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第66話 洞窟の奥 竜魔王がまどろんでいた

「ダグラスのわからずや」

「わかって無いのはそっちだろう? メグ。俺は、お前を危険にさらすわけには」

「ほら、またお前って言った」


『私を前面に出してちょうだい』とお願いしたら、ダグラスとケンカになってしまった。

 だって、私の前にダグラスがいたら意味が無い。結界の核の一つになっているだけの、いかにも弱そうな私が前面に出るから、竜魔王を誘えるのだもの。


「お前だって、俺の事をこの人だのなんだの言ってるだろ? もう、お互いさまにしてくれ」

「む~」

 私はつい、むくれてしまった。

 いや、わかってるわ。論点がずれてるって……。

 私たちの口論に振り向いたエミリーですら、呆れた顔をして前を向いたもの。


「こんなところでいちゃつくな。それで、結界の内の一つはメグのなんだな?」

 ハワードが訊いてくる。エミリーたちに聞こえないように、小声で。

「そうよ。私が囮になってネックレスの結界から外れるわ。そうしたら私の結界に竜魔王が入って来られるでしょう?」

 それはそうだが……と言う感じでハワードが言ってくる。


「そっちの旦那が文句言う気持ちも分かるな、危険すぎる。ネックレスの結界を外れる時もそうだけど、結界に入れるのにかなり竜魔王に近付く必要があるだろう?」

「でも、結界内に入ってくれさえすれば、結界を広げることは可能なのよ。問題は、ネックレスの結界を超える時ね。エミリーがパニックを起こさないように、守るように囲んでて欲しいのだけど、後は竜魔王がネックレスの結界を超えたら、その結界も私が広げるからすぐに攻撃を……って何?」

 ハワードは、無言でしばらく私を見てた。


「情けないな……」

 そして、ボソッとハワードの口から出たのがこのセリフ。

「へ?」

「本当に、情けない。大の男が4人もいるパーティで、小さい女の子にこんな決断をさせてしまうんだもんな」

 そして、私の手を取ってその甲に口づけをする。

「必ずその決断に報います」

 そう言って、クラークの方に駆けて行った。


 クラークにハワードが何かを話している。いや、多分さっきの作戦を伝えているのだろうけど、クラークは信じられないといった顔をして一瞬だけこちらを向いて、その後は黙々と歩いていた。




 多分、聖女の二重結界が無かったらここまでの道のりで、かなり体力や魔力を持っていかれていたのかもしれない。だけど、私達は難なく竜魔王がいるという洞窟の奥の入り口にたどり着いた。

 薄くはなっているけど入口には、多分先代の聖女のだろう結界がまだかろうじて残っている。


 うん。これは……エミリーで無くても入りたくないと思ってしまうわ。

 何だか凄く黒いものが結界にまとわりつくようにしては、後ろに流れ出て行ってるという感じかしら。

 ゲームでは聖女の結界内で戦っていたから、竜魔王を入れてもこの瘴気は入って来ないと信じたいけど。


 洞窟に入る前に、布陣を変えた。私とダグラスが先頭、真ん中がハワードとクラーク後ろにエミリー、そしてエミリーを守るように、デイミアンとキャロル、シンディーに付いてもらった。

 ダグラスも洞窟に入ったら私から離れてエミリーのそばに行くようにしている。

 今、皆が一番怖いのは、エミリーがパニックになって洞窟から逃げ出してしまう事。

 守るように見えているけど、要は逃がさないための布陣なの。



 さ……最初に入るのって結構勇気がいるわね。


「俺が、先に入ろうか?」

 私の顔を覗き込んで、私の横までやって来たダグラスが言ってくる。なんだか、ムカつく。

「平気、大丈夫よ。さっ、行きましょ」

 シッシッて感じで、ダグラスを数歩下がらせた。


 中は思ったより広い、竜魔王を除いても私達の結界が余裕で3~4個くらい入りそう。上をみると天井は無いみたい? いや、はるか上の方に少しだけ……真ん中はぽっかり空いているけど。


 肝心の竜魔王は中央よりの奥で、まだまどろみの中という感じだった。

 …………ドラゴン……なのね、姿は。大きいわ。

 なんだろう……寝ているはずなのに、近づいたら一撃でやられてしまいそう。

 二重結界から出るのが、怖い。だけど……。


 後ろを見たらダメ。今、私のこんな情けない顔を見たらダグラスが私の前に出てきてしまう。


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