と鼻の間にあるほくろが、存在感を放っている。


 言葉にすれば分かりやすい。

 おっさんオブ、おっさんである。


 その表情に生気は見られない。戦う気があるのだろうか。


 …………ん?


 あ!


 こいつ、地味に中指たててる!

 気を付けして礼儀正しいなと思いきや、ファッキューでした!


 手には血管が浮き出ていて、めっちゃ中指に力入れてる。

 

 なので僕も、挨拶のお返しとして、同じようにして床に指を向けて中指を立てた。

 にやあ、という優しいほほ笑みも添えて。


 おー、気づいた気づいた。


 はは、今度は両手か。

 工夫してきたな、この野郎。


 前言撤回。

 こいつ、敵意むき出しだ。



 「……幹部の、『虎』だ。ここではもう十年以上になる。全力で行くから、そちらも全力でかかってこい。今日は、よろしく頼む」


 「虎は、先月に幹部になったばっかなんだ。獅子屋、お前の実力見せてもらうぞ」


 虎が握手を求めてきたが、無視した。


 『……あんまり、調子に乗るなよ。こっちはやっとのことで手に入れた席なんだ。ぽっと出のよくわからん奴になんか、負けるかよ』


 そんなことを言われたけど、それも無視した。

 

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