表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/77

第70話 謁見の間 竜魔王討伐の報告 デイミアンの願い

 ルーブルシア王国、謁見の間。

 国王陛下とウイリアム王太子殿下の前で、冒険者の4名、ハワード、クラーク、キャロル、シンディーは、竜魔王討伐の報告をしていた。


 そして傍らには、捕縛され(ひざまず)かされているデイミアンの姿がある。

「そして、この者がエミリーが死んだと分かった途端、聖女メグ様を殺害しようとしたので取り押さえ連行した次第にございます」

 クラークは、淡々と説明をしていた。


「今まで仲間だと思っていた男のいきなりの犯行。理由を問いただしたところ、エミリーを聖女に仕立て上げソルムハイム王国を後ろ盾にウイリアム殿下を廃嫡に追い込むようデリック殿下をそそのかしたのだと…………」









 あの後、洞窟でデイミアンは私を含めた皆に懇願していた。

「今回の騒動は、すべて私がデリック殿下をそそのかし、行動させたことにしたいのです」

「いや……それは、無理があるのでは無いか? ソルムハイムとのやり取りの書簡は俺も読んだが、明らかに本人の意思で動いていたように……」

 ダグラスが苦言を呈しているが。

「それだけ、私が巧妙に動いていたと言う事にして頂けませんか?」

 デイミアンは力なく笑ってそう言った。


「それではデイミアン伯爵が処刑されてしまいます。デリック殿下も拘束されただけで、まだ何の処分も……」

 私は必死で思いとどまるように言ったのだけど。


「いえ、あの日大勢の目の前でエミリーを聖女様だと公言し、本当の聖女様であるマーガレット様を害そうとしたと聞き及んでおります。立場の違う大勢の人々が証言をすれば、それだけで証拠とする事が出来るでしょう。それに、デリック殿下はウイリアム殿下にも聖女に対する不敬罪を適用して処刑前提の軟禁状態にしておりました」

 そこまで一気に言って、デイミアンは私の前に跪き(こうべ)()れる。


「ここまで事が大きくなってしまっているのです。誰かがこの事態の責任を取らねばなりません。私はデリック殿下が幼少の頃から、お仕えしております。その殿下の処刑される姿など見たくは無いのです。ですから、どうかご慈悲を……」


 分かっているの、マーガレットは納得してる。誰かが責任をとって処刑台に上がらなければならないと言う事に……。

 何もしなければ、その処刑台に上がるのはデリック殿下だと言う事にも。


「だけど、そんな言い分が通るかどうか……」

 私の納得できていない部分が、まだ抵抗するようにデイミアンに言っていた。なんとか減刑にできないかと。

「通るだろ? 王族……しかも、王妃の子が首謀者と言うより、年若いがゆえに臣下の甘言(かんげん)に乗ってしまった事にした方が、国としても都合が良いもんな」

 今まで黙っていたクラークが横から言ってきた。


「いいぜ。俺がやるよ、伯爵を王室に突き出す役目」

「クラーク。私はまだ」

「納得しろよ。マーガレットは王太子殿下の元婚約者だったんだろ? デリック殿下の為と言うよりは、国の為だ」

 クラークから、真剣な表情で言われてしまった。誰も伯爵を死なせたいわけではない。


 わかってる。わかっているのだけど……。


「さっきメグは、死ぬかもしれない危険な役目を買って出ただろ? もう後は俺達大人に任せろ」

 クラークはそう言ってダグラスの方を見た。

「そうだな。メグが背負う事じゃない」

 そう言って、ダグラスは私を抱き込んだ。この後の話し合いを私に聞かせないために、ダグラスの腕で耳をふさがれてしまう。

 自称大人※たちの話し合いによって謁見の間での事が決まってしまった。








「相分かった」

 国王陛下は、目の前の冒険者たちの証言をそのまま受け取り、デイミアンは兵士たちに連行されて行った。

「報酬は慣例により、冒険者ギルドに預けてある。この度は大儀であった」

 国王の言葉に冒険者の4人は、礼を執り謁見の間を退出していった。




 クラーク達が王宮に行っている間、ダグラスと私はアイストルストの小隊の野営テントに戻っていた。

 途中で瘴気が薄くなり、魔物の討伐も後少しとなっていて小隊はのんびりとしている。

 後は冒険者たちに任せないと、彼らの取り分が減ってしまうからだ。


 私が唯一知っている魔物、スライムは討伐せず捕獲して皆アイテムボックスに入れて持って帰るようにしている。なんで?

「ああ。スライムは潰して畑の肥料にするんですよ。領地に帰った時に持っていくと農民たちが喜ぶので」

 ディルランが、にこやかに教えてくれた。


 き……聞かなければ良かったかしら……お野菜にスライムの成分が……。


 のんきに私が野菜について悩んでいた時、ダグラスはランラドフの野営テント内で今回の事と次第を報告していた。

 もう誰も今回の討伐の話を私に振ってこない。小隊の人たちと話しても、楽しい話ばかりだった。


 私は、完全にカヤの外に置かれてしまっていた。

※自称大人……この中で日本の成人年齢に達しているのは、デイミアン伯爵とダグラスだけなので、メグ(里美)は心の中で冒険者たちは子どもだと思ってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