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判決、異界流し。  作者: ポク塚
序章 異界道中膝栗毛
24/45

第十七界:フ〇ニャン、ド〇えもん、こ〇せんせー

……ユニークユーザー数とブクマ数は比例するものだと思ってた時期もありました

 「さーて、寄り道も無事終わったし、例の道路に急ぐぞー」


 おしゃれな二人は、変わらず例の道路に向かって歩みを進めていた。

 服屋に入って歩くのを休憩したおかげか、その足取りは軽く、気持ちいい。


 ここら辺の町並みは店が多いからか人通りが多く騒々しくなっている。

 車も多く、さすがにここでヒッチハイクは目立ちすぎるということが分かる。あと少しで着くと言っていたが、その道路に本当に人がいないのかが少し心配だ。


 僕たちは指名手配犯。さっきまでいた商店街とは打って変わって見つかる危険が大きくなったため、注意が必要……になると思っていたのだが。


 「みんな、全然僕たちのこと見ないね」


 なんと僕たち、かなーり溶け込めている。

 というのも、騒々しいとはいえここにいる人々は、僕らのようにおしゃれな若者が多かったからだ。  

 悪目立ちするのではと危惧していた守屋の恰好は、逆にここでは当たり前の、普通の服装に見えるようになっていたのだ。


 腕に大量のサングラスを括り付けた守屋ももちろん十分変だが、今まさにそこででんぐり返しし続けながら「ツウギワーンタカダノババーンタカダノババーデスッ」と車内アナウンスを繰り替えしている男よりかは全然ましである。

 

 ……いや、別にいいんだけどね?

 多様性の時代だよね、どの界でもさ。だってその証拠に、誰一人そういう人のことを笑ってないし、そもそも変にじろじろ見たりもしていない。それでいいんだよ、それで。


 「ぷぷ、みろよ。あいつ、あんなとこで歌いながら竹馬してるぜ」


 なのにこいつときたら、モラルの欠片もないな!!

 守屋は、道路の真ん中で奇行をしている人を指さして笑う。

 だからそういうことをするなって!


 「おい指さすな、目立つから」


 そう、逆にこっちが目立つことになるのだ。


 そう言っても守屋は通りすがりの人々をバカにするのをやめようとしない。はあ、困ったもんだ。


 「……なあそういえば、今思い出したんだけどさあ。お前昨日さ、なんか変なことしたじゃん?」


 …………!?


 きゅ、急になんだこいつ。ふらふらってふざけて歩いてると思ってたら、いきなり核心をつくこと訊いてきたんだけど。


 た、多分こいつが言ってんの、魔法のことだよな。そうだよな、こいつのこと[黒炎領域]で焼いちゃったし、それがなにかが気になんのは至極当然のことだ。

 というか今の今までそこにほぼ触れてこられなかったことがおかしいんだよ!

 普通、魔法の概念がないこの界で何もないとこから黒い炎が発生したら不思議に思うにきまってんだろうが!!


 「あの、何もないとこから急に炎が出てきたように見えたんだけどさあ……、あれ、マジでいったい何なんだ?」


 守屋は足を止めて、身体ごとこっちに振り向く。「なあ、どうなんだあー?」と顔を近づけてきて、いぶかしげにしてきた。


 「……あれは、たまたまあの家に火炎放射器が……」


 「そんなことあるかよおー!?」


 僕がそう言ってごまかそうとしても、結局嘘だなんて簡単にばれる。

 そりゃそうだろう。普通の家に火炎放射器なんて古代兵器が置いてあるはずもない。


 「わかった、きちんと説明する。歩きながら話そう」


 やっぱり、はぐらかさずにきちんと説明しよう。これから、というかすでに仲間になっているのだし。

 昨日一度魔法について少し触れた時は、守屋はまるで信用しようとしなかったが、「そんなもの……」という風に怪しんでいたので魔法という概念自体は知っている様子だった。なぜ知ってるのかは理解できないが、とりあえず説明さえきちんとすればわかってくれると思う。


