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第62話 瘴気の濃い森の中 

 王宮を挟んで、私達がいたところの反対側。瘴気が一番強く出ている場所の結界にむけてダグラスは馬を走らせる。

 そこにたどり着くと、複数頭(ふくすうとう)(ひづめ)の跡があった。

 冒険者達はここで馬を降り、王宮に馬を帰したのだろう。



 私とダグラスも馬を降りる。私は馬の正面から顔に額を当てて言う。

「小隊の所に、先に戻っていてくれるかしら。大丈夫よね、シルバーは頭が良いから」

 私が馬から離れたら、ダグラスがそら行けとばかりに馬をポンっと押し出した。


 しばらく馬を見送って、私たちは結界を超え瘴気の濃い森に入って行く。

 相変わらず、私から半径10メートルは何もしなくても浄化されていっている。

「この瘴気をまともに受けながら歩くのは大変でしょうね」

 そうダグラスに言うと

「向こうにはバカ女がいるだろう? あれが初代聖女様の血で出来たネックレスを着けているそうだから、大丈夫だろう?」

 そんな答えが返って来た。


「そんなものがあるんだ……」

「王妃様の部屋から盗まれたものらしいがな……と、止まるなよ。瘴気を払えているから魔物が入って来ないだけで、囲まれているからな」

 ダグラスが、警戒しながら言う。

 これって、結界だわ。結界の外に魔物たちがいるようにみえる。

 今まで瘴気が払われていると思っていたものは、何の知識も無い聖女を守るための結界が自動作成されていたって事?


「メグ、大声出すなよ」

 そう断って、ダグラスは私を肩に担ぎあげた。叫びそうになったのを、慌てて両手で口を押さえる。

 ダグラスは私を左肩に担ぎ上げたまま、走り出した。右手には抜身の剣が……。

 その剣で、時々何かを薙ぎ払っている。結界を抜けて何か入り込んでいる?


 まずいなんてものじゃない。結界の強化を。

「バカ、余計な力を使うな」

「でも」

「竜魔王と対峙する前に、魔力を使い切るつもりか」

 走りながら大声でダグラスが言ってきた。


 ダグラスの言い分が正しい。これ以上の問答は意味が無いわ。

「わかったわ」

 聞こえたのかどうかは、わからないけど。それ以降、ダグラスは黙って魔物をなぎ倒しながら森を走り抜けて行く。



『里美。この先勇者と英雄がいるよ』

 いきなり光ちゃんが話しかけてきた。

『わかるの?』

『うん。勇者と英雄はわかる。向こうも、私と聖女はわかるから、気配隠すね』

『もしかしたら、今までも隠してた? 聖女の気配も』

『仕方が無いの、女神は()()()いないはずの存在だもの。それに、私の気配だけを隠すことは出来ないから。都合が悪いかな?』

 心の中で、光ちゃんが不安げに訊いてくる。

『別に……私は、聖女にはなれないから』

『じゃあ、隠すね。聖女の力は使えるから安心して』

 そう言って、光ちゃんの気配が消えた。というか、私の奥深くに潜っていった。



「ダグラス。後少しまっすぐ走ったら、冒険者のパーティーに追いつくわ」

 私はダグラスにそう叫んだ。

「わかった」

 後少しと聞いたからか、ダグラスが走るスピードが上がった気がする。

 すごい……実さんは、もの静かだったのに。

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