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第57話 ルーブルシア王国側 謁見の間での……

 ランラドフはディルランとイライアス他小隊の半数以上を従えて、謁見の間に乱暴に入って行った。


「何事だ、ランラドフ殿。いかにそなたでも、無礼であろう」

 ルーブルシアの国王が玉座から抗議の声を上げる。 

 今回、王太子を通じ、無理やり謁見の段取りを組まされた事、さらに今しがたの乱暴ともとれる乱入。

 謁見の間は、事実上アイストルストの小隊によって制圧されている。


「無礼なのはどちらか。我が国の騎士と後方支援の術者を乱暴に連れ去り、あまつさえ投獄なさるとは」

「あの者たちは、我が国が追放した者たちだ。我が国に立ち入る許可も与えていない」

 ランラドフのセリフに国王に代わり、デリックが言ってきた。

 確かに、アイストルストが国民として受け入れていなければその言い分も通るのであろうが。


「今は正式に両者とも我が国の国民だ。ダグラスに至っては我が国の女王陛下に忠誠を誓い、騎士爵位を賜っている。それと遅くなったがこれを」

 待ちに待った書簡をディルランを通じ、ルーブルシアの宰相に渡す。そして、国王の手に渡った。それを読んだ、ルーブルシア国王は思わずその書簡を取り落としそうになる。


 それは、女神の魔法陣の上で交わした条約。魔法陣の上で作成された、アイストルスト王国とソルムハイム王国双方の国王の署名がなされた平和友好条約の写しだった。

 つまり、この条約により向こう100年間は女神の拘束の(もと)、両国間の戦争を行う事が出来ない。


 しかも、今回ルーブルシア王国のデリック殿下の策略に乗ってしまった事で、ソルムハイム王国はかなり不利な条件をのまざるを得なくなってしまっていた。


「今、我が国の中隊をリーフランド王国に待機させてある。さて、ルーブルシアの国王よ。我が国の国民である騎士ダグラスと聖女メグ様をお返し願えるかな?」

 ランラドフは、メグの事を『後方支援の術者』から『聖女』と言い方を変えた。

「聖女はエミリー様だ」

 国王は苦し紛れに言う。その手は震えているようだが。


「ほう。第二王子なら知らなくとも、国王が知らぬはずはあるまい。竜魔王がたとえ討伐されてしまっていても、本物の聖女様が必要だと言う事を。そして、聖女様がこの世界を愛してくださらなければ、決して瘴気は払われぬと言う事を」

 ランラドフは、怒りを抑え静かに国王に問うた。

 デリックは、驚愕して自分の父親……国王を見る。


「さて、もう一度問う。我が国の騎士と聖女様をお返し願えるか」

「お返ししよう。……宰相」

「はっ」

 国王の指示に従い宰相以下数名が動き出した。

 ここで返さぬと言ったら、我が国が一気に攻め込まれることなど容易に想像が付いたからだ。

 そして国王はデリックの拘束も命じた。


 抵抗しても無駄だと分かっているのか、それとも王子としての矜持なのかデリックは大人しく拘束され連れて行かれる。


 デリックと入れ替わるように、ダグラスとメグが連れてこられた。

 ランラドフ達はそれを嬉しそうに見て受け入れ。


 入ってきた時とは違い今度はきちんと礼を執って、小隊共々(ともども)謁見の間を退出していった。




 今回、ランラドフが小隊しか動かせなかったのは、時を同じくして女王陛下がソルムハイム王国に向けて軍隊を動かしていたからだ。


 アイストルストの軍事力と今回の噂を放置した責任、ウイリアムが送って来たルーブルシア王国の第二王子とのつながりを証明する書類。

 これらを交渉のカードとして女王陛下はソルムハイム国王を相手に、今回の友好条約を勝ち取って来た。

 その友好条約の写しをランラドフは、ずっと待っていたのだ。

 メグたちが拉致されたのは誤算だったが、これでルーブルシア王国の次期国王はウイリアムに決まる。


 小国とはいえ、聖女様を召喚できる国に迷走されては困るのだ、この世界は。

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