 守屋は僕の隣に移動し、静かに聞く体勢をとった。


 「えーとだな……。昨日の炎はだな」


 「うんうん、なんだよ、また『魔法』とか言って誤魔化すつもりじゃないだろうな」


 「その通りなんだよ」


 僕がそういうと、守屋は呆けたような顔になり、口をぽかんと開けた。

 そして僕が「おーい、守屋さーん?」と手をぶんぶん振って見せると、意識が覚醒したようにあからさまに怒り始めた。


 「な、なんだよそれ……。結局、教えてくれねえんじゃねえか」


 隣から真ん前に移動し、僕にの両肩をつかんだ守屋は、腕を揺らしてすごむ。

 すごい、キレてる。その迫力で周りにいた人は、すぐに目をそらして足早に立ち去る。

 僕は、いまさらながらにこいつがヤクザなのだということを思い出した。


 「ち、違う……。本当なんだ、だから放せ」


 「……じゃあ、その魔法ってのをさっさとみせてみろよおお!!」


 こんなところで見せれるはずもないし、そもそも今は魔力がないから使えない。

 というかなんでこいつ、こんなに怒ってんだよ。なんでこんなに急に逆上し始めたんだよ。


 「わ、分かった分かった。分かったからはやく放せ! 魔法を使うには準備が必要なんだ」


 僕がそういうと、守屋は意外とすんなり放してくれた。

 疑った目のままでだ。


 とりあえず、探さないことには始まらない。僕はそこらへんでいい感じのスポットがないか歩き始めた。以前見つけた時と同じように、奴らは不潔な場所に潜む。

 それは既に、あそこに群生地があったことで立証済みだ。


 ちょっと歩くと、レストランらしき店を発見した。


 「あ、こことかよさげ」


 そこでぴたり立ち止った僕を不審に思ったのか守屋は、


 「はあ? なにゆえ高級中華料理屋『李白』?」


 と首をかしげる。

 それもそのはず、確かに魔法にこの店は関係ない。関係あるのはこっち。

 僕は一度は立ち止ったものの、その店のドアを華麗にスルーして、そのわきの駐車場らしきところに向かう。そこにあったのはただの土地ではなく、その店ででた残飯がたんまりあるゴミ箱の列だった。

 よほどここは人気がある店なのだろう、五つの、それなりのサイズの緑のゴミ箱はすべて満杯で、今にも零れ落ちそうな量である。


 「お、おい。そんなにゴミ箱なんて見つめてなにすんだよ?」


 少し近くで見てみた感じだと、まったく見当たらない。

 しかし確実にここにいないというわけではない。かくれんぼの名人としても有名な種族だ、どこにでも隠れることができるはずなのだ。


 「守屋、そっちから順番に倒していって」


 「はあ!? なんでだよ、それがなんか関係あんのか!?」


 「関係大ありさ。いいからやれよ。やればわかるさ」


 そういうと守屋は案外素直に、一番奥側のゴミ箱に向かった。

 「こんなんしてなんの意味が……」とかつぶやきながら、イヤそうに、しぶしぶとゆっくり一つ倒す。

 

 「よし、そうして箱の下とか中に、ゴキ……」


 「うわあ!! ゴキブリ!!」


 僕が説明してやろうとしたのを大声で遮り、守屋はオーバーに飛び上がる。

 どうやらひと箱めからいたらしい。なんて運がいいんだ、というよりゴキブリがどこにでもいすぎなだけか。


 「どこ!? どこにいた、いまどこにいる!?」


 僕は守屋の方に一目散に駆け寄り、そいつを探す。

 しかし見当たらない。


 「え、ゴキブリなら、どっか行ったよ……」


 ……クソ! 最初から一緒に気を配ってゴミ箱を開ければよかった……。


 「仕方ない、まあそこにいたならこっちにもいるはずだ。お前は、これをせーのでひっくりかえせ。そんでいたら僕が捕まえる」


 「はあ!? ゴキブリを、か!?」


 「そ。つべこべ言うな、魔法見たいんだろ?」


 僕はそこにしゃがみ込み、捕食体勢をとる。準備完了だ。


 「いくぞ……せーの!!」


 「ええい、これでいいかよ!!」


 ゴミ箱の下には、三つの黒光りするものがいた。それを確認した瞬間、手をまるめ、そのままゴミ箱のしたに持っていく。すくい上げるようにして地面をこする感触を覚えると、その手の中には確かな生を感じられた。


 しかし捕まえられたのは一匹だけで、残りの二匹は目にもとまらぬスピードでかさかさと店の方に逃げていった。僕もすごい速さで捕まえたつもりだったが、やはりこいつらにスピードで完全に勝るのは困難なようだ。

 

 「よ、よく触れんな……。それをどうすんだ?」


 守屋は、見るからに引いている。物理的にも一歩引いて、顔をそむけるようにしてこちらをうかがっている。


 「こいつ、まだちっさいし色も薄いからから子供かな……。まああわれだが、わがにえとなるのだー」


 「うわあ!? やめろ、ついに狂ったか!! いや元からか!! とにかくやめろー!!」


 僕は、いつものようにして、それを口に無理やり詰め込んだ。


 「おらあ……おええええ!!!!」


 数えてみると、これでゴキブリを食うのは三回目だ。さすがにそれだけ食えば慣れるだろう……と思っていた過去の自分を殴りたい。

 このゴキブリ、かなりいきがいい。口の中で暴れまわっている。はでかみつぶしてやろうとも考えたが、それは最悪な予感しかしないのでやめる。

 

 「くっ、くうう……ぐおらあ! 大人しくしやがれ『Gチャージ』!!」


 僕は根性でのどの筋肉をしごき、掛け声とともに嚥下した。

 

 「や、やりやがったー! つかその掛け声はなんなんだー!?」


 ふう。やっぱ何回やってもきついな、これ。


 しかしこの腹から湧き出る高揚感。一日ぶりだ、かなり気分がいい。


 「ぐええっぷ。よしこれで準備完了だ。守屋、見てろ。[気流操作]。飛べ」


 「……はあ? なんだ? 何が言いたいんだ?なにもないけど」


 ふっふっふ。


 「……気づかないか? 足をよく見てみろ!!」


 「足? 別に何も……うげえ!?」


 そう、僕は魔法を使用した。しかしなぜすぐに気づかれなかったか。それは最小限の魔力しか使わないように、魔力を節約した魔法を使用したからだ。

 具体的に言うと、僕の足裏はいま、地面から一センチだけ浮いた状態なのだ。

 

 「は? は? ドラえもん? え? は?」


 「ドラ……なに? まあいいけど、だからこれが魔法なんだって」


 僕は、浮いたまますいーっと移動してみせる。守屋は混乱してる様子で、『は? は?』とただ繰り返すマシーンと化している。


 駐車場の中を一回りした僕は、少しも息を切らしていない。

 それもそのはずだ。

 この移動手段であれば魔力は消費するものの、操作系とはいえかなり低レベルな魔法であることもあり、僕ほどにもなるとそこまで疲れずに走るのと同じくらいのスピードが出せるのである。


 「今初めてこれしたけど、使い心地いいな……。よし、これからもこれを使っていこう」


 テキトーな思い付きの創作魔法にしては、かなりいい出来だ。おそらく、というか百パーセント、二界の戦場のなかではこんなものは生まれなかっただろう。だって、目立っていいのならガッツリ[飛行]してるもんな。

 この界に来て、こういうメリットもあるのかとしみじみ感じる僕であった。


 「は? は? は? は? …………はあ?」

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